分子栄養学について

kenshi.miyazawa
分子栄養学実践講座
6 min readJun 28, 2016

分子栄養学(オーソモレキュラー療法)は、サプリメントなどの栄養素で医療効果を得るための方法論です。

今や、日本国内でもサプリメントを扱う医療機関は、個人クリニックを中心にして優に1000は超えており、多くの医師・歯科医師が分子栄養学の理論を取り入れたサプリメント処方を行っています。

「サプリメント」は、形状は「薬」に似ていますが中身は全く異なるものであり、うまく使うためにはコツがいります。
この講座では、そのコツを解説しています。

標準量と最適量 サプリメントは効率の道具

ビタミンやミネラル等の栄養素には、「標準摂取量」「最適量」(栄養学的使用量)があります。

「標準摂取量」は、国が定めた量で、栄養失調を防ぐ最低の量であり、それに対して「最適量」は、病気を治すための量です。

たとえば、ビタミンの「標準摂取量」は100㎎で、これによりビタミンC欠乏である「壊血病」を予防することができます。

その一方で、抗がん剤としてビタミンCを使う場合の必要量は100gであり、これががんに対するビタミンCの「最適量」となります。

この場合、「最適量」「標準摂取量」の1000倍となります。

同じように、脂肪酸の一種EPAを1日2000㎎とると6週から8週で血液が凝固しにくくなり、心筋梗塞の発症を予防します。

しかし、これを食べ物からとるためには大変な努力が必要です。

確かにさんま1匹には、EPAが900㎎含まれていますが、実際問題、毎日さんま2匹を2か月にわたって食べ続けることができるでしょうか。

同様に、ビタミンC100gはレモン5000個分にもなります。

これらの栄養素の量はサプリメントなしには達成できません。

つまりサプリメントは栄養を凝縮した「効率の道具」ということができます。
この栄養の効率化によって医学効果を発揮させるのが「分子栄養学」というわけです。

個体差を考える

タンパク質の働きにはいろいろありますが、一番重要なものは酵素としての働きです。
酵素は、体内で働く化学反応を調整(触媒作用といいます)しています。

人間は食べ物を体内で燃やしてエネルギーを作っています。
実際には体温は36.5度で、物が反応するには非常に低い温度です。

しかし、酵素の触媒作用によって、食物は、確実に血や肉になり、エネルギーになります。
だから、人は酵素が無ければ、生きられません。

個体差とは

酵素によって化学反応を触媒される物質を「基質」と言います。
体内の化学反応は「酵素」と「基質」が組み合わさって進んでいきます。
また、酵素の働きを助けるものを「補酵素」といいます。

アミラーゼ、リパーゼ、リゾチームなどは酵素だけの力で反応を触媒しますが、
酸化還元反応やアミノ基転移反応などは、補酵素の力を借りないと反応が進みません。

基質と酵素は鍵と鍵穴の関係に例えられます。
形がぴったり合わないと反応が進まないのですが、それを助けるのが補酵素の役目です。

分子栄養学の世界で出てくる「個体差」とは、酵素の設計図である遺伝子の「個体差」なのです。

DNA配列に微妙な違いがあるために、それを設計図として作られる酵素たん白質にも若干の形の違いが生まれます。

基質と酵素と補酵素は、鍵と鍵穴とグリース(潤滑剤)に例えられます。

カギが鍵穴に入りやすい人と入りにくい人がいるわけで、このような人は補酵素(グリース)を余計に使うことで、化学反応の扉を開けることができます。

この補酵素として使われるのがビタミンやミネラルなのです。

補酵素として使われるビタミンの量は時には標準摂取量の100倍に達することもあります。

以上の理由により、栄養素の最適量は人によって異なるため、必要なサプリメントの種類と量を決める際に、その人の酵素活性を血液検査で測定する事が有用なのです。

1950年代末、ライナス・ポーリングは、精神疾患の原因の一つに酵素の機能障害があるのではないかと疑い、脳機能における酵素の役割を研究しました。

彼が、ビタミンが欠乏症予防以外に重要な生化学的効果を持つ可能性に気が付いたのは、ポーリングが1965年にエーブラム・ホッファー著「精神医学におけるナイアシン療法」を読んだ時のことです。

これにヒントを得て、1968年、ポーリングはサイエンス誌に「分子整合精神医学」
(「Orthomolecular psychiatry」)と題した簡単な論文を書き、ビタミン大量療法運動の原理を発表しました。

http://profiles.nlm.nih.gov/ps/access/MMBBJQ.pdf

ビタミンには酵素を助ける補酵素としての働きがあります。
ポーリング博士は、そこで、酵素、補酵素の不足が病気を引き起こすので、それを充分量補充することで病態の改善が見込めるのではないかと提案したのです。

栄養素の局在

疾患に対してのサプリメントの選び方は、『栄養素の局在を考えること』 がポイントです。

「ある栄養素がある疾患に対して有効かどうかは、疾患の存在する部位にその栄養素が存在するかどうかを考えればよい」

栄養素が、体のどの部位で濃度が高いかを知ることは、その栄養素がどこの疾患で有用なのかを知ることなのです。

なぜなら、栄養素は体が長年の歴史で必要とされる部位に運ばれるシステムが確立しているからです。

ビタミンCの場合血中濃度を1とすると、脳には20倍、白血球には80倍、副腎には150倍のビタミンCが存在します。

ビタミンCが存在する所には、それだけ需要があると考えられます。

風邪の予防と治療にビタミンCが効果的であるというエビデンスが多く存在しますが、これはビタミンCによる白血球の活性化作用が一因と考えられます。

また、副腎疲労症候群の治療に最優先すべき栄養素がビタミンCであることも、このビタミンCの分布から推測されます。

一般に、栄養素が高濃度に存在するところほど需要量が高く、栄養素を摂取した場合に、優先的に使用されます。

だから、「 美白のためには、どの位のビタミンCを摂ればいいのですか」

というご質問をよく頂きますが、答えは

「 人によって大きく異なります」 となるわけです。

副腎や白血球での需要量が多い場合は、そちらでまず使われてしまうからです。

ビタミンCが足りているかを調べるためには、ビタミンC血中濃度を測定すると参考になります。

分子栄養学実践講座 では、栄養療法に関する様々な情報を発信しています。

まずは、無料講座「栄養療法の血液検査の読み方」からどうぞ。

無料登録はこちらから

分子栄養学について | 研究会の活動 | お問い合わせ

--

--