「センスは知識からはじまる」はWebのプロダクトでも当てはまる
PMという職種柄もありますが、単純に好きなのもあって、ほとんどの時間をサービスやアプリを触ったり、インターネットトレンドの情報収集をしたりすることに使っています。
ひたすらインプットをしていたら、センスや勘ってものはなくて、地道なインプットや経験によって支えられる訓練可能なスキルだなと感じるようになり、そのことが見事にまとめられている書籍があったので引用しながら自分の考えを述べます。
著者は、くまモンのアートディレクションなどで有名な水野学さんです。
本書で一貫して主張されているのは、「センスとは持って生まれたものではなく、後からのインプットで精度を高めることができる。ゼロからいきなり奇抜なアイデアが浮かぶのではなく、既存のものを組み合わせることで、なるほど!というアイデアが浮かぶ。」ということです。
僕が色々なサービスをみるのも、世界を見渡せば、基本的な機能やUI、プロモーション内容などは既に出尽くしていて、いかにそれらを知っていて自分のプロダクトに適用できるかが大切と思っているからです。
センスとは知識の集積である
既存のものを多く知っていることがいかに大切かを文章を書くことを例に説明しています。とある機能やUIについて、10個のアプリを見るよりも100個のアプリを見ている方がいいものを考えつく可能性が高まるのと同じです。
文章を書くことをイメージしてみましょう。 「あいうえお」しか知らない人間と「あ」から「ん」まで五十音を知っている人間とでは、どちらがわかりやすい文章を書けるでしょう? どちらが人を喜ばせる文章を書けるでしょうか? ひねくれた人は「あいうえおだけで素晴らしい文章を書ける人こそ、センスがある」と言うかもしれません。「あいうえお」だけ使ってハッとするフレーズを生み出せる人もいるでしょう。しかし、五十音を全部知っている人と勝負をしたらどちらが勝つかは明らかであり、そこを否定する余地はないと僕は考えています。 仮に一発勝負であれば、あいうえおしか知らない人が勝つかもしれませんが、何回にも及ぶ勝負であれば、最後に勝つのは五十音全部を知っている人でしょう。さらに、あいうえおだけで素晴らしいフレーズをつくれる人は、言葉の知識が非常に豊富であり、五十音も知っているはずなのです。 センスがいい文章を書くには、言葉をたくさん知っていたほうが圧倒的に有利である。これは事実です。 文章というたとえを使いましたが、これは仕事や生きるということにおいても同様だと思います。知識があればあるだけ、その可能性を広げることができるのです。
さらに、既存のものを組み合わせることで新しい価値が生まれるとも説明されています。
イノベーションは、ゼロベースで何かをつくることではありません。 『アイデアの接着剤』(朝日新聞出版)でも書きましたが、「1から2をつくる」「AにBを掛け合わせてCにする」そういった意味合いの言葉だと思います。 世の中にすでにあるAというものと、自分が見たことのあるBをくっつけて、Cというものを生み出す。これを高い打率でできれば優秀なクリエイターになれるはずです。どんな人であっても、ゼロからいきなりCがひらめくことは非常に稀です
ただインプットだけをするのではなく、インプットしたものを自分なりに咀嚼することも大切です。
知識の集積に懸命になりすぎると、人は時として自由な発想を失ってしまいます。センスを磨くには知識が必要ですが、知識を吸収し自分のものとしていくには、感受性と好奇心が必要なのです。
感受性+知識=知的好奇心
効率よく知識を増やす三つのコツ
知識を増やしていくには以下の3つのアプローチがあると書かれています。
- 王道から解いていく
- 今、流行しているものを知る
- 「共通項」や「一定のルール」がないかを考えてみる
僕も、企画時に他のサービスを調べる場合は、長く支持されているサービスをみる→最近使われるようになってきているサービスをみる→全てに共通することや傾向をピックアップする→ピックアップしたものを自分のプロダクトに適用する、というアプローチを取ることが多いです。
また、流行は支持されると王道になるという認識も大切です。
例えば、スナチャのおかげで、何もサジェストがないけどスワイプすることで何かアクションができるという操作は、色々なアプリで導入されてきています。
ビジネスパーソンにとってセンスの重要性は増す
技術が停滞すると、精度を上げるためのセンスが重要な時代になり、歴史を振り返ってみても、技術革新とセンスによる精度向上は行ったり来たりしていると書かれています。
僕らの分野でも、AIやVR、IoTなど、まだまだ技術が伸びる領域もありつつ、以前に比べるとその革新角度は鈍化してきていて、いかに既存技術を組み合わせて新しい価値を生み出すかが重要な、センスの時代になっているのではないかなと思います。
企業やビジネスパーソンにとってもセンスの重要度が増すと主張されています。
企業の価値を最大化する方法の一つに、センスというものが挙げられる。それどころか、その会社が存続するか否かも決める。 個人についてもそれは同じで、同じくらいの能力を持つビジネスパーソンであれば、その人のセンスが違いを生み出すのではないでしょうか。
市場はすでに、センスの方向に動き始めているのです。だからセンスのいい企業が成長し、センスのあるビジネスパーソンが求められているのではないでしょうか。
企業の美意識やセンスが、企業価値になる。これが今の時代の特徴です。
働き方の話。個人の仕事の仕方にも当てはまる。
どんなにいい仕事をしていても、どんなに便利なものを生み出していたとしても、見え方のコントロールができていなければ、その商品はまったく人の心に響きません。 見え方のコントロールこそ、企業なり人なり商品なりのブランド力を高めることにつながっていく。そのブランド力を高められるのが、センスのよさなのです。センスにはやはり、「最適化」が非常に大切だということでしょう。
紹介した以外にも、安土桃山時代と千利休、著者が運営しているショップなどの実例を交えて説明されている考えが多く紹介されているのでオススメです。
本書に書かれていることを意識しながら、これからも色々なサービスを観察することで、センスを高めていきたいです。