#006 ニューヨークで買ってきたキャンドル

shun ogino
one of my favs.
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4 min readNov 26, 2017

キャンドルを使うタイミングというのは、なかなか難しいし小恥ずかしいものだ。

女の子を部屋に呼んで、「これ、ニューヨークで買ってきたんだけど、良い香りなんだよね」とでも言いながら火を点けるなんてことは、僕には到底無理な話で、そんな台詞を口にしている側から寒気がしそうだ。

とはいえ、キャンドルというものは中々魅力的なプロダクトで、必要ではないけれど何かのタイミングで欲しくなるときがある。タイミングというか、「ついで」という方が正しいかもしれない。このAPOLISのキャンドルを買ったのも、「ついで」とか「記念に」という言い方が相応しい。まぁ、それが結果的に正解だった良い例ではあるが。

まだサラリーマンだった2012年の年末、会社の冬休みを目一杯使ってニューヨークに住む友人夫婦の家に遊びに行った。最終出社日の翌朝の飛行機で飛び、仕事始めの前日に成田経由で日本に戻ってくる、という強行スケジュールだった。半年前の6月にはチケットを取ったのだけど、年末年始のハイシーズンで往復20万くらいかかったと思う。会社員だった当時の僕に怖いものはなく、それだけ払ってでも年末のニューヨークは変え難いものだった。あぁ、固定収入とボーナスがあった頃が恋しい。

僕の旅は基本、「誰かに会いたいから」「このお店に行きたいから」「これを食べたいから」という理由がほとんどなので、現地で何もせずにのんびり、なんてことはほとんどない。それこそ、「のんびりしたいから」という理由で旅に出ない限り。

学生以来4年ぶりの海外だったこともあり、行きたいお店をこれでもかというほどグーグルマップに保存して、とにかく、とにかくニューヨークの街を歩き回った。確か、ブルックリンが注目され始めた頃で、少しずつ情報も日本に入ってきていた。「BLUE BOTTLE COFFE」や「MAST BROTHERS CHOCOLATE」を訪れたのもこのとき。APOLISの商品を扱っていたお店「HICKOREE’S FLOOR 2」もそんなお店の1つだった。

純粋に、ニューヨーカーが好みや流行が何なのか興味があって、買いもしないのに、お店に並べられた商品を物色していた。値段的にも買えるはずもなく、値札を確認しては溜め息をつき、の繰り返しだったのを覚えている。そんななか、折角だから何か買って帰りたいなと探していたところに見つけたのが、このAPOLISのキャンドルだった。まさに「記念」といったところである。

これまでいくつかのキャンドルを購入したこともあるが、使い始めてから「やっぱり違うな」と思って、部屋の隅に追いやられることがほとんだだった。しかし、APOLISのものだけはそういったこともなく、5年経った今でも、部屋の空気が悪いときや気分を変えたいときにだけ火を点けている。ヒノキの香りをベースにいちじくの柔らかな甘みが加えられた、落ち着く香り。そういえば、前に紹介したAesopのハンドバームの香りもヒノキだった。(ちなみに、Aesopのヒノキの香りのハンドバームは廃盤になった模様)

とはいえ、他のキャンドルをろくに試してもいないのに「これが素晴らしい!」と断言するのは良くないのかもしれない。だた、思い出や記憶だったり、その当時の自分にとってそれが最適だと思えただけであって、他のものが良くないという訳ではない。良いと思えるもの、気に入ったもの、愛着のあるものというのは、それが良いものであることは勿論だけれど、それを買うまでに至った背景など、その当時の記憶によって生まれるものなのではないだろうか。

さすがにもう使い切りそうなので、購入するという口実で、来年あたりまたニューヨークに遊びに行きたい。

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shun ogino
one of my favs.

日本全国をあちこち行き来してるデザイナーが普段思ってること。