Shopify Unite 2021のサマリー

Shopify Unite 2021で発表された11個のアップデートまとめ

マーチャント向けアップデート7つ + 開発者向けアップデート4つ

Yuki Yoshinaga
ブランド運営帳
11 min readJun 29, 2021

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2021年のShopify Uniteが開催されました。

Shopify Uniteは、開発者とマーチャント向けのShopifyの発表会です。今回も、様々なアップデートが発表されました。

会はYouTubeライブで行われました。今からでも見ることが出来るので、見逃したマーチャントの方や開発者の皆さまは、ぜひご覧ください。1時間ほどで見ることができますよ。

マーチャント向けアップデート7つ

1. Sections Everywhereでレイアウトが自由に

これまでShopifyではレイアウトを自由にカスタマイズするためのネイティブな方法はコード編集しかありませんでした。

しかしこの「Sections Everywhere」アップデートにより、テンプレートのレイアウト変更やセクションの追加が自由になります。

Shopify Unite 2021で発表されたSections Everywhere
Sections Everywhereの使用イメージ(公式Twitterより)

PageFlyやShogunなどページビルダーを使っているストアにとっては、それらが不要になるかもしれませんね。

2. 「カスタム・メタフィールド」と「コンテンツ」でコンテンツ管理が進化

これまでストアでメタデータを構築するには、サードパーティアプリを駆使するかコードを書くしかありませんでしたが、これがネイティブにフォローされるようです。

Shopify Unite 2021で発表されたカスタムメタフィールド
カスタムメタフィールドのイメージ(公式Twitterより)

これで誰もが、レビューやサイズといったメタデータをコンテンツに間違いなく適用できるようになります。メタ情報構築のためにShopifyエキスパートに頼るようなこともなくなるかもしれません。

これらは、新しい公式テーマ「Dawn」で既に提供されているようですね。

また、メタフィールドに追加した情報は「コンテンツ」として1つの場所で管理できるようになるようです。

Shopify Unite 2021で発表されたコンテンツ管理
コンテンツ管理のイメージ(公式Twitterより)

3. アプリ管理がテーマから分離し、保守性が向上

Theme app extensionによって、アプリとテーマが分離されるようになります。アプリはテーマに書き込むのではなく、Theme Blockという独自のブロックを追加するように動きます。

Shopify Unite 2021で発表されたTheme app extension
Theme app extensionのイメージ(公式Twitterより)

これは例えば、テーマのコードを開いてスニペットを追加・検索したり、テーマのアンインストール後もLiquid内にコードが残留するようなことがなくなります。

4. Githubとの連携が可能に

テーマをGithubと連携できるようになり、バージョン管理できるようになります。

Shopify Unite 2021で発表されたGithub統合
Github統合のイメージ(公式Twitterより)

ちなみにこれまでは、テーマを編集前にバックアップとして複製し、複製したテーマのコードを編集し、テストして、リリースするという、かなりアナログなワークフローがメジャーでした。(もしくはローカルファイルとして取得しGit管理するという方法も)

今回のアップデートで、フロントエンドコードのトレーサビリティーが一般的なアプリケーション開発に追いついたことになります。

テーマ開発者にとってもストアのフロントエンド担当者にとっても朗報ですね。

5. ページのレンダリングがこれまでの5倍、決済ページが2倍早くなる

フロントエンドAPIの改修が行われ、パフォーマンス、信頼性、冗長性が向上。ページのレンダリングが改善します。

これは決済ページについても適用され、ブラックフライデーやサイバーマンデーのような大量のトランザクションにも堪えられるようになるとのこと。

Shopify Unite 2021で発表された速度改善
Shopifyの速度改善(公式Twitterより)

Shopifyのマーチャントの悩みどころとして、決済ページのUXが微妙な点があり、特に読み込み速度は課題だったのでありがたいですね。

6. 決済ページをカスタマイズできるように

同じく決済ページのUXについて、Checkout app extensionという概念が登場、実装されました。

Shopify Unite 2021で発表されたCheckout Extension
Checkout Extensionのコンセプト(公式Twitterより)

決済ページをカスタマイズするアプリをサードパーティ開発者が開発できるようになり、Shopify Plusでないマーチャントもそれを利用できるようになります。

これまで決済ページのカスタマイズは上位プランであるShopify Plusでしかできなかったので、大きな変化です。

7. Payment Appsでカスタム決済ゲートウェイを作成できる?

決済プラットフォームとしての構想も発表されました。決済手段の柔軟性を向上させる準備をしているとのことです。

Shopify Unite 2021で発表されたPayments platform構造
Payments platformの構想(公式ブログより)

様々な決済手段をShopifyのエコシステム内で実装できるようになるということです。

分かりづらい点ですが、これは大きな変化です。例えばこれまでShopifyでない決済代行業者に繋いでいた決済ソリューションがあります。「後払い」「コンビニ払い」などがそうですね。

恐らく他アプリと同じように、マーチャントにとってはAppStoreのような場所からインストールでき、開発者にとっては新しい決済手段を開発できるチャンスとなるでしょう。

