アスレチックポイントガードと呼ばれて –Dennis Smith Jr- by @bobbykaralla

Masashige Sato
No Source
Published in
12 min readJun 27, 2017

※記事内の動画が貼り付けられなかったので、このブログ内では、元記事の動画の箇所では太文字で「動画その1」と明記してます。

ただのアスリートな選手もいれば、デニススミスのような選手もいる。

噂によると、2015年にACLを断裂し、手術を行った2週間後にはダンクをしていたらしい。スミスは垂直飛びで48インチを記録したのだが、ある選手によると怪我前の測定に比べて8インチも増えていると言われている。マブスの球団社長であるドニーネルソンに、高校最上級生シーズンの前に膝の怪我をしてなければ、50インチ飛べただろうと冗談も出るくらいだ。

普通、6–3の身長のポイントガードでは出てこないエピソードだ。

「デニスは私がここに就任してからいたようなどの選手とも形容しがたい。」カーライルは先週のドラフトショーでそう語った。「彼の素早さ、スペースに飛び込む能力、スクリーンロールを使い、様々なオフェンスをする。爆発的なアスレチック能力から見ても、私たちはここまでの選手を持ったことはない。」

実際に、スミスはダラスにとって完全に新しい存在である。19歳という年齢は、彼が2008年にマブスの職につき、コーチした中で最もアスレチックなガードである。最も近い選手といえば、コンボガードのロドリグ・ボーボワだ。ルーキーシーズンに華々しくデビューしたが、怪我に悩まされ、結局海外に活躍の場を求めた。しかし、ボーボワはスミスのようなプレイメイカーではなかったのに加えて、DSJはここ数年のドラフトの中でも突出してアスレチックで他を寄せ付けないほどである。NBAの中でも、積極性と爆発的を持ち、PnRのスキルを兼ねそなえる稀有な能力を持つ選手は、多くはいない。

スミスのプレーを見て惹かれることがある。彼の跳躍力をひとたび目の当たりにすれば、他のスキルや能力を見るのを忘れてしまう。念のため、ラッセル・ウェストブルックを含めずに言えば、スミスはおそらく既にリーグで最も凶悪なダンクをするポイントガードと言えよう。しかし、昨年NCSTで、スミスは1ゲームにつき6.2アシストを記録している。これは大学バスケット界で最も厳しいと言われているACCでトップの数字である。デニスがコートに立つと、チームメイトの3分の1以上の得点が彼のアシストからによる。

また、彼は1試合あたり18.1点と、比較的効率的なもの得点を上げる。相手のディフェンスから毎回より注意を引きつけているのにも関わらずだ。しばしば、ダブルチームにも合う。スミスの大学での最高のパフォーマンスは、非常に高位にランクしているデューク大、しかも圧倒的に不利なアウェイでの逆転勝利の試合で起こった。コート上の将軍は、32点、6アシスト、2スティールを上げた。たった1試合だけをひたすら見るのは誰もが嫌がるだろうが、もしNBAのチームがこの試合だけをずっと見れば、ドラフトで全体一位指名だったかもしれない。

あの夜、キャメロンインドア(デューク大のホームコートの名前)で、ポイントガードに要求されるほぼすべての必須スキルを、スミスはほぼすべて見せてくれた。彼の得点だけではなく、彼がどうやって得点をしたのか。6アシストを記録しただけでなく、どうやってアシストを演出したのか。重ねて言うが、たった1試合だけですべて評価したいと思わないだろう。良いところも、悪いところも、スミスがしたプレイがフィルムにたくさん残っている。ある程度の十分な量の一連のフィルムを見ると、スミスがどんなタイプの選手かアイデアを見つけることができる。次のレベルになればどんな選手にまでなれるんだろうか。

まず、ポイントガードとして私が好きなところは、ピックアンドロールでリムに向かう時の決断力である。スイッチされたか?ディフェンスはアンダーを通ったか?チームメイトはどこにいて、彼らについているディフェンダーがしていることは?1秒を切る時間で5、6個の選択肢から判断をするのは、決して簡単ではない。だが、そういった読みを利かせ、的確にプレーできる選手、特に素早く判断をできるなら、長く活躍を約束されたNBAキャリアを送れるだろう。プレーを読む上で、桁外れにアスレチックであったり若い必要は全くない。バレアはバスケットボールでピックアンドロールの名手として知られている。彼は33歳を迎える。だがもしアスレチックであり、若さを兼ね備えれば、それはボーナスとなる。

