デザインされた「道具」が引き起こす「現象」

須永スタジオの備忘録(2016.06.03)

Tomoki Hirano(Design)
On the Design: Dialogue
4 min readJun 3, 2016

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  • 目的とは可能性や価値のこと(抽象的事象)。目標は到達点(具体的事象)である。
  • デザイナーが語る目的には「現象」と「道具」の2項目を語らなければならない。
  • 最終的なゴールは「現象」だが、「現象」のみだとデザイナーの語りが理想論となり、デザインすべき対象が曖昧となる。しかし、人は「現象」のほうに耳をかたむける。
  • その目的における、制御変数と非制御変数が何かを把握する必要がある。つまり、デザイナーがデザインできることは何か、デザインできないことは何かを明確に把握する必要がある。
  • デザイナーは「道具」をデザインの対象(制御変数)として扱わなければならない。この「道具」がデザインの対象として制御できるのである。現象そのものはデザインできない。現象のためのデザインしかできないのである。
  • 例えば、道具を説明する時に「LEXUS」という名称だけでは、何を伝えたいのか分からない。しかし、「LEXUS」は広告によってその内容が伝わっていく。広告が使えない時は、名称ではなく具体的にその「道具」を語らなければならない。
  • 現象に対する結果(現象界)について、その現象が起きた道具の工夫点(デザインされている箇所)をつなげて語ることで、はじめて意味をもつ。現象と道具を2つを分けて話すことが大切なのだ。
  • 現象の射程も具体的に定めなければならない。例えば、
    「世界平和 > 生活を豊かにする > 日常の中に「協働」する機会を増やす」
    とブレイクダウンさせていくことで、射程領域が狭まり、現実的な実施策に落とし込める。射程領域広すぎると課題にならない。

『From User-Centered to Participatory Design Approaches』の中で「体験そのもの」はデザインできないとリズ・サンダースは語る

But we can never really “design experience.” Experiencing is a constructive activity. That is, a user’s experience (with communication, for example) is constructed of two equal parts: what the communicator provides, and what the communicatee brings to the interaction. Where the two parts overlap is where the actual communication occurs. Knowing about users’ experiences, then, becomes vital to the process of designing the communication. If we have access to both what is being communicated and what experiences are influencing the receipt of communication, then we can design for experiencing.

(Liz Sanders, 2002)

意訳

しかし、実のところ、私たちは決して体験そのものをデザインすることはできないのです。体験とは構成的な活動なのです。例えば、コミュニケーションでのユーザーの体験というのは「伝える側が提供するもの」と「受け取る側がインタラクションするもの」という2つのパーツで構成されます。その2つのパーツが重なっているところが、実際にコミュニケーションが起きる箇所です。ユーザーの体験について知ることで、コミュニケーションをデザインするプロセスが活発になっていくのです。もし、私たちが「コミュニケーションされているそのもの」と「そのコミュニケーションの受け取りに影響をあたえらている体験そのもの」の両方を利用可能にした場合、私たちは「体験のためのデザイン」ができるのです

本日のおすすめ図書

動的平衡』著 福岡 伸一

世界は分けてもわからない』著 福岡 伸一

生物と無生物のあいだ』著 福岡 伸一

2016年6月3日14:30〜18:30@藝大
須永、安村、瀧、鈴木、高橋、王、平野

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Tomoki Hirano(Design)
On the Design: Dialogue

DSCL Inc. Designer( http://dscl.jp/ ) & Tokyo Art University graduate student majoring in design.