オンコロジーと乳がん治療推奨にワトソンを用いる:専門家による腫瘍委員会との一致

Watson for Oncology and breast cancer treatment recommendations: agreement with an expert multidisciplinary tumor board

西村章子(Shoko Nishimura)
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3 min readJan 23, 2018

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チェスの世界チャンピオンを打ち負かしたことで有名なIBMのワトソンですが、今回は乳がんの治療方針決定をアシストする取り組みについて報告しています。

背景:

乳がん専門医は、患者によって科学的エビデンス、使用薬剤、治療ガイドラインを変更し、俊敏に個人的対応を行うことが求められている。

人工知能(AI)臨床意志決定支援システム(CDSSs)により、この困難さが軽減されるのではないか?

著者らは、オンコロジー向けのAI CDSS Watson(WFO)と、乳がんの専門家による腫瘍委員会とで、推奨治療法の合意(一致)レベルを比較検討した。

患者および方法:

インド、ベンガルにあるManipal Comprehensive Cancer Centerにおいて2014年~2016年までに乳がん患者に行った治療推奨は638例であった。

2016年、一致した症例に対しWFOの治療推奨を提示した。

2016年以前には入手不可能であった治療、ガイドラインが原因で腫瘍委員会で合意に至らなかった全ての症例に対し、2度目の見直しを盲検的に行った。

腫瘍専門家委員会が示した推奨をWFOが「推奨」もしくは「考慮」とした場合、治療推奨は一致したとみなした。

結果:

WFOと、専門家集団による腫瘍委員会との治療一致率は乳がん症例の93%にのぼった。

サブグループ解析では、ステージIIまたはIIIの患者と比較して、ステージIまたはIVの患者では、一致率が低い傾向があった。

年齢の上昇は、一致率へ大きな影響を及ぼすことが明らかになった。

55歳~64歳を除き、45歳以下の患者と比較すると全年齢で一致率が有意に減少した。

レセプターの状態は一致率に影響を与えなかった。

結論:

WFOと腫瘍専門委員会における推奨治療は調査乳がん症例で高い一致率が得られた。

乳がんのステージと年齢が一致率に有意に影響があったのに対し、レセプターの状態のみが影響を与えなかった。

今回の研究は、特に乳がん専門医が不足している中で、AI臨床意志決定支援システムWFOが、乳がん治療意志決定に際し有力なツールとなる可能性を示した。

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