なぜ抗うつ薬による自殺が多いのか

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先月(2016年3月)、キース・エマーソン氏がなくなりました。
彼は、独創的なロック・グループ「エマーソン、レイク&パーマー」のリーダーで、キーボード奏者でした。

私が高校生の時に夢中になっていたバンドです。

死因は自殺だとのことで、大変ショックです。
心からお悔やみを申し上げたいと思います。

今回は、芸術的なセンスを持つ人に自殺が多い理由についての話です。

(写真はfuse.tvより)

神経伝達物質とモノアミン仮説

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脳は非常に複雑な構造をしている臓器です。

ヒトはおよそ1000億個の脳細胞を持ち、それぞれ他の脳細胞と1000箇所ものシナプス構造でつながっています。

考えや行動、感情の動きなどの全ては神経伝達物質が引き起こす脳細胞間のコミュニケーションによるものです。

現在、ほとんどの精神疾患はこれらの脳内化学物質のアンバランスや機能低下によるという考えが受け入れられています。

例えば、セロトニン活性の低下がうつ、ノルエピネフリンの上昇が不安、ドーパミンの上昇が統合失調症といった具合です。

これら神経伝達物質は生化学的にはモノアミン類と呼ばれており、このような考え方をモノアミン仮説といいます。

これらの神経伝達物質は、生まれた時から脳に存在するわけではありません。

脳は一生にわたってこれらの神経伝達物質を作る工場なのです。

現在、多くの研究から、脳のどの場所でどの神経伝達物質が作られ、どのように利用されるか明らかになってきています。

モノアミン仮説を検証しない現在の治療

現代のうつ病治療では、セロトニン活性が低下しているという仮説のもとに、セロトニンを増やす薬が使用されます。

例えば、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、シナプスでのセロトニンの再吸収を阻害するしくみです。

これは作用が比較的マイルドで、第一選択で使用されることが多い薬剤ですが、その一方で副作用に自殺念慮があることが知られています。

なぜ、そのようなことが起きるのでしょうか?

セロトニンレベルが高いうつ病患者もいる

20年にわたり2800人のうつ病患者の脳の生化学検査を行ってきたウイリアム・ウォルシュ博士によれば、
「投与前に脳内セロトニンレベルを評価していないこと」が原因です。

うつ病患者の全てがセロトニンレベルの低下を起こしているのではないのです。

セロトニンレベルが高い患者さんもいて、薬剤でさらにそれを増やすと自殺念慮が出ます。

高血圧の患者さんは、血圧を実際に測定し、確認がされてから降圧剤が出されます。
糖尿病の患者さんには、血糖値を測定してから、血糖降下剤を処方されます。

しかし、モノアミン仮説がこれだけ支持されているのに、うつ病患者さんに対して脳内セロトニンの測定は行われていません。

その理由の一つは基準値の設定が難しいからだと思われます。
セロトニン濃度は様々な状況において自在に変化することが予想されます。

例えば、トリプトファンをとれば、体内で5HTPを経由してセロトニン産生が上がりますし、太陽光を浴びたり、リズミカルな運動をすることでもセロトニン代謝が上がることが確認されています。

実は、私も患者さんに対して血中セロトニンレベルを測定したことがあります。
2005年にマイケル・レッサー博士の講演を聞いた際に、セロトニンレベルの測定を勧められたからです。

しかし、当時はうつ病の臨床度とセロトニンレベルの値に相関を見出すことはできませんでした。

体内のセロトニンの90%は実は腸で作られており、血中のセロトニン脳血液関門で脳内セロトニンとは区別されているため、血中のセロトニンを測定しても意味がないという説と、血中と脳中セロトニンは比例するという説の両方があるようです。