マーチャントからすると、決済代行会社を選定・実装・比較するコストが大幅に下がりそうです。

なお詳細については、後日発表とのことです。

アプリ開発者向けアップデート4つ

1. Shopify App Storeの検索結果がパーソナライズされるように

App Storeでのディスプレイがパーソナライズされるようです。開発者にとっては重要なことですね。マーケティング手法もすこし変わりそうです。

Shopify App Storeのディスカバリーアップデートについてのツイート

2. アプリの請求情報ページがアップデート

少し細かいですが、開発者はパートナーダッシュボードから、請求情報を管理しやすくなりました。

例えば、アプリの請求と支払いの確認、あるいは返金の管理などですね。また、受領できる支払い方法も銀行振込やPaypalが増えたようです。

3. $1Mの売上になるまで、レベニューシェアがゼロに

開発者がShopifyに支払うレベニューシェアが軽減されました。年間売上が$1Mになるまで、ゼロになります(!)

$1Mというのはつまり、約1億円です。年間1億円売れるまで、税金のようだったレベニューシェアを支払う必要がないのです。これは凄い。

Shopify Unite 2021で発表されたレベニューシェアについてのコンセプト
$1Mまでレベニューシェアなし(公式Twitterより)

ちなみに100万ドルを超えた時点からのレベニューシェアは15%になっており、従来の20%からディスカウントされました。

明確に開発者コミュニティのより一層の活性化を狙っていますね。参入が増えそうです。Shopifyらしい開発者へのリスペクトも感じます。

4. カスタムテーマ開発機能フレームワーク「Hydrogen」

新しく、Reactベースのカスタムテーマ開発フレームワーク「Shopify Hydrogen」が提供されます。

通常のストアではOnline Store2.0を利用していくことになりますが、このフレームワークを活用してよりリッチなUXを提供することも可能です。

これについては、社長のTobi自らがライブコーディング(?)で解説しました。動画の1:03:05あたりからですね。

ちなみにホスティングサーバーは「Oxygen」という呼称のようです。

Shopify Unite 2021でHydrogenのライブコーディングをするTobi
Hydrogenのデモ兼ライブコーディングをするTobi(社長)

Hydrogenについて、今後定期的にアップデートがあるそうなので、開発者の方は上記リンクからSubscribeしてみては?

Shopify Uniteの会後

Shopify Uniteの後、DiscordにてAMA(質問会)が行われました。

公式Discordのリンク → https://discord.com/invite/mdyHp6km2B

Shopify Unite DiscordでのAMAの様子
Shopify Unite DiscordでのAMAの様子

その場での質問と回答は、チャンネルごと削除されるため、テキストでは残っていません。あくまでライブですね。

代わりに、AMAの後でTECHNICAL DEEP DIVEというチャンネルが複数立てられました。

ここで質問すると、担当の開発チームが直接質問に答えてくれます。ただしこちらも恒常的なチャンネルではなく、数時間にわたるQ&Aが行われた後、日本時間5:30に新規の質問受付は終了しました。

Shopify UniteのDiscordに設けられたTECHNICAL DEEP DIVE
Shopify UniteのDiscordに設けられたTECHNICAL DEEP DIVE

正式なフォーラムは別途存在しますが、現時点でなこのチャンネルが今回のアップデートについて最も情報が豊富なフォーラムです。

気になった点あれば、開発者たちが既に回答していないか、検索してみるのもよいかもしれません。

部屋は今回のアップデート情報をフォローするように6つに別れています。

  1. online-store-theme-development
    テーマのアーキテクチャやツール、Dawnについてのチャンネル
  2. start-building-on-shopify
    Shopifyアプリの開発についてのチャンネル
  3. online-store-app-extentions
    テーマや拡張機能についてのチャンネル
  4. custom-storefronts
    Storefront APIについてのチャンネル
  5. checkout-extensions
    決済の拡張機能についてのチャンネル
  6. online-store-performance
    Shopifyのパフォーマンスについてのチャンネル

まとめ

今回のアップデートは、大まかには次の3つに分かれています。

  • テーマ編集ツールのアップデート
  • ストア管理やコンテンツ管理のアップデート
  • 開発環境のアップデート

いずれも既存ソリューションのアップデートです。と言うと地味に聞こえますが、その実、マーチャントが地味に困っていた箇所をカバーする正統な進化をしているように感じました。

かゆい所に手が届いたアップデート内容で、しっかり対応することで各マーチャントは通常の運営ではもう何も困ることがなく、戦略やマーケティングに集中できるようになるでしょう。

その他

Shopifyメールのアップデート

目立って触れられてはいませんでしたが、これらアップデートの反映と同時期(8月)に、Shopifyメールもアップデートされるとのこと。

いよいよパーソナライズ機能が強化されるようで、既存ソリューションであるKlaviyoとの比較が気になるところです。

参考

他の方々によるまとめ(日本語)

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Yuki Yoshinaga
ブランド運営帳

UXマン。UXデザイン・リサーチ, ファシリテーション, コーチング。株式会社SUIHEI 代表 / An UX Designer. CEO of SUIHEI,Inc.