PMBOKについて

Masanori Ichiishi
nextbeat-engineering
11 min readSep 28, 2023

こんにちは。ネクストビートでプロジェクトマネージャーとして働いている一石です。今回はプロジェクトマネージャーの教典ともいえる、PMBOKについてご紹介したいと思います。

目次

  1. PMBOKとは
  2. PMBOK 第6版から第7版での変化
  3. PMBOK第7版の概要
    - 価値実現システム
    - プロジェクトマネジメントの原理・原則
    - プロジェクト・パフォーマンス領域
    - テーラリング
  4. 終わりに

1. PMBOKとは

PMBOK(Project Management Body of Knowledge)は、プロジェクトマネジメントに関する様々なノウハウや知識を標準化・体系化したものです。アメリカのプロジェクトマネジメント協会PMIが策定したもので、おおよそ4年に1度のペースで改定されています(現在では2021年に発表された第7版が最新です)。プロジェクトマネジメントの世界標準となっています。

プロジェクトマネジメントと一言で言っても抽象的で、具体的にどのようなことができれば良いのか、必要なスキルセットがイメージしづらいですよね。私自身ネクストビートに入社するまで、前職でそれらしき業務は行っていたもののプロジェクトマネジメントを体系的に学んだことはなく、業務参画した際にとても悩みました。PMBOKの概要を理解すれば、プロジェクトマネージャーとしてどのようなことが求められているか、どのようにスキルを伸ばしていくかの大きな助けになります。

2. PMBOK 第6版から第7版での変化

PMBOKの概要について触れていければと思いますが、1つ大きなポイントがあります。それは2017年に公表された第6版と、2021年に公表された第7版とで大きく内容が変化していることです。

第6版まではプロセスベースの知識体系をまとめていたものが、第7版では原理・原則ベースの内容に変わっています。プロジェクトのコアも、成果物から成果へと重点が変わっており、目的のシステムを作ることよりも作ったシステムが生み出す価値に意識を向けるよう求められています。

第6版までは、具体的な管理手法を「10の知識エリア」と「5つの管理プロセス」に体系化してまとめたものをベースとして記載されています。第7版では全く違ったアプローチになっていて、プロジェクトマネジメントの原理・原則を「12のプロジェクトマネジメントの原理・原則」「8つのプロジェクト・パフォーマンス領域」でまとめた抽象度の高い内容に変わっています。(ページ数も1/3程度に)

これは予測型(ウォーターフォール型)のプロジェクトから適応型(アジャイル型)のプロジェクトが主流になってきた昨今の流れに適用していく意図があるようです。

ただし、第6版の内容が不要になってしまったわけではなく、両方の知識が必要になるとされています。第7版で原理・原則をおさえつつ、具体的な手法・知識として第6版のプロセスを併用していくようなアプローチが求められています。

3. PMBOK第7版の概要

PMBOK第7版についての大まかな構成は以下となります。プロジェクトマネジメント標準と、プロジェクトマネジメント知識体系ガイドの2つで構成されています。

  • プロジェクトマネジメント標準
    - 初めに
    - 価値実現システム
    - プロジェクトマネジメントの原理・原則
  • プロジェクトマネジメント知識体系ガイド
    - プロジェクト・パフォーマンス領域
    - テーラリング
    - モデル、方法、作成物

これらの概要について説明していければと思います。

・ 価値実現システム

成果とは価値を生み出すことで得られると定義しています。組織や個々人は他者が何らかの形で感じる価値を実現する必要があり、その全体の仕組みを価値実現システムと呼んでいます。プロジェクトや定常業務も、価値実現システムの一部と位置付けられています。

・プロジェクトマネジメントの原理・原則

プロジェクトマネージャーの振る舞いの指針となる12の原理・原則となります。

1. 勤勉で、敬意を払い、面倒見の良いスチュワードであること
スチュワードシップには、次の点が含まれる。
  ・誠実さ
  ・面倒見の良さ
  ・信頼されること
  ・コンプライアンス

