スロベニア — 持続可能なデジタルトランスフォーメーションのトレンドセッター

2019年に、スロベニアでは再生可能エネルギーが発電電力量の32.6%を供給しました[1]。再生可能エネルギーの大部分は水力発電によるものです。太陽光発電による発電量は2%程度にとどまり、風力発電はほとんどありません。スロベニアでは近年、太陽光発電ブームが起きています。PV部品の価格低下、政府による支援政策の進展、行政障壁の軽減などにより、2019年にはPVシステム設置率が前年比233%で増加しています[2]。

スロベニア政府は、サステナビリティ政策とデジタル化を組み合わせ、この分野の先駆者としての役割を担おうと意気込んでいます。そこで、スロベニアは次のような野心的なスローガンを発表しました:

“スロベニア、デジタルヨーロッパにおける緑の参照国”

スロベニア政府は、革新的な起業家や環境の専門家と協力して、国レベルでの体系的なソリューションを構築することを目指しています。政府は、人口わずか200万人の小さな国であることを活かし、より大きな国での試行が困難なデジタルとグリーンの未来に向けた進歩的なステップを推進しています。また、同国は、将来的には他の国でも実行可能な優れた実践例を提供したいと考えています[3]。

革新的なビジネスモデルを支援するスロベニアで、SunContract は、2018年に世界ではじめて一般利用可能なエネルギー取引プラットフォームを立ち上げました。同社のビジョンは、顧客が「仲介者を必要とせずに直接相互に交流し、より持続可能なエネルギーの自給自足を可能にする」ことです。SunContract は、電気を、人々が自分で選んださまざまな供給源から簡単に売り買いできる商品に変えたいと考えています。

P2P electricity markets enable the choice of different electricity sources (Source: SunContract)

SunContract は、電力の消費者と生産者の双方に魅力的な契約を提供しています。電力の契約価格はあらかじめ決められており、P2Pエネルギー取引プラットフォームに参加するオプションも提供されています。

消費者の契約価格は、価格の上限として機能します。顧客は、契約期間中にこの契約価格よりも高い電力価格で支払うことはありません。一方、消費者は、電気料金を削減するため、プラットフォームに参加している電力事業者が契約価格よりも低い価格で提供している場合は、その価格を受け入れることもできます。

発電者の契約価格は、最低料金として機能します。発電者はあらかじめ決められた売電価格で余剰電力を販売することが保証されていますが、契約売電価格よりも高い価格をプラットフォーム上に掲載したり、直接購入者に電力を販売して利益を増やすオプションもあります。顧客間の取引はすべてブロックチェーン技術によって認証され、実行されるため、仲介者を排除し、コストを抑えたかたちで透明性を確保することができます。

顧客は、自分でP2Pエネルギー取引を行うか、プロのトレーダーにP2P取引を代行してもらう「マネジメントサービス」を利用することができます。マネジメントサービスは無料で利用することができますが、達成された利益や節約分は、トレーダーと生産者/消費者が事前に取り決めた通りに分配されます。トレーダーが顧客の利益を得られなかった場合には、手数料を支払う必要はありません[4]。

さらに、顧客は、友人や家族、近所の人などの知人と個人的な契約を直接結ぶことができます。例えば、発電者は友人に売る電力価格を割り引いたり、近所の人が運営する地域の再エネプロジェクトの電力を適正な価格で買うことで支援することができます。

SunContract’s Energy Marketplace (Source: SunContract)

これまでのところ、スロベニア国内で5,000件以上の住宅・商業・産業顧客がプラットフォームに参加しており、締結された契約は200万ドル以上に相当します。しかし、SunContract はスロベニア国内に留まるつもりはありません。逆に、同社は「グローバルなエネルギーの共有と取引の市場」の構築を、意欲的なスタートアップのビジョンとして掲げています。

現在、SunContractは、多くの欧州諸国の自由化されたエネルギー市場が彼らのビジネスモデルに有利であるため、欧州での展開に集中していますが、同社の共同創業者で CEO のGregor Novak 氏によれば、すでにアジア諸国との協力を探索しているとのことです[5]。

参考:

[1] https://ec.europa.eu/eurostat/statistics-explained/index.php?title=File:Share_of_energy_from_renewable_sources_in_gross_electricity_consumption,_2004-2019_(%25)-v2.PNG

[2] https://balkangreenenergynews.com/solar-power-boom-in-slovenia-almost-2500-solar-plants-installed-in-2019/

[3] https://readie.eu/opinion/slovenia-a-green-reference-country-in-digital-europe/index.html

[4] https://medium.com/suncontract/dev-update-new-electricity-management-portal-7048656e0ecb

[5] https://www.youtube.com/watch?v=3MkXDUkQGZA

Text by Christian Doedt

Translation by Shota Furuya

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ISEP Next Energy Transformation Micro Research
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Published in ISEP Next Energy Transformation Micro Research

Next Energy Transformation Micro Research is an information activity of Institute for Sustainable Energy Policies (ISEP). Take a quick look at the latest development of energy transformation.

Shota FURUYA
Shota FURUYA

Written by Shota FURUYA

環境エネルギー政策研究所, 研究員/Institute for Sustainable Energy Policies, Researcher

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