スミスはNCSTで何度も将来のプロ選手を対峙してきた。そのすべての選手が正面からスミスにマークをしていたのだ。そうでもしなければ、ビッグマンがヘッジをしたり、ただスイッチをしただけだと、スミスは簡単にディフェンダーを突破してしまう。

動画その1

ビッグマン相手のスミスの武器は、ヘジテーションドリブルにある。ポイントガードは上記の状況で、一般的には方向を変えてもう数回ドリブルをついてからリムに向かう。フロア全体を見回して状況を把握しようとすれば、ドライブするには手遅れになる。バスケットボールは1秒以下の判断が要求されるスポーツであり、敵よりも素早く判断をしなければいけないのだ。

スイッチをされたとしても、チームメイトがハイスクリーンをしに近づくことで、敵のディフェンダーがこれからスクリーンロールをするんだろうと思わせる。その瞬間、スミスは右に素早く展開し、そのまま追いかけてくるディフェンダーを交わしてレイアップを決めるのだ。

動画その2

これがスミスの爆発力がプレーに活かされる場面だ。スミスにスイッチでついた相手は、6–8のアミールジェファーソン。プロでプレイするだろう選手だ。そのサイズにも関わらず、ガードの動きについていけるほどアスレチックであり、相手のレイアップを守ることができる。しかしスミスは、彼でも追いつけないほど素早く、右利きの選手が踏み切る左足でなく、遅くなる右の足で飛んだにも関わらず、相手をあざ笑うように決めたのだ。通常ならば、左足で飛んで相手にもっと守りづらくさせるはずなのに。カイリー・アービングはバスケットにドライブする時、逆足でジャンプすることで有名だが、その技を使えば、時にはショットを難しくさせてしまう。しかし、アービングは、スミスほど跳躍するわけではない。逆足踏切でも40インチ以上の跳躍力があれば、理論上、比較的簡単なショットにすることができる。デニススミスは思いのままにそれができる。

スピードで上回り、頭上を超えてシュートを打ってくるポイントガードを守る最良の方法。特に、他のチームメイトが脅威でない場合は、スクリーンをトラップやダブルチームを仕掛けることだ。前半、ビッグマンをやっつけられたデューク大は、後半激しくダブルチームを仕掛ける決断をした。スミスはプレーを変えて、ギアを1段階上げた姿を見せることになる。

後半早々、スミスはコートの左側に誘われるようにダブルチームを受ける。ジェファーソンとグレイソン・アレンが仕掛けた。3位指名のジェイソン・テイタムは、スミスのピックアンドロールの相方をマークしにやってきた。スミスが顔をあげたときには、ベースライン沿いで囲まれて、4対3の絶体絶命な状況陥った。だが、スミスはどうにかしてこの局面を切り抜けた。

動画その3

念を押しておくが、スミスはそうなる前にうまくプレーをしなければならない。ボールをベースライン沿いに運ぶことはリスクにしかならない。ダブルチームを受け入れることは、毎回失敗が約束されたようなものだ。しかし、彼はベースラインと平行にドリブルを仕掛け、なんとかしてジェファーソンを交わして、左手一本でシューターに絶好のパスを送った。

デュークはそのまま試合の残りずっとプレッシャーを掛け続けた。試合の終盤までスキップして、スミスの最大のプレーを見てみよう。NBAレベルでもすぐにインパクトを与えると思うような、一連のプレーの始まりである。

残り時間3:30で、スミスは敵のハイスクリーンを受けながら右に動きに、1巡目指名のハリー・ジャイルズと4年生のマット・ジョーンズがダブルチームに来るのを察知した。パニックに陥ると思われたが、スミスは顔を上げ続けてゴール下の味方にパスを出した。

動画その4

リスキーなパスに見えただって?そうかもしれない。けど、きちんと渡ったんだ。このプレーでのスミスの最大のアドバンテージは、テイタムがプレーを読んで来る前にパスを通したことだ。数人のNBAディフェンダーなら間に合ってたかもしれない。しかし、テイタムはそうではなかった。さらに言えば、スミスのスクリナーがダーク・ノビツキーであったのなら、同じようなダブルチームはされなかっただろう。私が言いたいのは、スミスは上記のようなパスが見えるビジョンを持っていて、且つ、通そうとする勇気があることだ。