脳内セロトニンレベルを決定する体質

そう考えると、瞬間的なセロトニンレベルを測定するよりも、むしろ、脳内セロトニンレベルが高くなりやすい体質かどうかを調べる方が実際的ではないでしょうか。

そんな、脳内セロトニン濃度を決定する重大因子の一つがメチレーションの状態です。

先ほど出てきたSSRIはセロトニンの再取り込み輸送タンパク質を邪魔する薬ですが、その輸送タンパク質がどれだけ作られるかは、メチレーション状態で決まります。

低メチレーション状態だと、そのタンパク質が多く作られるため、脳セロトニンは減少します。

人は生まれながらに両親から引き継ぐ遺伝子によって、ある程度メチレーション状態が決まっています。

前出のウイリアム・ウォルシュ博士は、うつ病患者に、30万回のメチレーション状態の検査を行ってきました。

その結果、うつ病患者全員のうち38%が低メチレーション、20%が高メチレーション状態でした。

彼は言います。

「数千人もの患者との経験から精神疾患におけるメチレーションの重要な点がわかってきた。

低メチレーションのうつ患者は、SSRIに加え、メチオニンやSAMeでよくなるが、葉酸で悪化する。

それに比べて高メチレーションのうつ患者は、不安、パニック傾向が強く、SSRIで悪化する。

つまり、SSRIは低メチルやピロール異常の人にはメリットがあるが、葉酸欠乏タイプには害があり、ほかのタイプには効果がない

医者が患者に対してSSRIのよい適応かどうかを鑑別するための安価な検査をするかどうかで治療効果はだいぶ変わる.

うつの異なる生化学タイプが診断され適切な栄養素が使用されれば、さらなるベネフィットが得られるだろう。」

メチレーション状態の診断方法

では、どのようにしてメチレーション状態を診断するのでしょうか。

ウォルシュ博士は、SAMe/SAH比率と血中ヒスタミン濃度を参考にしているそうです。

低メチル化状態の場合、SAMe/SAH比率が低く、ヒスタミン濃度は上昇します。
高メチル化状態の場合は、反対になります。

ただ、これらの測定は日本ではなかなか難しいのも事実です。

そこで、ウォルシュ博士がもう一つの指標としている、症状や特徴をご紹介します。
ウォルシュ博士は、これらの特徴と生化学検査を組み合わせてメチル化状態を判断しているのです。
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例えば、メチレーション低下の人は大抵、生まれた時から非常に意志が強く、3~4歳になるまでには母親もすぐそれに気がつきます。
妄想的/強迫的な傾向は、やはりメチレーション低下の人に多いのです。

反対に、メチレーション過多のほとんどの人が高度な不安を抱え、睡眠障害を持っています。

活発で体をよく動かし、おしゃべりな傾向にあります。
驚くべき芸術・音楽的能力を示します。

ウォルシュ博士は、何百人ものプロのアーティストの多くはメチレーション過多だと報告しています。

俳優ロビン・ウィリアムス氏の自殺についても
「活発でおしゃべりで、俳優としての芸術性、他人への共感、競争心の低さから、メチレーション過多だと考えられ、もしかすると彼は不幸なことに、新しい抗うつ剤、SSRIを投与され、この副作用が生じたのではと思った」
と話しています。

最初にお話ししたキース・エマーソン氏も長年のうつで苦しまれていたことを、バンド・メイトのグレッグ・レイク氏が告白しています。

彼が抗うつ薬を服用していたかどうかは定かではありません。

しかし、芸術家に精神疾患の罹患率、自殺率が高いのは統計的に証明されています。

まとめ

抗うつ薬を飲んで自殺念慮がでる理由は、その人のセロトニン活性が過剰な状態だからかもしれません。
元々セロトニン濃度が高い人は、抗うつ剤投与により状態が悪化する人なのです。
抗うつ剤服用後に殺人や自殺念慮を呈する可能性があります。

このように、メチレーション状態と症状や特徴は非常に関連性があります。

抗うつ薬を飲む前、処方する前に、是非メチレーション状態を評価してください。

キース・エマーソンの独創的な演奏はこちら

ウイリアム・ウォルシュ博士の日本公演はこちら

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