始まりましたよ〜。

謙です。銭湯に連れて行っても喜ばない孫。しかし帰り道に思わぬ発見が……。

内緒の銭湯行き

「またどうぞ」という番頭の声を、辰雄は肩を落としながら聞いた。

孫の良和を喜ばそうと、銭湯へ連れてきたのだが、サッサとあがってしまい、脱衣所でゲームに熱中していたのだ。

湯上がりの牛乳を買ってやろうとしても、「いらないや」と素っ気ない。

しょんぼりと日暮れ道を歩いていると、良和が「あ!」と声をあげた。

「欲しいのか?」
「ここ……」と口ごもる。
「お母さんに内緒で買ってやってもいいぞ」
「いつもお婆ちゃんが連れてきてくれたんだ」
「千鶴が、か?」

千鶴は息子夫婦の意見を尊重し、孫に菓子を買うことはなかった。去年、千鶴が死んだとき「1度くらい、孫に菓子を買わせてやりたかった」と悔やんだほどだった。

「お買い物に行くと、いつもひとつだけ買ってくれたの。内緒だよって。ぼく、お婆ちゃんが好きだったんだ」

ジッと駄菓子屋の入り口を見つめる良和に百円玉をひとつ持たせて、買いに行かせた。

「50年も連れ添って、まだ俺の知らん顔があったのか……」

店から出てきた良和の目は赤かった。

「お母さんにお菓子のことは言うなよ」
「うん。 — — ねェ」
「なんだ」
「また銭湯に連れてきてくれる?」

うんうん、と辰雄は何度も頷いた。上を向いたまま頷いた。

あとがき

お待たせしました。

響由布子さんとのコラボ企画第1弾です。

1発目のお題は『風呂』でした。わたしは『風呂』からこんな話を書きましたが、官能小説家の響さんはどんな作品を書くのでしょうか? それは明日のお楽しみ。


毎日この「原稿用紙1枚の物語」を書いてきました。それなりに苦労する日もありましたが、それでも比較的ポンポンと書いてきたつもりです。

ところが今回、響さんも同じお題で書いてくるのだと思った瞬間、思考停止の大苦戦。

あれこれ考えては「いや、響さんはもっとおもしろいものを書いてくるはず」と、思考がピタッと止まってしまう。すべてのアイディアがダメに思えてしまう。

メンタル弱いなぁ、と不思議な発見した次第です。

さて、明日の響さんの作品はどんなものでしょうか? わたしもまだ読んでいないので、楽しみにしてます。

お願い!

このコラボ企画は4/26まで続きます。お見逃しのないよう、このPublicationのフォローをお願いします 《原稿用紙1枚で書く物語》

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