子供の睡眠 — 「眠育」・「醒育」を語る会のご案内

主催 EDM研究会 (EDM:Education-Dentistry-Medicine)

Matsuda
koushikai
5 min readMay 8, 2018

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昨年、土井先生の提唱で教育・歯科・医科が連携して子供の睡眠障害について研究・事例検討・研修をしていこうということでEDM研究会ができました。

子供達への対応の現場として当然ながら学校園との関わりが重要となるため、その関わりかたについて調査した中で、今回基調講演を御願いしました三池先生の「眠育」という考え方に出会いました。

睡眠に関して素人の私(小鹿)は、この三池先生と土井先生の考え方を融合していけば、学校園を通して私たちが関われるゼロ歳児から高校までの広い範囲の子供達に対応していくことが可能なのではないかと単純に考えてみました。

そこで、基調講演として三池先生にぐっすり眠る「眠育」について、また、土井先生にはぐっすり眠ってすっきり目覚める「醒育」についてお話しいただき、子供達の睡眠をどのように考えていくことが有効なのか皆様とディスカッションしてみたいと考えて本会を企画いたしました。

日時 2018年5月13日(日)16時~

場所 茨城県立こころの医療センター 集会室

講師 三池輝久先生 土井永史先生

基調講演 (60分)

三池輝久先生

「眠育のすすめ〜子どもと社会の幸せを招く眠育〜」

講演 (45分)

土井永史先生

「眠気の強い若年者の一群: なぜすっきり目覚めないのか?」

休憩 (10分)

ディスカッション (45分)

(18:40終了予定)

EMD研究会について

例えば

①朝から頭痛や腹痛をきたして保健室で休みがちな若者、

②日中の覚醒水準が十分に高まらぬために注意集中力低下・不安・抑うつをきたす若者、

③十分に睡眠時間を確保しているにも関わらず、MSLTで睡眠潜時が短縮し、CO2貯留を呈する若者、

④PSGで右上がりにPCO2が上昇する若者、

⑤細面、小顎、下顎後退などの特徴をもつ若者

⑥歯並びの悪さ、歯列の狭さなどの特徴を持つ若者

①~⑥は重なるところが大きく、①②は教育現場からの視点で、③④は睡眠医学からの視点で、⑤⑥は歯科/学校歯科からの視点で把握されます。しかし、これら3者が同じ土俵にたって向き合い、意見交換しなければ、これらの若者の

正確な病態評価・治療的対応はできません。

強い眠気のある若者は、必ずしも「眠い」という主訴はありませんが、精神的には、不安と注意集中力減退、自信欠乏・抑うつ気分を呈しています。さらに生理的には①横向き寝・うつぶせ寝が多く、②呼吸曲線では典型的な’flow limitation’ を示し、③無呼がエピソードは多くないものの、REM期の低呼吸エピソードが増加しており、④低酸素血症は目立たない(SPO2最低値=85%~94%)ものの、睡眠中にPCO2が高値で推移し(多くは右上がりに上昇し)、⑤MSLTで睡眠潜時の著しい短縮(ときにSOREMが出現)し、日中のPCO2も高値で推移する、という共通の特徴を認めます。さらに、⑥細面・小顎・狭い歯列といった骨格の異常があり、⑦舌長軸の前傾/舌圧低下を認め、かつ⑧喉頭部での上気道狭窄を認めます。

一例として、完璧に近い噛み合わせの矯正治療(結果的に口腔体積を縮小する)をきっかけとして発症している事例が提示され、これがまれならず存在することも注目に値すると思われます。

そして、精密に計算されデザインされたMPの作成もしくは歯列拡大矯正(いずれも口腔体積を増加させ。気道拡大に貢献する)、ならびに舌筋力アップとの併用により呼吸が深くなりCO2貯留が改善されると上記精神症状も改善する、ということが示されています。

このことは、歯列矯正に当たっては、気道形態に与える影響に配慮し、その子の心身の健康の増進に寄与するように治療デザインがなされるべきである、ということを示しています。

この事例では、教育現場で眠気の強い若者を目の当たりにしている人、歯科医療に従事している人、睡眠医療に従事する者の3者がそれぞれの経験と知識・技術を持ち寄り深く検討できたことが、大きな収穫でした。

皆さんそれぞれに近似症例をお持ちであろうと思います。そして、それぞれに事例を分析しておられると思いますが、我々はおそらく「群盲象を撫でる」状態にあるのではないでしょうか?

これを乗り越えて全体像を捉え、経験を役立つ知識・技術として結晶化させるために、詳細なデータを蓄積していく必要があると考えます。

これまでは「歯科医科連携」を主に低酸素血症を呈するOSASに限定し、

国民の健康寿命延伸のための歯科医科連携

が提唱されていましたが、これからは「低呼吸症候群」にも注目し、

若い世代の心身の健康を護るための歯科医科連携

も提唱してゆく必要があります。

この研究会を核として、研究・事例検討・研修ができれば、と願っております。

ここ最近、睡眠についての問題が、医科・歯科界で話題になってきております。

興味のある方は、緒方 risunomori@gmail.com までご連絡ください。

NPO 恒志会

http://koushikai-jp.org

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