睡眠と口腔機能(2)

「閉塞性睡眠時無呼吸OSAに対する歯科の役割」 外木守雄先生

Matsuda
koushikai
4 min readOct 28, 2017

--

睡眠は人間や動物の生理的要求であり、特に人間にとっては、生命維持に欠かせないもので、身体を休息させ回復する働きを持ち、身体・精神の発達、安静に不可欠なものである。

またNon-REM睡眠は組織の修復、抗加齢要素、成長発育に関与する。

さらに睡眠時間は少なくても多すぎても生命予後に関係すると言われている。

睡眠障害は、その原因が中枢性、末梢性、及びそれらの混在性のものとに大別される。歯科に関連するものは睡眠中に無呼吸および低呼吸を生じる睡眠関連呼吸障害であり、その1つに閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)がある。

OSAとは、「10秒以上続く無呼吸状態が一晩(7時間)に30回以上、または1時間あたりに5回以上見られるもの」と定義されたのち、「低呼吸といった換気障害や、それに伴う覚醒反応による病態生理学的問題」を閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAHS)としたことから始まる。

OSAの病態は、舌および気道周囲の軟組織が弛緩して、気道を狭窄するため低呼吸=イビキ、さらに無呼吸=呼吸停止が発生する。

このように、OSAの初発症状はイビキであり、最も重要な所見である。故にストップ ジ イビキStop the IBIKI !)なのである。

閉塞性睡眠時無呼吸症の治療は、舌および咽頭周囲の軟組織に囲まれた気道の拡大が治療の主眼である。歯科的治療法には、①口腔内装置(OA)と②外科的矯正手術などがある。

①口腔内装置(OA)

OAには下顎を前方に移動させる下顎前方位装置(MAD)と、舌を前方に保持する舌保持装置(TRD)の2つがあるが、主には MADが用いられる

MADにも一体型と分離型があり、それぞれに利点・欠点がある。

一体型:安定した下顎の前方保持可能。顎関節への負担が大きい。睡眠中に開口する症例に適応。

分離型:開口、会話や飲水が可能。ストレスが少ない。使いやすい。睡眠中に開口しない症例に適応。

どちらのタイプも、鼻閉があると適応しづらい。鼻閉のある症例は耳鼻咽喉科と連携が必要である。適応する場合は、口腔内の状態(歯牙の欠損・動揺度、開口量、咬合状態など)を精査の上判断する。

また、OAの適応診断には医科における睡眠検査が必要であり、無呼吸指数AHIと呼吸障害指数RDIにより評価され、数値が5以上でOAの適応となる。また、AHIが20以上で経鼻的持続陽圧呼吸療法(N-CPAP)の適応になる。

OAの副症状として、違和感、顎関節痛、咀嚼筋痛、唾液過多などがあり、事前に説明と同意を得ておく必要がある。

OAにおける下顎位置決定法

1. 最大前方位置からの決定法:咽頭気道は、最大前方位の67%から有為に拡大することから、最大前方位置の70%を目安とする。しかし全ての症例に当てはまるわけではなく、副症状を勘案してその位置を決定する。

2. イビキ音テスト法:覚醒時の患者に仰臥位でイビキをかかせ、徐々に下顎を前方位にし、イビキ消失の位置を下顎位とする方法。

3. 内視鏡を用いて効果を予測する方法:経鼻的内視鏡を用いて、下顎を前方位にさせた時の軟口蓋の広がりを観察して下顎位を決定する方法。

②外科的矯正手術

歯列/顎顔面成育治療方法:成長期に顎骨を適切に発育させ、良好な顎顔面形態を構築することで、睡眠呼吸障害を未然に防ぐという考え方。若年者に見られる、睡眠中の上気道抵抗がある患者(イビキが特徴)で、上気道の通気性が解剖学的、生理機能的な要因で阻害されることで発症する。

この治療法としては上顎拡大法(Rapid maxillar Expansion)がある。

しかし、この治療法に関する世界的な研究が数多く行われてきたが、研究デザインの不備や効果の数値化の問題などのため、今尚論議の対象となっている。

睡眠医療における医科歯科連携

最後に、睡眠歯科医療(歯科医師)は、睡眠医療(医師)と密接に連携しなくては成り立たない。

しかし、これは医科から歯科へ一方向で成り立つもの出なく相互の協力なくしては成立しないものである。

今後は多くの歯科医師かが睡眠医療に興味を持ち、学会や講習会等に参加し知識を得ることが求められ、このような社会活動が日常に潜む睡眠障害の早期発見、早期治療に繋がることが望まれる。

学び合う医療 支えあう医療 ほんまもんの医療

NPO 恒志会

--

--