2. 協働的なプロジェクト・チーム環境を構築すること
共同的なプロジェクト・チーム環境を構築するには、次の要因が必要である。
  ・チームの合意
  ・組織構造(個々人の作業を調整し易くするような組織構造を採用する)
  ・プロセス(タスクの完了と作業の任命を可能にするプロセスを定義する)

3. ステークホルダーと効果的に関わること
ステークホルダーを特定し、分析し、プロジェクトの始めから終わりまで積極的に関与してもらう。

4. 価値に焦点をあてること
価値はプロジェクト成功の究極の指標である。
それは、プロジェクトの成果からもたらされるものであり、
プロジェクト・チームはプロジェクトの成果を通して価値に焦点をあてる。

5. システムの相互作用を認識し、評価し、対応すること
プロジェクトは、より大きなシステム内で実施され、
プロジェクトの成果物は、ベネフィットを実現する、より大きなシステムの一部になることがある。
より大きなシステム全体の相互作用を意識し、自らが担当するプロジェクトの位置付けを理解する。

6. リーダーシップを示すこと
プロジェクトに携わる誰もが効果的なリーダーシップ特性、スタイル、スキルを発揮することで、
プロジェクト・チームは高いパフォーマンスを示し、求められる結果を実現できる。

7. 状況に基づいてテーラリングすること
一つとして同じプロジェクトはない。
プロジェクト固有の特性とその環境に合わせてプロジェクトのアプローチをテーラリングする。

8. プロセスと成果物に品質を組み込むこと
顧客のニーズを満たし、受け入れ基準へ適合させる。

9. 複雑さに対処すること
プロジェクト・チームは、複雑さの結果生じる影響に対応するよう、自らの活動を修正する。
複雑さをもたらす要因には、次のようなものがある。
      ・人の振る舞い
      ・システムの振る舞い
      ・不確かさと曖昧さ
      ・技術革新

10. リスク対応を最適化すること
リスクとは、不確実な状態またはイベントである。
プラスのリスク(好機)を最大限に高め、マイナスのリスク(脅威)に極力さらされないように努める。

11. 適応力と回復力を持つこと
  ・適応力:変化する状況に対応する能力
  ・回復力:影響を緩和する能力と、挫折や失敗から迅速に回復する能力

12. 想定した将来の状態を達成するために変革できるようにすること
組織での変革を可能にする(ステークホルダが変化を受け入れるようにする)ことは、
プロジェクトを推進することの一部である。

(引用:『2023年度版 ALL IN ONE パーフェクトマスター プロジェクトマネージャ』)

・プロジェクト・パフォーマンス領域

プロジェクトの成果を効果的に提供するために不可欠な活動として、8つのプロジェクト・パフォーマンス領域を定義しています。パフォーマンス領域は相互に依存し合い、全体が適切に機能して、望ましいプロジェクトの成果を達成することができます。

1. ステークホルダー
プロジェクトの開始から終了まで、ステークホルダーを効果的にエンゲージメントする。
すなわち、ステークホルダーとの協力を維持して一緒に作業すること、
およびステークホルダーと連携して良好な関係を築き、満足度を高めることが必要である。

2. チーム
プロジェクト・チームのパフォーマンスを高めるための文化と環境を確立する。
プロジェクト・チームのパフォーマンスを高める要因となるものを、次に示す。
  ・オープンなコミュニケーション
  ・理解の共有
  ・オーナーシップの共有
  ・信頼
  ・協働
  ・適応力
  ・回復力
  ・エンパワーメント
  ・認知
チームの育成を促進し、効果的なリーダーシップを発揮することも重要である。

3. 開発アプローチとライフサイクル
プロジェクトの成果を高めるために、最適な開発アプローチ、
デリバリーのケイデンス(成果物を提供するタイミングと頻度)、
プロジェクト・ライフサイクルなどを決定する必要がある。

