愛でたい敷島 #001

Yuko Shikishima
ナガヤ図書館 おとなり3
3 min readOct 15, 2017
気に入ったので森さんから借りた「イ・パクサ」のポンチャックCDをかけてたら、これを歌っている人はこういう人だと思うと言って描き始めた

娘が赤ん坊の時、私はすごい発見をしたんですね。娘の鼻息のことなんですけど。この鼻息が何なのかっていう発見です。まず、娘の肺の中の空気ですよね。それだけでお宝なんですけど、娘の全身の細胞から少しずつ出された二酸化炭素と娘の吸った酸素のガス交換が行われている。
つまり、鼻息っていうのは、娘の全身の細胞の、体内の、内臓のにおいなんですよ。
それを発見してからはもう、娘が寝るのを待って、呼吸の邪魔にならないように風下で娘が鼻息を出すタイミングに合わせて心ゆくまで吸い込むというのが日課になりました。真っ暗な部屋でスマホで「呼吸」を検索してブルーライト浴びながらWikipediaとか読んで、鼻息吸いながら壮大な娘の細胞のガス交換の旅に想いを馳せるんです。これはもうたまりません。
次第に、鼻息で体調の変化も分かるようになりました。
調子が良い時は、とうもろこしのようなにおいなんですが、ちょっと風邪気味だとそら豆のようなにおいになります。

それから、次は、娘のおでこを舐めるという楽しみも生まれました。
娘が眠りにつくと、なんというか顔のパーツが全部ぷくーっとそら豆っぽくなってかわいい、おでこと髪の毛の生え際がじわーっと汗かくんですよ、かわいいかわいい、で、その汗の部分を夜な夜なぴちゃぴちゃ舐めてたんですね。ちょうど頭皮の甘いホットケーキみたいなにおいも鼻の位置にきて堪能できるし、一石二鳥だったんです。
すっごい気持ち悪いの分かってたし慎重に行っていたんですが、ある日、「よし、寝たな。おでこぴちゃるか」と思って舐めたら、もう成長してたんですね寝たふりを覚えててですね
「ママ!おでこなめんといて!」って突然叫ばれて、ギャーー!って私がびっくりして叫んでしまって、ごめんママ気持ち悪くてごめん、ごめんなさい、と必死に謝りました。それ以来、辞めました。辞めると舐めるって似てるっていう話でまとめて誤魔化したいと思います。

それから、最近は許してくれるんですけど、好きが止まらないので、何かにつけて好き、好き、と言ってしまうんですね。語尾にも必ずつけてしまう。
だいたい1日300回くらい言ってたら、娘が突然キレてしまって「もう、好きって言わんといて、今度言ったら嫌いになるけんな」って言うもんだから、これは困ったと。
で、ふと、参勤交代の時の大名行列の掛け声「下に~下に~」を思い出しまして。再現動画をyoutubeで見てみたらやっぱりです。「頭が高い、ひかえろ、土下座しとけ」みたいな高圧的な指図でありながら、全くそう感じさせない「音」なんですね。この手があった!っていう大発見です。
低音でうなるように「スキィ~~~…、スキィ~~~…」と言っていたら、娘もスルーしたんです。娘の察知する周波数?から外せば、全く気付かれることなく愛を伝えることができた。
愛とはそういうものなのです。

この調子で愛でたい敷島、というのを書いていきたいと思いました。

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