#004 フラミンゴスツール

shun ogino
one of my favs.
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3 min readNov 6, 2017

3年前、僕はひょんなことから鹿児島に引っ越した。

なんとなく、鹿児島で生活するには車が必要な気がしていたし、引越業者に頼むほど、僕一人が生活する荷物は多くなかったこともあって、車に荷物を積めるだけ積んで引っ越すことにした。

鹿児島で駐車場を借りる手筈も済んでいなかったし、むしろ家も決めずに引っ越したので、今思えば無謀としか言いようが無い。引っ越してしばらくは、古い平屋に住む友人の家に居候することになるのだけど、それはまた別のお話。

東京から鹿児島まで、陸路で約1500km。友達やお世話になった人がいる土地を巡る、3週間の長旅だった。神戸は、その間に立ち寄った土地の1つ。そこで暮らす友人の一人が 、家具職人の小寺くんだった。彼と出会ったのは2012年の夏の上田市、そのときはお互いにまだ会社員で、その1年後、偶然にも勤めていた会社をお互いに辞めた。小寺くんは自身のブランド「magical furniture」として、僕もフリーランスのデザイナーとして活動し始めた。彼に会ったのはそのときだけなのだけど、同い年だったことや、会社を辞めた時期なども重なり、勝手に親近感を感じていた。

彼の店「magical furniture」があるのは、阪急神戸線の高架下の再開発が進むエリアで、面白いお店が高架下にどんどんとオープンしているようだった。一階が工場で二階がショールームのような使い方で、そもそも高架下というところが男心をくすぐるし、上を電車が通っているなんてテンションが上がる。

正直に言うと、会うのが2回目だったこともあって緊張していたし、何を話していいかも分からないままの再会だった。きっと彼もそうだったと思うし、そのときに何を話したかあまり覚えていない。でも、それまで見た事のなかった、家具作りに使う道具や機械を見て、色んな質問をしたのだけは覚えている。

今でも彼の SNSにアップされる「カラピンチャ」という近所の美味しいスリランカカレーのお店に連れて行ってくれたり、その晩もどこかのお店でお酒を飲んだ。人見知りの二人がお酒の勢いを借りながら、顔を赤くして結構な量を飲んだと思う。

そんな彼が、別れ際に僕にくれたのが、この「フラミンゴスツール」だった。製材されていない材木に細い四本の足が付いている様がフラミンゴのような出で立ちで、材木の端を使っているので端部がピンク色に塗られているのも名前の由来だとか。

鹿児島の家は畳だから、このスツールに座ることはほぼ無いのだけど、花瓶を置いてみたり、民藝品などの作品を置いてみたりと、何かを飾るときに使う事が多い。線が細く可愛らしいフォルムは、何を置いても様になる。

鹿児島の家で、いつも僕を応援してくれているような、そんな気がするものの1つだ。

magical furniture : https://magical-f.jp/

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shun ogino
one of my favs.

日本全国をあちこち行き来してるデザイナーが普段思ってること。