クリエイティブ・コンサルティングの可能性

Subaru Matsukura
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6 min readSep 7, 2017

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主にうちがやっていることは、リサーチ・プランニング・クリエイティブディレクションの3つ。Nue incに変わってから何が変わったかというと、受託制作を大幅にカットし、半分以上を半年や年間契約のコンサルティング契約に変えました。

このような仕事で特に悩まされるのが「リサーチ」に対する意味が深く理解されていない点にありました。個人的な悩みですが。すぐにアイデアやクリエイティブのイメージを打ち返してくれるという前提での相談が多かったのも、この仕事を始めてからのずっと悩みのタネでした。

デスクにいて何か生まれるわけがない。どんだけド短期でもしっかりリサーチを行いアイデアを作り、実現してきました。その仕事を10年続けても、リサーチの意味は浅く見られたまま、自分だけが年を取っていることに気付き、そもそもの「仕事が生まれる状況から考え出さなければいけない」そう気付いたのが去年の秋頃。

ほとんどの相談は、企業の中で抱える課題であったり、ある側面に置いてうまくいってないので改善したい、新しい商品が出るので整えて見せたい、というようなもので単発の受託制作というオーダーメイドのような方式が取られます。

この手の仕事は明確にデッドラインがひかれるケースが多く基本数ヶ月の短期戦が多いです。コンペもまさにそうですね。なくなってしまえばいいと常々思っているのですが(これが各社のクリエイティブの統率や戦略のブレ、知見の流出や損失を生んでいると思っている)1ヶ月や数週間で何を理解できるのか。歩み寄り以前にたくさんのクリエイターが予想の世界で発想のぶつけ合いをします。オリエンがそもそも内部発信のものなので視点が企業目線でそもそも間違っているケースも。

ただ出されたお題なので各社限られた情報を掴み、提案にねじり寄せます。アイデア合戦自体好きなのでコンペフィーが出れば基本参戦するようにしています。基礎体力落ちるの嫌だし、知恵比べみたいで面白いのですが、コンペ自体は企業にとって決して良い方法ではないと思ってます。

「リサーチ」「プランニング」でお金が取れない時代

この仕事をしてる中で一度だけ「リサーチ費」に疑問を持たれたことがありました。端的にいうと「これいるの?」という感じ。いるよ。
また会社によってはアイデアの相談をしてきて「お金かかるんですか?」と驚かれたこともあります。かかりますよ。

納品物として明確じゃないものは支払いにくいのかもしれません。
でも、全ての提案の土台となる作業なので20代の頃は何度も悔しい思いをしたことがあります。

先輩プランナーもいない。しっかりこの仕事が成立することで後続を作りたいと思っているので、時代の雰囲気に流されず、ここでしっかりしないと今後私のような業務はタダで出来るものになってしまう。

そこで気付いたことは、仕事を通じて、こちらも学ばせてもらうわけなので、企業側も学ばせてあげることでお互い歩み寄ればいい、ということでした。なんなら私が持っているスキルをそのまま窓口担当者が身に付けることで、こちらの仕事はなくなるかもしれないが、その会社にとっては強化されることになる。これは少し賭けだけど、なんとなく正しい気がする。そう思いNue incでは、自分も学ぶし、お客さんも学ぶ関係性で進めている。

クリエイティブの相談役

半年・年間契約のパートナー(お客さん)と一緒に動き出して1ヶ月やそこらですが、大きな違いを感じています。まず、これまであったようなオリエンや整理された情報ではないところの課題に向き合えています。

社内の状況を変えていきたい。どういうデザインで迎えると顧客が喜んでくれるか一緒に考えて欲しい。こういう技術があるが、何をすると時代にマッチするか。

どの声もオリエンでは出てこない産声だったり、心の声。これまでの仕事とは出発点が全然違う。そこでリサーチして得た情報の会話をすると、リサーチの意味がすごい理解できたと喜んでくれます。

半分中の人になることで、今まで得られなかった0地点のスタートを一緒に切れる。本当、何故最初からこの方法でやらなかったのか、と思うくらいしっくりきています。

今、パートナーはWorkplaceという業務用SNSで常時繋がっていて、月数回の定例やビデオ会議を刻みつつも、こちらで入手した情報はリアルタイムでシェアされ、オンライン上でも議論が生まれ、気付きがあり、今までの速度とは比較にならないほど高速に課題解決に向けて動けています。

やっている作業は変わらないのに、関わり方を変えるだけで向かい風が追い風に変わる感触があります。今日もパートナーとの定例会議があり、議論の中でとてもワクワクするアイデアがでました。私が出したのではなくチームで至ったアイデアが生まれました。私だけじゃなく、パートナーの意識もしっかり変わっている。お互い良くなっていく実感がありました。

その先を見たい。

これまでたくさんの仕事をしてきました。とても良い結果がでたものや、お客さんがすごい喜んでくれるもの、売り上げが倍増するもの、どれも達成感があり、良い経験なのですが、その先、それらがどうなっていくのか。その企業が本当は見たい風景はなんなのか。本当はそこに並走して、一緒に同じ風景と喜びを味わいたい。そう思ってきたことが、10年以上の積み上げを経て、やっと実現できそうなところまできた気がしています。

この契約が継続されるか、力の見せ所ではありますが、出来ることなら動き足したこの列車に一緒に乗って喜びを分かち合いたい。そう思えるパートナーたちと仕事できる時間は、とても幸せなんじゃないかと確信しています。

私一人が関われるパートナーは限られています。
しかし、アシスタントが増えたり、同じ志の仲間が増えた時には、一緒に悩み議論し、思いつき、喜び、反省しあえるパートナーを増やしていきたい。その会社のクリエイティブ部のような社員の一人として、先の未来を見ていきたい。あと忘年会とか参加したい。

本当、たった一人の会社が何を変えれるかと思われるかもしれない。
それでも良いアイデア、良い変化を生む、正しい関係性があると確信しているので、そんな自分を信じてパートナーと突き進みます。

今まで一緒に作るクリエイターたちに「仲間」を作ってきましたが、お客さんも一緒なんだと。同じテーブルを囲んで仲間同士で最高の未来をスケッチしていきたい。

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Subaru Matsukura
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