なぜ「かかりつけ歯科医師」がいると長生きなのか

生存を維持しQOLを高めるために必要な口腔ケア

Matsuda
koushikai
4 min readOct 17, 2016

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歯科から健康へ

歯科医学から口腔医学へのパラダイムシフト

2016年10月16日(日)、恒志会創健フォーラムが開催されました。 フォーラムの中から、首都大学東京名誉教授・星 旦二先生の抄録をご紹介します。

図1:かかりつけ歯科医師がいると長生きだ

私たちは、都市郊外A市の65歳以上の高齢者6年間追跡し、かかりつけ歯科医がいる人ほど、その6年後の生存が男女ともに維持されることを世界で初めて明確にしてきました。

図2:生存が維持されるメカニズムは何だろうか

かかりつけ歯科医師がいるとなぜ故に、その後の生存が維持されるのかについて、東京都港区歯科医師会の協力を得て、2008年より歯科医院受診者を対象に継続的な調査を実施してきました。その研究仮設モデルです。

調査の対象と方法

調査対象者は、東京都港区芝歯科医師会会員42歯科医院を受診した10歳から95歳までの2,900人としました。

調査方法は、自記式質問紙調査とともに、歯科医師による口腔内診査を行いました。

有効回答数2,745人を分析対象としました。平均年齢は52.3歳でした。

2012年には、2,745人の中の450人に対して、QOLを規定する要因を明確にするために、食の豊かさを追加して追跡調査を実施し、口腔ケアと口腔衛生と食の豊かさと主観的健康観や生活満足度との因果構造を解析しました。

生存調査は、初期調査から約7年後の2015年3月31日までの生存と死亡の状況と死亡日を、歯科医院の受診状況と電話などによって明確にしました。

調査内容は、自記式質問票の調査項目は、性と年齢、主観的健康観、生活満足感、歯間清掃用具(歯間ブラシやフロスなど)使用状況です。

引き続き、歯科医師によって実施した口腔内診査として、現在歯数、口腔清掃状態、歯肉状態、受診状況を調査しました。

QOLは口腔ケアを背景とし、その後の食生活を維持させていました

歯科医院を受診した2012年の”QOL”は、4年前の”口腔ケア”が”口腔衛生”を維持させ、4年後の”食生活”を経由して規定されることが示されました。

4年後の”QOL”は、口腔ケアと豊かな食に支えられる因果構造が世界で初めて明確にされました。

口腔清掃状況が優れていると、7年後の生存が維持されていました

2008年時点での口腔清掃状況が優れているほど、7年後の生存が維持されていました。

多量のプラークが見られる場合の生存率が最も低下していました。

7年後の生存は、口腔清掃状態と優れた歯肉状態が決定する可能性

2008年時点での口腔清掃状態と歯肉状態は、歯間清掃用具と予防受診によって規定され、同時に、主観的健康観と生活満足感の維持に関連し、その7年後の生存維持に寄与する関連構造が明確にされましたが、説明力が大きくはありませんでした。

これからの研究課題

本研究では、歯科医院を予防目的で定期的に受診する行動は、口腔衛生状態を望ましくすると共に、食の豊かさを経て、主観的健康観や生活満足度と関連するQOLを維持増進させている可能性があり、最終的には生存維持と生存日数の延伸に関連する因果構造が示されました。

しかしながら、生存維持を説明する決定係数が小さいことから、生存追跡期間を延長した解析が今後の研究課題です。

左:図1 | 右:図2

実際の講演会では、90数枚のスライドを用いての、驚くような調査内容でした。

この調査結果を発表するにあたって、当初国内のある学会誌に応募したところ、その論文はある文言が問題になり、結局は受理されませんでした

それで、American Journal of Medicine and Medical Sciencesに英訳投稿し、その結果、世界で初めての調査内容の論文であることが明らかになり、大きな話題になりました。

ホームページに、恒志会会報Vol.11に掲載された「講演抄録」と講演会で用いられた90数枚のスライドを掲載しました。

ぜひご覧ください。 http://site-875704-1349-1141.strikingly.com

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