4. 計画
プロジェクト期間を通じて作業を体系化し、詳細化し、調整するために計画を策定する。
一つとして同じプロジェクトは存在しないため、プロジェクトごとに計画は異なる。
プロジェクト計画に影響を与える変数を、次に示す。
  ・開発アプローチ
  ・プロジェクトの成果物
  ・組織の要求事項
  ・市場の状況
・法律又は規制による制限

5. プロジェクト作業
プロセスを確立し、期待される成果物と成果を提供するための作業をチームが遂行できるよう、
次に示すような活動を行う。
  ・作業の流れや作業の変更をマネジメントする。
  ・チームが注力すべき観点を維持する。
  ・プロジェクトのシステムとプロセスを確立する。
  ・ステークホルダーとコミュニケーションをとる。
  ・物的資源(設備や資材等)を適切に供給する。
  ・調達と契約を計画し、マネジメントする。
  ・プロジェクトに影響を与えうる変更を監視する。
  ・プロジェクト期間を通じた学習と知識の伝達を可能にする。

6. デリバリー
価値を実現できる成果物を作成するには、次の期待を満たす必要がある。
  ・要求事項への期待
  ・スコープへの期待
  ・品質への期待
プロジェクトの目標を達成するために、成果物の完了基準を設定することが望まれるが、
不確実で急速に変化する環境で行われるプロジェクトでは、プロジェクトの目標も変化することがある。

7. 測定
最適なパフォーマンスを維持するために、プロジェクトのパフォーマンスを査定し、適切な対応を実施する。
測定の対象や方法は、プロジェクトの目的や環境などにより様々だが、一般的な測定カテゴリは次のとおりである。
  ・成果物(欠陥の数やパフォーマンス)
  ・デリバリー(リード・タイム、サイクルタイム、効率等)
  ・ベースラインのパフォーマンス
  ・資源(活用状況やコストの予実対比)
  ・事業価値
  ・ステークホルダーの満足度
  ・予測(今後の展望)

8. 不確かさ
プロジェクトごとに不確かさの度合いは様々である。
プロジェクト・チームは不確かさに示す脅威と好機を探求し、査定し、どのように対処するかを決定する。
不確かさに繋がる環境には、例えば次のような側面がある。
  ・経済的要因
  ・技術的な考慮事項(新技術の採用、複雑なシステム等)
  ・法や規則に関する制約事項や要求事項
  ・安全、天候、作業条件に関する物理的環境
  ・現在または将来の条件に伴う曖昧さ
  ・意見やメディアによって形成される社会/市場への影響
  ・組織の外部/内部からの、組織への政治的な影響

(引用:『2023年度版 ALL IN ONE パーフェクトマスター プロジェクトマネージャ』)

・ テーラリング

上記で上げているような原理・原則、パフォーマンス領域を、実際に扱うプロジェクトの特性にあわせて最適化していくことをテーラリングと呼んでいます。

プロジェクトの規模や重要度など、組織の特性などに応じて必要なマネジメントプロセスを適切に取捨選択し、適応させていくことが求められています。

終わりに

以上、PMBOKの概要について簡単にまとめてみました。

第7版からは原理・原則ベースとなり、内容もかなり抽象的なものになっています。これらを具体的なプロジェクトにあわせてテーラリングしていくためにはたくさんの知識と経験が必要となりますが、ベースとなる全体像を見失わず、価値を生み出すプロジェクトマネジメントを実行できるようになれればと思います。

We are hiring!

本記事をご覧いただき、ネクストビートの技術や組織についてもっと話を聞いてみたいと思われた方、カジュアルにお話しませんか?

など、まだ転職を決められていない方でも、ネクストビートに少しでもご興味をお持ちいただけましたら、ぜひカジュアルにお話しましょう!

🔽申し込みはこちら
https://hrmos.co/pages/nextbeat/jobs/1000008

また、ネクストビートについてはこちらもご覧ください。

🔽エントランスブック
https://note.nextbeat.co.jp/n/nd6f64ba9b8dc

--

--