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もはや「医師」と「患者」の関係ではない

近年、オープンダイアローグという名のフィンランドの精神科医療の取り組みが日本でも注目されている。オープンダイアローグはフィンランドにおいても一般的なアプローチというわけではない。北極圏に近い6自治体をキャッチメント・エリア(管轄区域)とする西ラップランド保健圏域において、唯一有床の精神科専門病院であるケロプダス病院を中心に実践されているユニークな取り組みである。この度、オープンダイアローグの創始者が来日し、8月20日に東京大学の安田講堂で講演を行われた。

フィンランドで実践されており、患者との対話に重点を置いた精神疾患の治療法「オープンダイアローグ」の創始者、ヤーコ・セイックラ、ビルギッタ・アラカレ両氏の講演会を 8月20日に取材しました。

(Medical Tribune 編集部・平山茂樹)

医学の世界で「講演会」といえば、データがぎっしり詰まったスライドを映しながら、最新の知見を披露するのが一般的です。しかし、この日の「講演会」ではそうしたスライドは使われず、壇上に上がった両氏は日常会話の延長のような「対話」を展開しました。

「講演」ではなく「対話」。

両氏にとって「情報」とは、伝え手が受け手に一方的に与えるものではなく、コミュニケーションを通して生み出されるものと考えられているのでしょう。そしてそれは、両氏にとっては治療の現場でも同じこと。オープンダイアローグでは、医師と患者は「治療する側−される側」という非対称な関係をやめ、病気の寛解に向けて「共に」歩んでいくことが目指されます。とかく「薬剤を使わない」点ばかりが注目されがちなオープンダイアローグですが、こうした医師と患者の対称性にこそ、その新しさがあるのかもしれません。

両氏の「対話」の後、客席からの質疑応答は行われませんでした。行われたのは、両氏の「対話」から感じとった思いを、隣の人と「対話」して感想を共有するということ。「伝え手−受け手」「治療する側−される側」という非対称な関係から解放され、「対話」が会場中にまたたくまに広がっていく光景に、精神療法の新たな可能性を垣間見たような気がしました。

Seikkula氏

すぐに決められることばかりではない中で、本人とそのご家族が安心できるような状況をつくり上げていくことが大事です。そのためにこそ、一緒のミーティングに参加することが大切なのです。何が起こったのか、そしてこれからどうするのか、みんなで考えていくのです。

Alakare氏

『これが答え』というものはありません。答えを一緒につくり上げていくことがとても大切です。そのために、最初から患者さんを診ている人たちが、最後まで一緒になって作業を続けていくことが非常に重要です。人がそこで入れ替わってしまうと、同じ理解が共有できなくなるからです。

NPO恒志会の創始者、片山恒夫博士は病気の原因となるその根源を生活の中から取り除いていくためには、医療者と患者の共同参画が必要として「医・患共同(協働)」という言葉を用いていた。

医患どちらも「治療の局面において」協力し合い、どちらか一方では回復は望めない。双方が補いあって初めて効果が発揮するのだ。

その場合、「与える者ー受ける者」「治療する側ーされる側」の関係性ではうまくいかない。上から見下ろした態度で、病気を治す、あるいは指導するというのではなく、患者と同じ目線に立ち、患者が肉体的、精神的および社会的な存在であることを、常に念頭に置いて対処しなければならない。

啐啄同時(そったくどうじ)

鳥の卵が孵化するときに、ひなが内側から殻をつつくことを〈啐〉といい、これに応じて、母鳥が外から殻をつついて助けることを〈啄〉という。
雛と母鳥が力を合わせ、卵の殻を破り誕生となる。この共同作業を啐啄というのだが、後に転じて「機を得て両者が応じあうこと」「逸してはならない好機」を意味するようになった。

患者がブラッシングの難しさ、時間の長さに悩むその時に、それを察知して機を逸することなく情報を提供することは、まさに教育の要諦とされる啐啄同時に当たるだろう。

医療者の指導・処置と患者の自発とが一致した時、はじめて治療の効果をあげるのではないだろうか。

そうして、片山は次のように言っている。

治療の完成とは、ただ全治させるということではなく、再び同様な疾患を起こすことなく(再発防止)、また他の疾患についても十分抵抗し,予防し得る知識と技能と体力(健康の増進)を獲得させることをもって完成とするのである。

そうして、その病気をつくってしまう生活の有り様、病気に対する態度そのものを治療してゆくことこそ治療の根源である。

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