【じぶん図書館のつくりかた】貸出管理システムをつくる【第2回】
意外と知られてないマイクロライブラリー活動とそのノウハウ
すぐ書くとか言ったのに、随分時間が空いてしまったな。すみません。「じぶん図書館のつくりかた」、というわけで、ここでは「私設の図書館、マイクロライブラリー、あなたもつくれちゃうよ」っていう背中押しと、つくるときのノウハウの話をしていこうと思ってるんだけど、今日のテーマはこれ。
貸出管理をどうするか
まあ、いろんな方法があるわけですよ。それこそ「一切管理しない」から「完全に管理する」まで。以下で、具体的にどのような管理方法があるか、いくつか紹介していこう。
一切管理しない
管理するのもコストだし、管理されるのもストレスだから、そういうのはめんどくさい。信頼しましょうよってんで、一切管理しないのも、まずは1つの方法だ。
「借りたいときはどうするの?」→「黙って持って帰ればいい」
「返したいときはどうするの?」→「元の場所に置いといて」
「何冊まで?いつまで借りられるの?」→「適当」
おいおい、本当にこんな管理してる私設図書館なんてあるのか?って話なんだけど、ある。京都は左京区にあるGACCOO(ガッコー)がそれだ。
「僕も特にルールはなくて、借りていってください、かつ、気が向いたら返してください。貸出期間もなければ冊数の制限もないという感じでやっています。それでトラブルもありません」(マイクロライブラリー図鑑 / 磯井純充/p.121)
GACCOOの主催者・太田陽博さんによる発言だ。もう一人の主催者・倉津拓也さんも次のように述べる。
「極端な話、「借りパク」も僕はあんまり否定的に思っていなくて、盗んでくれるほどこの本を愛してくれているんだと、そんなリスクを負ってまで読んでくれてうれしいなと(笑)」(マイクロライブラリー図鑑 / 磯井純充/p.122)
実際、 本の管理って本当に面倒。管理している時間や本を並べ替えたり、整理したり、掃除したり、破棄する時間で、一体何冊の本が読めるんだ?と考えてしまうのが、本好きだと思う。また、一度自分が読んだ本を、またもう一度手に取ることは実は少ない。それならいっそ、一切管理しない、というほうが清々しくていいじゃないかって発想はもっともだ。
ちょっとは管理する
一切管理しないのはアレなんで、ゆるーく、ほんと一応は管理しよう、という選択肢。ぼくが運営している「おとなり3」という図書館でもこの方法を採用している。
具体的に言うと、なんか机の上にノートを置いといて、借りた本のタイトルと自分の名前、連絡先を書いていく、という方法をとっている。貸出期間は一人2週間3冊まで。一応決めてる。
が、「一応」と書いた通り、それは本当に一応で、実際にはまったく管理してないというか、誰も2週間だなんて守ってないし、3冊って制限も皆守ってない(笑)。連絡先ということで電話番号まで書いていく人もいれば、「山本」と名前すら苗字だけ適当にメモみたいに書いてく人もいる。
先日、2年目にしてようやくはじめてノートを見直し、未返却の本で、借り手に連絡がつく人には、ゆるーく「返してね」と返却催促したが、このノートを見直すことはほとんどない。
毎月ぴっちり管理してもいいのかもしれないが、管理を厳しくすればするほど、手間がかかるし、皆が借りにくくなる。それならいっそ「もう無くなっても構いませんので」というスタンスだ。
実際、管理するのにもコストがかかる。管理がゆるいと確かに蔵書が紛失する、返ってこない。けれども、借りに年間で3万円分の書籍がなくなったところで、それを減らすためにスタッフを動かしたりなんだりしたら、明らかに時給800円で計算したとしても、年間30〜40時間の管理時間が発生しそう。ちょうど「一円玉を拾うのに一円以上のコストかかってるだろ」ってのと同じ話で、管理したから得とばかりは限らない。
じゃあ、なぜ一切管理しないのではなく「ちょっとは」管理するのかというと、ぼくの場合、「そのほうがなんとなくだけど、図書館っぽいから」みたいな理由でしかない。「ごっこ」みたいなものなので、システムあるほうが借りる人も喜ぶんだよね。
ちなみにぼくが運営する図書館では写真のようなノートに記帳してもらってる。
メキシコはチャパスーの手漉紙ノートらしい。この不気味なノートに書くというのが利用者には結構ウケてる。また「いや、管理は適当で」「あ、そうですね。本はあんまり返ってこないですね」などと言うと、「ゆる!!」っておもしろがってくれる。
