会社ごとに見る『受託デザイナー』と『事業会社デザイナー』の仕事。Vol.1
初めまして、ネクストビートデザイナーの北原です。
9年受託デザイナー(クライアントワーク)をしていた私が、初めて事業会社のインハウスデザイナーに転職して早1年。
最近、今まで特に意識していなかった『受託のデザイナー』『事業会社のデザイナー(インハウスデザイナー)』という言葉を耳にすることが多く、いろいろと思うことも多い今日この頃。
そこで、自分の転職経験を振り返り、会社の規模感と事業内容、会社の中でのデザイナー組織を比較しながら『得たこと』と『デザイナーの業務』についてご紹介したいと思います。
もちろん、個人と会社(人、仕事、環境、文化…)の相性によって人の成長はそれぞれなのと、同じ規模でも会社によって様々なので、参考程度にしていただければ幸いです。
転職を考えているデザイナーの方や、ジョブチェンジでデザイナー職を考えている方にこの記事を見つけてもらい、ネガでもポジでも何かしら参考にしていただけたら本望です。
目次
- 【受託2年】20人規模の広告代理店の場合
『紙媒体デザインのススメ』 - 【受託6年】200人規模のWebコンサルティング会社の場合
『Webデザイナーとしての基盤』 - 【受託1年】1,400人規模のインターネット広告会社の場合
『バナーとデザイナーとディレクター』 - 【事業会社1年】200人規模のインターネットを活用した事業会社の場合
『UI/UXデザイナーという肩書き』 - まとめ
『受託のデザイナー』『事業会社のデザイナー』個人的な見解
1.【受託2年】20名規模の広告代理店の場合 (制作部4人)
この会社は、社長が営業マンでトップダウンの小さな広告代理店。
制作部は、Webデザイナーが1人、フロントエンドが1人、紙媒体デザイナーが3人。
固定クライアントからの定期的に発生する小規模案件が多く、 ディレクターはいないため営業担当とデザイナー担当の2人で制作物を作り上げていました。
※ここでの「デザイン」は『狭義の(実際にカタチにする)デザイン』得たこと
・数をこなすことでデザインの表現幅が広がる
・紙媒体のデザインスキル(広く浅く)
・情報設計のスキル
・会社を恨むな、それに時間がかかる自分を恨め
・失敗できない緊張感業務内容
・美容室のリーフレット、ポスター、名刺、カード、パンフレット、教科書のデザイン
・美容室や飲食店のロゴのデザイン
小規模の受託制作は受注した案件を単純に社内デザイナーで振り分けるため、タスク量は営業の頑張り次第。だいたいは稼働120%を超えた状態で納期に追われることが多いと思われます。
先輩に教わる時間も限られているため、短期間で即戦力にならなければいけません。
場合によっては深夜残業などもあり会社に嫌悪感を抱きがちですが、デザイナー駆け出しの場合は、自分の未熟さとまずは向き合うことで、意欲とストレス耐性の向上に繋がります。
・いち早くデザインの実務能力を身に付けたい。
・数をこなして自身のデザインの表現幅を広げたい。
・情報整理から制作物としてのアウトプットまで、一人でやりきる能力を身に付けたい。
このような意欲のある方は向いていると思います。
会社の環境と別にもう一つお伝えしたいこと。これは後々気づきましたが、
紙からデザインを始めることはとてもおすすめ!
始まりが紙でなくても、紙のデザインは喜んでやるべき!
