生原稿があるなら、生じゃない原稿もあるのだろうか? うん、あるな。

武重です。壊れたふで箱、あなたならどうしますか?


壊れたふで箱の代わり

会議の途中、ふで箱のファスナーが壊れた。

「椎名、聞いてるのか?」
「はい」
「来週は頼むからちゃんと売ってこいよ」
「はい」
「ったく、最悪、代わりはいるんだからな」

上司が言うことは100%正しかった。他のみんなはちゃんと売っていて、僕は売れてない。何かが足りてないんだろう……。

「外回りに行ってきます」

もう夕方だったが誰も止めなかった。僕に興味なんてないようだ。実際、こんな時間に訪問すべき客なんていない。自然と駅前のビルにある文具店へと向かっていた。

ふで箱の売り場にはきれいなふで箱がたくさん売られていた。いろんな素材、いろんな大きさ、いろんな色のふで箱があった。

— — 代わりはいる、か……。

随分長いこことふで箱売り場に立っていた。それを不審に思ってか、店員が寄ってきた。

「何かお探しですか?」
「いえ」

逃げるようにその場を去って、生まれて初めて裁縫店というものに行くことにした。こいつを直すことから始めてみよう。そう思った。

あとがき

なんだか暖かくなったと思ったら、急に寒くなったりして、体温調整がうまくいかないですね。

「今年はもう、暖炉の季節は終わったかな」

と、思っていたのですが、寒くてつけちゃいました。暖炉の火は暖まるまでに時間がかかるのですが、「遊び的な感覚」があるので、まったく苦痛ではありません。作業だと思うと辛いかも。

忘れた頃に “カタン” なんて木が崩れる音がして、「ああ、新しい木をくべないと」と暖炉の元に寄っていくのが、ぼくのいい気分転換になっているようです。

そうでもしないと、いつまでも座りっぱなしで作業を続けるので、体に悪いんですよね。

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