Ken Takeshige
原稿用紙1枚の物語
3 min readApr 21, 2016

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謙です。女性を口説くのに高価なバッグや洒落たバーが必要だと思っていますか? 本当に必要なものをお教えしましょう。

女性を口説くのに必要なもの

早々と結婚してしまった私は、高価なプレゼントや気取った言葉で口説かれたことがない。だからそういう「口説かれ話」が始まると、つい黙ってしまう。

小学3年生のときだ。

公園で遊んでいると、目をキラキラさせたサトシくんがやってきた。

「この釘で砂鉄が取れるんだ!」

磁石で砂鉄をとる遊びは流行っていたが、釘で取れるというところにみんな惹かれた。

「ウソだ!」
「ほんとだよ」

というやりとりの末、試してみたがうまくいかない。

「嘘つき!」とみんなに言われ、サトシくんは落ち込んで帰っていった。真新しい靴を履いていたのを覚えている。

次の日、サトシくんは私だけに声をかけた。

「今度は本当にできるんだ! お願い、うちに来てよ。見せてあげる!」

なんだか気になって、放課後、遊びに行った。

サトシくんは釘を磁石にこすりつけて、ソッと離し、砂鉄に近づける。たしかについた。

「磁石から離して時間がたつとうまくいかないんだって。シンデレラみたいだね」

サトシくんはそんなことを言って笑った。わたしもつられて笑った。

いまでも釘を見ると、この日のことを思い出す。

— — 言えないよなぁ、釘で口説かれた、なんて……。

あとがき

「響由布子・武重謙 コラボ企画 第5弾」です。

お題は『釘』でした。いかがでしたでしょうか? 明日はゲストの響由布子さんが同じお題で、小説を書いてくれますので、そちらもお見逃しなく。

《コラボ企画の詳細はこちらをご覧ください》

最近、ベース(楽器)にハマっているんですが、学生時代はあんまりやる気が出なかった音楽理論というやつが、この年になって、本当におもしろいものだと気付かされました。

あの頃は毎日何時間も楽器を弾いていたので、理論がなくても「なんとなく」弾けたんです。上手かどうかは抜きにしても、自分としては楽しんで弾けてたわけ。

いまはそんなに練習ばっかりもしていられない。そうすると、ちょっとアドリブで弾いたり、フレーズを作ろうと思っても、アイディアが出てこないんですよ。

いわゆる “引き出しが少ない状態” なんですね。何度弾いても、同じようなもんしか弾けない。

そこで理論です。

ちょっとスケールやコードを知っていると、それだけで一気に引き出しが増える。

少なくとも無難なフレーズはいくらでも作れるようになる。

学生時代、こういう理論「も」知っていれば、きっともっと音楽が楽しかったんだろうナァ。

さて、明日は響由布子さんの番です。彼女流の「釘」を楽しみにしましょう。

お願い!

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Ken Takeshige
原稿用紙1枚の物語

小説書いてます。『池内祥三文学奨励賞』受賞。世界旅を終え、作家活動中。 noteやMediumで小説を連載。ブログ『日刊ケネミック』→ http://kenemic.com | Amazon著者ページ→ http://amzn.to/1sh7d1f