Peer-to-Beer − オーストラリアのソーラースワップ
化石燃料から再生可能エネルギーへの迅速なシフトの必要性は、ウクライナの現状を見ればより明らかです。そのため、再生可能エネルギーの分散型という特性から、将来の電力市場は急速に複雑化することが予想されます。デジタル化は、この増大する複雑性を管理し、時代遅れの電力セクターを改善する機会を提供します。
ブロックチェーンは、デジタル化の分野において重要な役割を担っています。取引コストの削減、透明性の向上、セキュリティの強化、スマートコントラクトによる自動化の促進、新しいアクターに権限を与えることによる参加の拡大など、電力部門にいくつかの潜在的な利益をもたらします[1]。
このようなブロックチェーン技術の利点を生かした、新しいビジネスモデルが急速に生まれつつあります[2]：
- ピアツーピアの電力取引 — ソーラーパネルの有無にかかわらず、誰でも仲間との電力取引が可能
- 優遇取引 — プロシューマーや消費者は、優先的な買い手と売り手を設定し、電気料金を設定することができます
- ギフトP2P — プロシューマーは、例えば、友人、隣人、学校、脆弱なコミュニティや慈善団体を含むコミュニティグループなどに電気を贈ることができます
- クロスストアP2P — 法人顧客は、同じグリッド内にある店舗間で電力を共有することができます
- ソーラースワップ — 小売ブランドは、商品やクーポン券と引き換えに、ソーラーパネルを設置した住民から余剰電力を購入することができます
電力分野におけるブロックチェーン活用の先駆者である Powerledger は、Carlton & United Breweries および Diamond Energy と提携し、ソーラースワップをベースとした特に創造的なビジネスモデルを立ち上げました。これは「VB ソーラー・エクスチェンジ」と呼ばれ、世界初の「Peer-to-Beer」電力交換スキームとしても知られています。
ビール工場は、小規模太陽光発電システム（スマートメーターとの組み合わせで最大6kW）を所有する参加者から余剰電力を購入し、持続可能なビールづくりをおこなっています。その際、ビール工場は電気代を支払わず、30ドル相当の電気を使用するごとにビール1ケース（375ml × 24本）を提供するという画期的な仕組みになっています。オーストラリアの平均的な家庭では、太陽光発電の余剰電力で四半期あたり90ドルを得ているため、スーパーマーケットで165ドルするようなビール3ケースを受け取ることができる[3]。
ビール工場は再生可能エネルギー100％利用という目標を達成するために低コストのグリーン電力を受け取り、ソーラー・エクスチェンジの参加者は余剰電力に対して通常の固定価格買取制度の2倍の価値を持つ製品を受け取ることができる、Win-Win の関係になっているのです。
このビジネスモデルを実現するのが、Powerledger のP2P電力取引プラットフォーム「xGrid」です。取引はブロックチェーン上で安全かつ高速に管理されます。プロシューマーは、余剰電力、言い換えれば稼いだビールをプラットフォームのフロントエンドユーザーインターフェイスでリアルタイムに確認することができます。
このケーススタディは、電力セクターでデジタル化を取り入れると、新しい創造的なビジネスモデルが生まれる可能性を示しています。新たな収入源を確保し、住宅用太陽光発電の利用をさらに促進することができるのです。
参考
[1] IRENA (2019), Innovation Landscape Brief: Blockchain, Online: https://www.irena.org/-/media/Files/IRENA/Agency/Publication/2019/Feb/IRENA_Landscape_Blockchain_2019.pdf
[2] Yandiola, CM (2022), Decentralizing the power through local energy communities — Powerledger peer-to-peer energy trading solutions, Online: https://youtu.be/M01HU9eEAvU?t=1858
[3] SmartEn (2022), Energy communities to increase local system efficiency, Online: https://smarten.eu/wp-content/uploads/2022/02/ENERGY_COMMUNITIES_to_increase_local_system_efficiency_02-2022_ONLINE-final.pdf
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Text by Christian Doedt
Translation by Shota Furuya