ということです。
「いやいやこのご時世紙媒体のデザイナーちょっと…」
確かに待遇などを考えたら厳しいかもしれませんが、
画面、ブラウザという限られたルールの中で行うデザインに比べると、
真っ白な紙に
「うまい具合にこのたくさんの情報を整理して、いい感じに魅せてね」
と言われる方が難易度は高いはずです。
ディレクションやUI デザインにも同様の『情報設計』能力が求められるため、紙のデザインは情報設計の訓練として喜んでやっていくべきだと考えています。
紙デザインのもう一つの特徴は、失敗できない緊張感。
デジタルは最悪差し替えや更新が可能ですが、紙は印刷されたら最後。
ミスが見つかれば、クライアントへの謝罪&10,000部のシール貼りなど、かなりの迷惑を周囲にかけます。
一つの制作物にプライドを持って、常に緊張感を持ってデザインをすべきだと、紙のデザインはいつも思い出させてくれます。
2.【受託6年】200人規模のWebコンサルティング会社の場合(制作部30人)
この会社も社長が営業マン、70%が営業職。私が入社した時は創業6年目のベンチャー企業でした。
自社開発のCMSを使用したWebサイトの提供・運用が主な事業です。
デザイナー組織は全部で約25人。そのうちWebデザイナーが約15人。ディレクターが約2人。管理者が約3人。
毎月営業部署が約100件受注するWebサイトを、約15人の社内Webデザイナーと外部の制作会社で制作します。
1案件を納品するまでにかかる期間は約2ヶ月。常に10件を超える案件をWebデザイナーは持ち、数件は自身でデザインをし、数件は外部の制作会社に頼むためのアートディレクションを行います。
※ここでの「デザイン」は『狭義の(実際にカタチにする)デザイン』得たこと
・Webデザインの表現幅が広がる
・Webデザイン制作の基本的なフロー、知識
・Webディレクション(アートディレクション、ライティング、フォトディレクション)
・プレゼンスキル
・競争心
・チャレンジ精神
・マネジメント業務内容
・医療系、美容室、施術所のWebサイト制作
・大手企業のWebサイト制作、ロゴ制作
私は時代の流れを感じ、紙媒体のグラフィックデザイナーからWebデザイナーになるため仕事後にスクール(HTML,CSS,Webサイトを一つ作り上げる講座)に通いました。並行して未経験で採用してくれる会社を探し、出会ったのがこちらの会社です。
この会社での6年で、私はデザイナーとしての基盤を固め、仕事へのスタンスがほぼ確率したように思えます。
・Webでのビジュアルデザインを鍛えたい。
・ひたすら座って作業でなく、クライアントと直接関わり納得のいく制作をしたい。
・言われたままに作るのではなく、コンテンツ制作やライティングなどのディレクションにも関わりたい。
・ゆくゆくはマネジメントもしたい。
・成長できるよきライバルと仕事がしたい。
このような意欲がある方は、30人規模の制作組織がある会社はとてもお勧めです。
数をこなすことでWebデザインのバリエーションを広げることができます。
クライアントへ直接ヒアリングし、使用する画像やテキスト内容を自身で考え、デザインにアウトプットし、クライアントへ直接プレゼンをする。
基本的なことですが、一通り自身がやることで、制作物への責任感は一段と変わります。
同じ業務をやっている仲間がいることで競争心が芽生え、一つ抜き出ようと社内・社外コンペなどへのチャレンジ精神が身につきます。
デザイナー組織が若い会社は、業務改善・仕組みづくりを大いに必要としており、積極的に関わることで生産性やコストへの意識も身につきます。
コンペでの勝利や生産性向上への貢献などをしていると、昇格のチャンスも多くなり、ゆくゆくはチームマネジメントや組織作りにも関わることができます。
などなど、良いことばかり書きましたが、当時は辛いことも非常に多く文句ばかりだった自分を鮮明に思い出すことができます。
しかし個人的には、20代の大切な時期にこのような修行ができる会社に出会えるかどうか、デザイナーにとってはとても大切なことだと考えています。
長くなってしまいすみません…ここまでとりあえず目を通していただきありがとうございました!
次回は下記について書きまとめようと考えています。
3. 【受託1年】1,400人規模のインターネット広告会社の場合
『バナーとデザイナーとディレクター』
4. 【事業会社1年】200人規模のインターネットを活用した事業会社の場合
『UI/UXデザイナーという肩書き』
5. まとめ
『受託のデザイナー』『事業会社のデザイナー』個人的な見解
告知
隔週木曜日に恵比寿のオフィスで夜活(交流会)を実施しているので、転職希望のエンジニアの方はもちろん、他職種の方々もぜひ遊びに来てください! 綺麗なオフィスで軽食とお酒を楽しみましょう!