【じぶん図書館のつくりかた】図書館にする場所探し【第4回】

図書館は"どこでも"できる

森哲平
ナガヤ図書館 おとなり3

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これまでは貸出管理の方法や、蔵書の集め方について話してきたけど、肝心なことを忘れてた。図書"館"と言うからには、まずは「場所」「建物」を見つけなくちゃいけない。今日の「つくりかた」は「場所の探し方」についてだ。

自宅でやる

一番手っ取り早い方法がこれ。自宅を図書館にする。え?!って思うかもしれないけど、別にこれ、割とフツーの方法で。自宅でも「図書館」だと名乗っちゃえば図書館だし、リブライズなどを使って蔵書管理をすれば、もう立派すぎるくらいだ。

「住み開き」、つまり「住んでいる場所をそのままコミュニティスペースとしても半分開放しちゃう」という手法については、アサダワタルさんのこの本が出て、既に6年。むしろ「枯れた」「よくある」手法だと言えるんじゃないか。

それどころか、これは最も由緒正しい、オーソドックスな方法だとすら言える。というのも、今のように「マイクロライブラリー」とか「私設図書館」といった言葉が出てくるはるか以前から、「文庫活動」はあったからだ。文庫活動、すなわち、自分の蔵書を一般に開放することは戦前からあった取り組みだ。

地域文庫活動について,「戦後,浪江(旧姓・板谷)虔(1910–1999)が農村文庫,部落文庫等と称して以来定着したもの」であるという指摘に本稿は注目する。第二次世界大戦下,「農村に図書館を」と浪江は私立南多摩農村図書館を開設,治安維持法による検挙,解放後,農村の隅々まで農村図書館を広める活動を再開した。それは「成功しなかった」が,その発想そのものは間違っていなかったと彼は振り返っている。「自発的な小さな読書施設が多くの人によってつくられ,それを公立図書館がちゃんとバックアップすれば,それが広がり伸びるだろう」と浪江は「部落文庫」(読書施設)と「親図書館」(公立図書館)の関係を考え農業図書の収集に重点を置いた。しかし農民に役に立つ肝心の書物が当時はなかった。農民の中に入り農村を基盤とする浪江の活動は,「地域住民の堅実な拠点まで成長してきた」と評価されている。それが地域文庫の誕生と運動の展開であり,「地域文庫」という用語も東京都町田市で最初に使われた。(地域文庫活動の意義 坂内夏子 https://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:ELlDgL1cNLIJ:https://waseda.repo.nii.ac.jp/%3Faction%3Drepository_uri%26item_id%3D37784%26file_id%3D162%26file_no%3D1+&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp&client=safari

自宅を完全に公開するのは怖い、という人は、登録制にしてみたり、事前予約制にしてみたりすればいい。

使ってない空き家を活用する

また、自宅とはちょっと違うけど、自分やその家族が所有している、使ってない空き家を活用するのもポピュラーな方法だ。

まず、そもそもなんで「図書館」、マイクロライブラリーが注目されているかというと、図書館なんてものができるくらい、空き家が余ってるからだ。

今、日本の人口はどんどん減っている。それなのにストック住宅は大量にあり、壊されないまま残っている。リノベーションして、カフェにしたり、ゲストハウスにしたり。様々な活用方法があるが、そのうちの一つとして図書館が注目されている、というわけだ。

使ってない空き家なら住所を公開しても、そんなに怖くはないし、それが自分や家族の所有物なら、ちょっと掃除したり補修をすれば、そのまま図書館として十分利用可能だ。

お店に図書館を設置する

また、人口が減っているということは、小売面積に対して人が少なくなっている、つまり「家賃という固定費が今まで以上に高くつく」ということだ。

こうした流れから「ショップインショップ」、つまり一つの物件を多数のお店や屋号で「シェア」する流れも急速に進行しているのではないだろうか。

これは図書館に限らず、たとえば本屋をやってみたい、という人にも当てはまるのだけど、自分だけで本屋をやろうとすれば、まずなかなか成り立たないと思う。だって、本は安くなる、なかなか仕入れられなくなるのに、固定費=家賃は変わらないんだから。

だから、たとえば、複数の「本屋志望」を集めて、一緒に本屋をする。家賃は割り勘。趣味、ではないけれど、プロで専門で本屋、とまではいかない。趣味以上仕事未満、といったスタイルが今後はどんどん増えていくんじゃないかと自分は考えている。

図書館も同じで、図書館のためだけに物件を借りようとすると、まず図書館で「収益化」は無理だから(仮に貸出費用を取ろうとすれば、著作権者の許諾がいるだろう)、家賃を安くしなければならない。けれども、収益が見込めない図書館だけで家賃を賄うのは至難のワザ。

そこで既にあるお店、たとえばカフェやゲストハウスに声をかけて「店のはじっこで構わないので小さな図書館をさせていただけませんか」と提案するのは非常によくある手法だと思う。

お店としても賑わいができる、お客さんが楽しめる、来店の理由ができるのにやぶさかではないだろうし、まずはいきなり一棟まるまる図書館というよりも、少ない蔵書で、でも、大事な本だけを並べた、マイクロマイクロライブラリーなんてのも乙でいいんじゃないだろうか。

どこだって図書館になる

面倒なのでいちいちあげていかないけれど、本が集まり、そこに人がくればそれは図書館なのだから、図書館は場所を選ばない。どこだって図書館にできてしまう。

バス停ごとに小さな箱を設置するとか、町内の各所に小箱を設置して「まち全体を図書館にする」といった試みもある。

図書館をするのに、実は難しいことは必要ない。やってみよう。そう思いたち、最初の一歩を踏み出しさえすれば、存外かんたんにできてしまう。それが図書館の一番の魅力なのではないだろうか。

というわけで、ここまでいろいろ話をしてきたけれど、さて、次回はいよいよ「図書館を運営する、その運営資金をどうするの?」。つまり、皆さんお待ちかね、おカネの話をしていこう。

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森哲平
ナガヤ図書館 おとなり3

1979年兵庫県生まれ。2011年より徳島に移住。2015年から徳島市沖浜町にて私設の図書館や子ども向けプログラミング教室を運営している。