#008 Localsのビーチサンダル

shun ogino
one of my favs.
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5 min readDec 22, 2017

ホノルルマラソンが終わると、街はさながらウォーキングデッドの世界のよう。無理をして走ったことがたたり、足を引き摺りながらゾンビのように歩くランナーがたくさんいるからだ。

父がホノルルマラソンを走り始めて、もう9年目になる。初めて父が走ったのが、僕が大学院生だった頃かと思うと、もう随分と昔のことのように思う。53歳で初めてフルマラソンを走ろうと決意した父は、当時何を思ったのだろうか。

母と姉は、応援とサポートという形で最初から同行していたのだけど、12月の忙しい時期に1週間の休みを取るなんてことは、日本の会社において出来る訳も無く、僕は指を咥えて待つという生活が5年程続いた。フリーで仕事を始めて休みが確保できるようになると僕も一緒に行くようになり、ホノルルマラソンの応援という形とはいえ、こういう機会が無いと家族水入らずで旅行なんてないので、これはこれで良いなと思う。

最近では、ホノルルマラソンだけでなく、日本でも札幌や長野、黒部などの大会も出ているようで、サブ3.5(マラソンのタイムが3時間30分を切ること)を目指している父。調子の良いときは3時間40分程度で42.195kmを走りきるというから、ストイックすぎて別次元の世界だ。それはもう、この血を本当に僕が受け継いでいるのかと疑う程。とはいえ、少なからずそんな父に触発されたのか、僕もホノルルマラソンを走ってみることにした。ある程度練習をしてからと思っていたけど、夏から数えても走ったのは3回、距離にしても20kmといったところだった。山手線一周が34.5km程度というくらいだから、無謀としか言いようがない。

自慢できることではないけれど、もはや42.195kmを走りきることはあきらめていた。初めてのホノルルマラソンだが、それ以前にフルマラソン自体が初めて、無理をせずに楽しむことにした。できるだけ、周りを見ながら、空の色や木々の色、空気の香りなど、日本では感じられないものをたくさん感じられるように。42.195kmを自分の足で移動するだけで、世界の見え方は違う、なんというかドラマチックに見えた。夜明け前にスタートして、ダイヤモンドヘッドの向こう側から太陽が昇るのを見て、ここぞとばかりに自分達が楽しみながらに応援する人が沿道にいて、雨が降って、止んで、虹が出て、途中でストレッチをする視線の先にはサーフィンをする人がいたり。

きっとハワイという場所もあると思うし、ランニングハイだったのは間違いない。でもなんだか、こうやって無理矢理というか半ば強制的に、いつもとは違う立ち位置で物を見る感覚は面白かった。普段なら気付かないことや、見逃してしまうことに敏感になるというか、言ってしまえば「ただのなんてことない道」を42.195km走る中で、何に気付くのか、何を面白いと思うのか、何を見て立ち止まりたくなるのか、普段自分を取り巻く色々を取っ払って周りを見れた気がした。

そして、普段ほとんど運動をしない僕にとって、身体の仕組みというか、身体への負荷のかかり方、みたいなことが面白かった。この走り方だと膝が痛いな足の裏が痛いな、途中止まってストレッチをすると逆に足を動かすのが辛くなるな、痛みをかばいながら走ると他の部分に負担が出てよくないな、痛くても同じペースできちんと足を動かした方が逆に疲れにくいなとか、走るだけでも気付くことはたくさんあったような気がする。

結局、目標の6時間半は大幅にオーバーして、7時間25分でゴール。タイムよりも身体のことをまず第一に考えて(以前ハーフマラソンを無理して走ったことで、その後一週間は歩くのさえままならないことを経験していたこともあって)、できるだけ負荷をかけずに無理をしないよう心がけた。おかげで、ゾンビにはならずに済んだし、筋肉痛も思ったよりもすぐにおさまった。

宿泊していたホテルのスタッフに、来年また走るかと聞かれて「maybe.」と答えた。もし走ることができるなら、次こそは全て走りきりたいとは思うし、5時間くらいでゴールしたいなとも思う。それよりも、来年は来年で42.195kmの見え方が今年とはきっと違うだろうし、それを自分がどう感じるかが一番気になる部分ではある。

今回4時間半で走った浅田真央ちゃんの言葉を借りるなら「ハーフハーフ」といったところか。

さて、タイトルのビーチサンダルはというと、2013年に初めてハワイを訪れたときにウォルマートで購入した。それから、ハワイに行く度に新しいものを購入して一年を過ごし、また次に訪れたときに新しいものに買い替えて次の一年を過ごしている。
特に高価な訳でもなくて、スーパーで6$くらいで売っているような何の変哲もないサンダル(安い中でもグレードがって、僕が履いてるのはソールがちょっと良いやつ)なのだけど、ハワイ滞在中は必ず履いている。ソールも全然へたらず歩きやすいので、ここ5年くらいはずっとこれと決めている。

観光客でlocalsのサンダルを履いてる人はあまり見かけないが、ハワイに住む人々にとっては昔から馴染みがあるもののようで、これを履いて歩いていると滞在中に一回は「良いサンダルだね!」と声をかけられてロコと話すきっかけになるのでオススメだ。

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shun ogino
one of my favs.

日本全国をあちこち行き来してるデザイナーが普段思ってること。