ESP32を用いたBLE製品をBluetoothSIGに登録した話

Katsuya Kubo
nextbeat-engineering
9 min readApr 7, 2021

こんにちは。エンジニアの久保です。
普段はKIDSNAコネクトというサービスを開発しています。
自作キーボード制作が趣味なのですが、それが高じて今回IoT製品の開発をマネジメントすることになり、色々と躓いた部分がありました。
特に今回はBluetoothSIGへの製品登録について書きたいと思います。

ESP-WROOM-32

今回用いたのは、皆さんご存知の通称ESP32。
Espressif 社から提供されている、Wi-FiやBLEといったモジュールが搭載された便利マイコンです。
プロトタイピングにはもってこいです。
今回はそれを製品版にも使うことになりました。

BluetoothSIG

Bluetooth技術を用いた製品を製造・販売するにはBluetoothSIGに製品を登録する必要があります。
登録と言ってもその手段はいくつかあり、
①認証済み製品を指定して利用登録をするパターン
②認証済み製品を組み合わせて指定し、利用登録をするパターン
③適合試験を受けるパターン
があります。

最も簡単なのは①です。
認証済み製品を用いていなかったり、改変を加えた場合は③で対応する必要があり、費用も増えます。
①か②であれば必要な費用は登録料$8,000のみです(といっても高額ですが)。

今回は当初①で済むと思っていたのですが、最終的には②の方法で登録しました。
その経緯を後述します。

結論

先に結論だけ述べますと、今回は

で登録しました。
実際に登録されたページはこちら: KIDSNA Connect IC Card Reader

当初、Host Subsystemには BR/EDR/LE Dual-mode Host Stack を用いようとしていたのですが、これが最新のBLE仕様では非推奨とのことで、「NimBLE」の方に量産直前に切り替えることになりました。
これからはESP32のBLE周りはNimBLEが標準になっていくそうなので、NimBLEを選んだ方が無難です。ちなみにHost Subsystem等、構成を後から変えようとすると別途登録料が$8,000必要です。

今回は回避方法があり、事なきを得ましたが、Bluetooth製品を開発するとなった段階でどのモジュールを使うのか、それがどのような手段で登録可能なのか、は調査必須であると学びました。

Product Typeについて

今回SIGへの登録に躓いた要因として「Product Type」の認識漏れがありました。
BluetoothSIG認証済みのモジュールには、それぞれProduct Typeという種別が付与されて登録されます。
この種別によって利用登録の仕方が変わるので利用するモジュールのProdcut Typeは確認必須です。
認証済みモジュールは下記から型番などで検索できます。
https://launchstudio.bluetooth.com/listings/search

詳細は省きますが、Product Typeが 「End Product」 であれば、前述した①の方法で対応可能です。
ですが ESP-WROOM-32 は 「Controller Subsystem」 で登録されていました。
Controller Subsystem は 「Host Subsystem」 と組み合わせなければ登録できません。
Controller Subsystem はざっくり言ってしまえばハードウェア部分を指し、Host Subsystem はアプリケーションを動かすソフトウェア部分を指します。
つまりソフトウェア部分でどのモジュールを使うのか決めてあげる必要があった、ということです。

BluetoothSIGへのアカウント登録(準備)

今回はBluetoothSIGへの登録も初めてでしたのでその手順も載せます。
本筋からは逸れますので、既にご存知の方は読み飛ばしてください。
注意点は下記の通りです。

  1. BluetoothSIGのアカウントは基本的に1法人につき1アカウント
  2. 登録者は会社役員、もしくはその役員から委任された人物である必要がある
  3. 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)が必要

1に関しては登録に用いるドメイン部で判断しているらしく、同じドメインのアドレスは基本的に1つしか登録できません。
なのでgmail.com等は利用不可です。会社ドメインのアドレスが必要です。
さらに1社1アカウントの制限があるので、社員の個人アドレスで登録すると何かと不便です。
今回私は社内で共有できるメーリングリストを新たに作成し、そのアドレスで登録するようにしました。
これで関係者はSIGからの連絡を受け取れますし、仮に私が担当を外れても何ら問題ありません。

2に関しては、社長に承認を得て社長名義で登録を行いました。
役員から委任された人物としての登録でも可能なのですが、その証明にも別途書類が必要です。
ですのでやはり役員に承認を得てその名義で登録するというのが一番シンプルかと思います。

BluetoothSIGへのアカウント登録(作業)

メンバーのタイプは「アダプター」と「アソシエイト」があります。
継続的に製品を開発していくならアソシエイトの方が割安らしいですが、弊社ではその予定はなかったので今回はアダプターメンバーとして登録しました。
https://www.bluetooth.com/ja-jp/develop-with-bluetooth/join/

1. 国を選んでメールアドレスを入力

2. 企業情報を登録(登記簿謄本をアップロード)

3. 登録者情報を入力

4. 住所を入力

5. 最終確認して確定

これでしばらくすると登録が完了します。
すべて英語ですがフォーム自体は至ってシンプルです。
臆せず登録しましょう。

製品の登録(準備)

製品の登録に必要な情報は下記の通りです。

  • Product Full Name: 製品名
  • Model Number: 型番
  • Description: 製品説明
  • Listing Date: 公開日(登録作業の翌日以降〜3ヵ月の範囲)
  • Publish Date: 製品情報の公開日(Listing Date以降の日付、かつ登録作業お翌日以降で3ヵ月以内)
  • Category: 製品カテゴリ(選択式)

弊社が登録した内容は先程も記載した登録ページと照らし合わせれば確認いただけます。
KIDSNA Connect IC Card Reader

製品の登録(作業)

1. https://www.bluetooth.com/ にアクセス
2. 左上のMyBlueを押し、サイドメニューのMyListingsを選択

3. Getting Started タブを選択し、No Required Testingの方のボタンを押します

4. プロジェクト名を入れ、Controller Subsystem(97618) と Host Subsystem(131934)のQDIDを入力し選択します

5. Add Productボタンを押下して用意した情報を入力します

6. Pay Declaration Feeボタンから登録料を支払いましょう

7. 内容を最終確認して完了です

最後に

以上の作業を行えば数日で登録完了のメールが送られてきます。
これでこの製品にBluetoothマークを利用したり、そもそもBluetooth製品として製造・販売することが許諾されます。
サイトは全部英語ですし、手順も煩雑で費用も高額と、初心者には優しくない設計でしたが、様々な方の助けをお借りし、なんとか登録することができました。
近々SIG登録に至った製品自体の開発経緯も記事にしたいと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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