Eriko Amano
Open Access Books JP
4 min readDec 27, 2018

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いくら出せば学術書をオープンアクセスにできるのか

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すでに出版した著書があったとします。その上で、著者が出版社に対していくらかの費用を支払うと、著書をオープンアクセスにできる場合があります。そこで、だいたいいくら出せばオープンアクセスになるのかを調べてみました。

まず海外の出版社。多くの著名な学術出版社がそういった著者出資によるオープンアクセスのプログラムを提供しています。各出版社ごとに、オープンアクセスにかかる一般的な費用、ライセンス、現在オープンアクセスになっている出版点数(DOAB への収録点数)を調べてみました。

各社さまざまな料金設定をしているので簡単に比較ができません。また、上記はあくまで一般的な料金設定ですので、「要相談」ということの中には、すでに出版後年数がたったので低めにしよう、これは売れそうだから高めにしようといった出版社の判断や、交渉の余地がありそうです。

それにしても、「けっこう高い」と思われた方が多いのではないでしょうか?

次に、日本の出版社ではいくら出せばオープンアクセスにできるのでしょうか?といきたいところですが、日本の出版社で同様の著者出資によるオープンアクセスのプログラムを設けているところはありません。私が知らないだけかもしれないので、ご存知の方は教えていただければうれしいです。

ところで日本の学術書の場合は、著者が出版の初期費用を支払ってやっと出版が可能となる場合が多いです。その出版の初期費用がどれくらいかわかるのが、日本学術振興会の科学研究費助成事業、いわゆる科研費による出版への支援額です。科研費の一種「研究成果公開促進費」は研究者に対し、学術図書の出版を支援しますが、たとえば平成23年度の採択一覧を見ると、だいたい80万円から150万円が相場といったところでしょうか。

上記のような海外の出版社の場合、一般に、オープンアクセスにしないのであれば、出版する際の著者の初期費用負担はないと聞きます。もちろん、日本人の研究者が英語で出版する際には、英文校閲や翻訳等の費用が別途必要になってくることが多いですが。

日本では学術書を紙で出版するためだけにこれだけ著者が支払っているのに、オープンアクセスになっていないのはもったいないという声が聞こえてきそうです。しかしながら、日本の出版社と海外の出版社のビジネスもまた簡単に比較できないので、そう言ってしまうのは難しいところです。

ちなみに、論文の場合。論文をオープンアクセスにする方法はいろいろありますが、たとえば雑誌全体がオープンアクセスで出版されているのであれば、著者がAPC (Article Processing Charge)を支払います。たとえばNature Communicationsであれば 5,200ドル(約60万円)かかります。これはかなり高い方ですが、こちらで他の主要な出版社のAPCを眺めてみてどうでしょうか。雑誌論文と図書の比較もまた簡単にはできないわけですが、上記に挙げた学術書のオープンアクセス費用が法外に高いというわけではない気がします。

さまざまな問題はあるにせよ、著者が雑誌論文のAPCを支払って研究成果をオープンアクセスで世に出すことはめずらしくなくなりつつあります。学術書のオープンアクセスもまた(日本の場合はそもそも電子出版やオープンアクセスのインフラづくりからではありますが)、費用負担の課題が解決されていけば進むのかもしれません。

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Eriko Amano
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Research administrator. Supporter of Open Access. Ex-librarian.