1分後、スミスは似たようなハイスクリーンがまたやってくることに気づいた。今回は、NCSTはスミスにプレッシャーを掛けようとしていることを理解していて、相手スクリナーに対してスクリーンを掛けた。どういうことかと言うと、5番がスミスにスクリーンを掛けて、次に4番がゴール下に向かう5番のためにスクリーンを掛け、フリーになったのだ。このプレーを2度見てみよう、スクリーナへのスクリーンがディフェンスに混乱をもたらしたことに気づくはず。次に、デュークの選手の目線を見て欲しい。みんなスミスしか見ていないことに気づく。

動画その5

これを利用し、スミスはパスフェイクをしてアレンをポジションから外し、ビッグマンがアリウープができるようなレーンを空けている。スミスはデュークのディフェンスの完全に一歩先をいっていた。コーチングとコートビジョンの組み合わせが為せる技だ。

ついに、そのまた1分後、スミスはトップの場所でボールを持ち、先ほどのと同じセットプレーを要求した。スミスの前に2人のビッグマンを揃えて、スミスが右に切れ込む形だ。今度は、デュークのディフェンダーがみんな右側にいるのを確認し、右に少しだけ動くとすぐに左側に切り返した。ここでNCSTはスクリナーに対してまたスクリーンを掛けて、スピードで圧倒的なミスマッチとなるルーク・ケナードと1:1を作り出した。スミスはすべての局面で勝利を勝ち取ったのだ。

動画その6

何度も言うが、スミスは非常によく訓練されたチームより一歩先を行っていた。2分間にわたり、トップクラスのチームと接戦を演じ、ダブルチームを受けたスミスはセンターを使って2つのダンクをもたらし、もう一度仕掛けてくるダブルチームを交わして2つのスクリーンを使ってレイアップを沈めた。彼は事実、チームで最大のマークを受けながらやってのけたのだ。相手の5人のディフェンダーがすべて意識していたにも関わらずである。ノビツキーやバーンズ、そしてノエルの隣でプレーすることを想像してみよう。マシューズやセスのようなフロアを広げるシューターもいる。スミスはなかなか大学では見られないスプレッドピックアンドロールをプレイする機会があった。そして、まもなく彼はバスケットボール界で最も洗練されたスプレッドピックアンドロールを、リーグで恐らく最も広いフロアスペーシングを誇るチームで披露しようとしている。この大部分は、39歳を迎えたチームメイトであり、スミスが生まれて歩くようになる前にリーグデビューし、今は4フィートしか飛べなくなっている、ノビツキーが生み出したものである。

リック・カーライルが選手を褒める時は、本気と捉えていい。新人のポイントガードがランク外のチームをデューク大のホームで勝利に導いたことも、真剣に捉えるべきだ。スミスの他の強みや弱点を紹介する無数の動画があるが、彼がデューク相手に見せたパフォーマンスは2016–17のNCAA全体を見ても最も素晴らしいものの1つとして際立っている。今や、スミスの仕事は、彼のプレーを1段階上まで持っていくことだ。カーライルの仕事は、それを適える環境にスミスを置くことにある。

スミスは現実離れしたアスレチック能力と、鋭いピックアンドロールスキルを兼ね備えた類稀なる選手だ。現代のNBAではこの資質があれば、スミスを有望株へと押し上げることになる。ここ20年でダラスに来たルーキーとしては最もワクワクする選手かもしれない。それだけでなく、スミスは成長の余地があり、誰もが予想したよりも早くマブスの若返りが成功したかもしれないと、あなたも思うはずだ。そうでなくとも、望みを感じさせてくれる。思い返せば、1年前、マブスのロスターはほぼ空っぽに近かった。そして、1巡目指名権を持っていなかった。たった12ヶ月だが永遠のように長い道のりを歩んできた。ダラスはリーグで最年長のチームから、最高にワクワクする将来の核を一つずつ集め続けた。カーライル曰く、これから待ち構えていることはスミスにとっても、他のすべての若い選手にとっても決して簡単ではない。だが今だけは、夢を見られる気がする。

--

--