東北の雪深い村で起こる大きな事件。

『雪深い村の、夕方の一景』

東北の雪深い静かな村に、東京から1組の夫婦が流れてきた。言葉少なで、品行方正。村の老人が営んでいた小さな飲み屋で雇われ、もう10年になる。

夫婦はいつも朝から晩まで働き、肩の力を抜くことがない。ずるもせず、酒を飲み過ぎることもなく、誰かの陰口を言うこともない。真面目一筋の夫婦だった。

「子どもはないんかい?」

村の老人が訊ねたことがある。夫は妻の顔を見、妻は「ええ……」とニッコリ笑った。夫婦はもう40歳半ば。老人は「そうかい」と頷いた。

これだけ真面目で、影のない夫婦のことを村の人たちは好きになって、飲み屋も繁盛した。夫婦は客ごとの味の好みを覚え、客の健康にさえ気を配った。

向こうの山の稜線に夕陽が引っかかっている。仕込みの時間だ。

サイレンの音が村に響いた。村人らはサイレンの行方を追う。数台のパトカーが1本道を走っていく。

普段見ない光景に、村人は浮き足立つ。ざわつき、そわそわしている。そんな中でたったふたり落ち着いた人がいた。東京から来た夫婦だ。

パトカーが飲み屋の前に停まり、少しすると夫婦が出てきた。ふたりとも手首にスカーフをかけている。集まった村人に、夫婦は頭を下げてから、パトカーに乗せられた。

「あんないい人たちが――」

最近明るくなっていた村の雰囲気が10年前に戻った。

《No.134 お題:ふたり》

あとがき――今日のような作品

あとがきで自分の書いた作品に触れることはあまりしないのですが、ちょっと今日は触れたくなっちゃいました。

今日のような作品っていかがでしょうか? オチもなく、大きな展開もなく(あると言えばあるけど)、何も明かされない。

一種のスケッチだと思っています。絵描きが好きな風景をササッと絵にするように、物書きが、印象的だと思った場面をササッとカタチにする。そういうスタイルがあってもいいのではないか、と思ったのです。

書き手としては、好きなのですが、読み手としてはどうだろうか? と考えると少し自信がなくて、「やっぱり物足りないんじゃなかろうか?」「だからなに? って思うんじゃなかろうか?」と不安が頭をよぎります。

よろしければ感想のひとつふたつを残して頂けると今後の参考になります。