口腔内細菌

「リンゴをかじると血が出ませんか?」

Matsuda
koushikai
5 min readSep 25, 2016

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という歯磨剤のCMを覚えている方もおられるでしょう。
初めて放送されたのが1964年で、およそ50年前になります。
これが「歯の病気は虫歯だけではない」と多くの人が知る契機になったと言われています。

この記事は、歯周病についてのおさらいです。

確認のため要約すれば、歯周病は感染症であり、慢性疾患であり、生活習慣病です。

感染症:寄生虫、細菌、真菌、ウイルス、異常プリオン等の病原体の感染により、「宿主」に生じる望まれざる反応(病気)の総称。

慢性疾患:回復まで時間がかかり、完治しにくく、長期間の治療が必要な疾患の総称。慢性疾患は、比較的中高年齢層が多く、生活習慣が原因となる為に、生活習慣病と同じような位置づけの疾患。特徴としては、初期段階では自覚症状が、殆どないために、放置しがちで、その為治療が遅れてしまい、更に大きな疾患を併発する可能性がある。

生活習慣病:糖尿病・脂質異常症・高血圧・高尿酸血症など、生活習慣が発症原因に深く関与していると考えられている疾患の総称。日本では、かつて加齢によって発病すると考えられたために成人病と呼ばれたが、生活習慣が深く関与していることが判明してきた。このため、1997年頃から、予防できるという認識を醸成することを目的として呼び方が変わった。

歯周病の本態

バイオフィルム細菌集団

ストレプトコッカス・ミュータンスが分泌するグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)という酵素によってショ糖が分解されて作られる、不溶性グルカンのことをバイオフィルム(≒ 歯垢、デンタルプラーク)といいます。左図に示すように、QSシグナル(参加定数感知シグナル)を使って情報交換し、バイオフィルム集団となって各部位で縄張りを築き生存します。

バイオフィルムが作られると、さらに様々な細菌が付着・定着し、増殖・崩壊を繰り返します。
そして、24~48時間のうちに酸を産生して、歯を溶かし始めます。
これが虫歯の発生です。

また蓄積されたバイオフィルムは、酸素や抗菌剤、唾液の自浄作用などから細菌を守るバリアとしても働きます。
そのため、バイオフィルムで守られた内側は空気の少ない環境になり、嫌気性細菌が非常に繁殖しやすい環境になります。

歯周病は、歯と歯ぐきの境目である歯周ポケットと呼ばれる部分から、歯根に沿って嫌気性細菌が入り込むことで起こる病気です。
歯周ポケットに細菌が入り込むと、毒素や組織破壊性酵素を分泌し、歯肉に炎症を起こし、その炎症を避けるような形で骨が溶けていきます。

細菌の繁殖が旺盛だったり、細菌がどんどん奥に侵入したりすると、それに応じて骨もどんどん溶けていきます。

炎症初期の段階では、ほとんど自覚症状が出ないため、本人の気付かないうちに進行してしまいます。
このような病気のことを Silent Disease(沈黙の病気)と呼んでいます。

口腔内をよく観察していれば、歯を磨いたときに時々出血があったり、歯ぐきに赤いところが見られます。
このようなわずかな兆候を見逃さないことが大事なポイントになります。

もう少し進行すると、歯を磨くたびに出血するようになります。歯が浮いているような感じがする人や、歯ぐきにかゆみを感じる人もいます。

さらに進行すると、歯の動揺が大きくなり、歯ぐきの腫脹・排膿をくり返します。
この段階になると咀嚼するにも困難になります。

このように放置することによって歯を喪失するリスクがどんどん上昇します。

細菌の動画を見てみよう

位相差顕微鏡

処置前

基本的にはだれの口の中にもみられるものですが、その密集度の大小と、歯周病に特異な細菌がいるかどうかが鍵になります。

処置後

およそ1ヶ月間、歯磨剤不使用で、1日30分以上のブラッシングを励行。全体の細菌数が非常に減少しています。歯周病に特異的なトレポネラやカンジダ等がみられません。

各世代の健康歯肉について

自己採点を行う時の基準になる健康な歯肉の写真です。
参考にして下さい。
すでに歯周病になっていると思われる方は、養生の目標になります。

男性A 15歳

男性B 20歳

男性B 36歳

男性B 51歳

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