学術書のオープンアクセスを考える
今週はオープンアクセスウィークでした。
オープンアクセスについて何かをやってみる1週間。私たちは「学術書のオープンアクセス」について考え、発信する場をここに作ってみることにしました。
大学で研究支援の仕事をする中で、長年の研究成果をまとめ、本として出版したいという研究者の声をよく聞きます。そして、実際に出版される「学術書」は多い。さて読者はどれくらいいるのでしょうか。昔より増えているのでしょうか、減っているのでしょうか。読者はどんな人たちなのでしょうか。仲間内の研究者だけではないはずです。そして読者は本をどのように手に入れているのでしょうか。図書館で借りているのか、書店で買っているのか。出版不況、書店の減少によって、その読まれ方にも変化が起こっているのではないでしょうか。
いま学術書は、読まれるべき人に届いているのでしょうか。
研究成果の出版を通じて著者と読者との新しい関係を築く可能性を持っているのが、「オープンアクセス」による出版です。オープンアクセスとは、学術情報をインターネットを通じて誰もが無料で閲覧可能な状態にすることです。学術雑誌の論文はほとんどが電子ジャーナルとしてインターネットで読めるようになってきましたが、有料の場合は個人で支払うにしても研究機関が支払うにしても高すぎるというのがここ20年ほどの大きな問題でした。その一つの解決策としてオープンアクセスによる出版が進められたことで、より多くの人が学術的な成果に無料で触れることができ、利用できるようになってきました。
オープンアクセスの学術書も増えてきました。オープンアクセスの学術書の検索サイトDirectory of Open Access Books (DOAB)には、今日時点で282の出版社の13,030冊が収録されています。オープンアクセスの書籍のみを専門に出版する出版社、大学出版局も増えてきています。オープンアクセスなので、世界中の読者がPDFで本文をダウンロードし、読むことができます。紙の本が欲しければ、オンデマンドで買うこともできます。いままで物流や価格がネックとなって読むことができなかった国の読者にも届いているのです。
ところが、日本ではこの学術書のオープンアクセス、まったくといっていいほど進んでいませんし、議論もされていないというのが現状です。著者=研究者と読者の新しい関係をつくる可能性を秘めたオープンアクセス。日本で学術書のオープンアクセス出版はどのように実現できるのか。それを探るのがこの「Open Access Books JP」の目的です。
「Open Access Books JP」は、書籍の(特に学術書の)オープンアクセスについて、国内外の情報や書き手自身のアイデアを発信していきます。書き手には、オープンアクセスや学術情報に見識のある人、あるいは研究者、出版社の方にも参加をお願いしていきます。少しずつ、私たちのアイデアが広まれば幸いです。