患者指導とは

医師・日野原重明先生が7月18日早朝に105歳で亡くなられた。
歯科医師・片山恒夫先生もご存命なら107歳。
同世代を生き抜いた、類まれな方々だった。
片山先生は、様々な臨床の中から、虫歯や歯周病さらに全身の慢性的な病気の多くは、日常の生活のあり方に起因していることを見抜き、関連する様々な論文を検索し、悩んだ末に「生活由来性疾患」と名付けた。
生活のあり方とは生活習慣であり、第一に食習慣である。すなわち食事の内容、調理の仕方、咀嚼の回数、砂糖の摂取量、ファストフード摂取の頻度等々で、ただ単に栄養素の問題ではない。
そのほかに、過剰なストレスの有無、運動量と質の問題、呼吸や睡眠の問題にも言及していた。
日野原先生は、後に予防医学の重要性を指摘して、医学用語、専門用語は非常に抽象的すぎるから分かりにくいとし、実感が湧くような分かりやすい言葉を用いた。例えば、それまで公に用いられていた「成人病」を「生活習慣病」に変えた。
「生活由来性疾患」と「生活習慣病」、言葉は違えど、両先生の慮りは全く同じである。
お二方の患者に接する態度と指導が極めて似ている
日野原先生の場合
「患者に教えさとすまたは上から目線のやり方はしない、患者に質問しやすい環境を整え、質問させる。人は他人から言われたことは忘れ易いが、自分で聞いたことは忘れない。しかも、心から疑問に思ったことがよく理解できると、自分で発見した気持ちになる。これは大きなモチベーションになる。」
また、コンプライアンス(服薬等の指示遵守度)については、こう言っている。
「患者が本当のこと言っているとは限らない、だから体のことも、心のことも本当のことを言えるような人間関係を作ることが大切だ。それには言葉が大切だ。同じ言葉でも、大げさな言葉を使わないで、非常にリファインされた言葉、その人に合った言葉で対応する。だから、医者というのは役者なんだよ。相手次第で、表情なり言葉なり変わるわけだ。だから、ボキャブラリーをたくさん持つ必要がある。また、聴診器とか心電図などを大切にする以上に、心を通じ合わせることが大切だ。」
片山先生の場合
「患者が本当のことを言っているとは限らない。だから、患者が指示通りブラッシングを行なってきたか、そうでないかを見分ける目を持たなければならない。例えばジェントル・プロービング、プローブを2〜3ミリポケットに入れてそっと撫でる、これで一見綺麗に見える歯肉が毎日磨いてきたものなのか、普段怠けて今日だけ磨いたのかが大抵分かる。また、毎回口腔内の写真を撮影し、歯肉の状態の変化を、歯科医も患者も視覚的に理解できるようにする。よくなっていれば褒めてやればいいし、患者のさらなる励みにもなる。変化が見られない時には、ダメだとは言わず、もっと磨かなければならないと患者自身が自ら悟るきっかけを作る。言葉よりはるかに効果的だ。そして、会話や処置は、患者自身が自ら治そうとする意欲を高揚させ実践させるための手段でもある。しかし、根本は信頼しあえるような人間関係を作ること。」
総じて、医療における投薬、手術の必要性を否定するわけではないし、それは機能回復のためには絶対必要な場合も多くある。
しかしながら、病因をそのままにしての処置では一時的寛解は望めても、再燃・再発は必ず起こるし、健康を目標にした医療とは言い難い。
そして、医者・患者が協働して、患者が本来持っている自然治癒力を発揮できるような身体に導くことこそ医療人の使命であり、病気を根源から治そうとする医療こそ真の医療であろう。
日野原先生のご冥福をお祈りいたします。
NPO 恒志会
学び合う医療 支えあう医療 ほんまもんの医療