人間というのは管理されるのを嫌う生き物だ。だから「お前らのこと見張ってますよ」というと、ムッとするというか、それでどこか相手と自分を対立構造で捉えてしまうし、管理の抜け穴を探そうとする。大して「管理しませんよ」「好きにどうぞ」というと、勝手にルールを守ってくれるものなのだ。
ちなみに、この方法で、未返却の本も結構あるけど、悪質な盗みのような案件は多分一件もない。一番多いのは、一見さんが気軽な気持ちで借りていって、けれども、そのまま忘れちゃってるとか、期間をあまりにもすぎて、かっこ悪いので返しにいけない......みたいなケースがほとんどじゃないかと思う。
完全に管理する
完全に管理するなら、これも方法はいろいろあるだろうけど、基本パソコンを使ったシステム化、ということになるだろう。ここでは一番わかりやすい、リブライズというシステムを紹介する。
リブライズは「すべての本棚を図書館に」がコンセプトのウェブサービスだ。利用料は無料。住所と図書館名さえ記入すれば、誰でも、どこでも図書館が開設でき、蔵書も一律で管理ができる。
貸出する場合はどうするか。これはFacebookアカウントを利用する。スマホのブラウザ(Safariとか)で「リブライズ」と検索。リブライズのウェブサイトを表示すると「Facebookでログインしますか?」と聞いてくるので、ログインすると、その人のFacebookのIDのバーコードが表示される。これを別途購入したバーコードリーダーでピーッと読み取り、続けて「貸し出す本」を同じように読み込めば貸出完成だ。
返却する場合、書籍を登録する場合も、自動でモードを切り替えてくれるのでとてもラク。たとえば、貸出された本をもう一度バーコード読み取ると、勝手に「返却」、未登録の本をスキャンすると、自動で「登録」してくれる。使用するのにほとんど知識やノウハウは必要ない。
必要なものは、
・パソコン
・インターネット接続
・バーコードリーダー
のみ。パソコンのスペックはそんなに高くなくてよい。バーコードリーダーは、パソコン機種やOS等によって動作の違いがあると思うので、確認しないといけないのだが、基本、Amazonなんかで売ってるやつで問題がない。
実際、どんな感じか、ぼくが運営している「おとなり3」という図書館のページを見て確認してほしい。
・蔵書の総数も表示される
・現時点での貸出返却管理ができる
・スタッフのおすすめ、コメント機能も使える
・蔵書の検索ができる
・同じ本がある全国の図書館が一覧できる
など、メリットは多い。
逆にデメリットとしては以下が考えられる。
・Facebookのアカウントある人しか貸出ができない
(子どもや高齢者はどうする?)
・図書館の住所が全世界に公開される
・バーコードがない本もある(昔の本など)
・パソコン一台を常駐させなければならない
まず、Facebookのアカウントがない人はどうするの?問題だが、方法はある。利用者カードシールをリブライズから購入するのだ。
50枚で5000円なので結構高い。他に抜け道があるのかもしれない。でも、リブライズも使わせてもらってることだし、おとなり3でも一応購入して使ってみている。
同様にバーコードがない本の管理も、こちらで専用シールを購入し、それを貼り付ければよい。
バーコードがない本には2種類ある。バーコードがついてないだけでISBN(インターナショナルスタンダードブックナンバー。要するに国際的な書籍の整理番号みたいなもの)はある本と、ISBN自体がない本だ。
前者については、数字をバーコードに表示しなおしてくれる無料サイトがいくつかあるのでそれを使う。
AmazonでISBNを調べて、上のサイトにその数字を入力すると、バーコード化してくれるので、これをステッカーに印刷。シールとして本に貼ればよい。
パソコンが1台必要、というのもネックだ。自宅に古いパソコンがあればそれを使えばよいのだけど、ない場合は、raspberry piがおすすめだ。
ラズベリーパイは教育用の、シングルボードコンピュータ。難しいことはどーでもいいので割愛するが、要はカセットケースサイズのパソコンだ。値段はだいたい5000円前後。ケース付きで6000円といったところか。
ここに、microSDカード、マウス、キーボード、電源ケーブル、ディスプレイを挿して使う。OSは? いわゆるLinuxで動いてる。
写真のようにマインクラフトで遊んだり、scratchやpythonでプログラミングもできる。電子工作にも使える。
常時パソコンを置いておくなら、安いもののほうがいいし「貸出管理にしか使わない」のであれば、ラズパイがおそらく最も消費電力も安く、コストが安い。おすすめ。
完全管理は成功するか
なんでもいいので、すべてをリブライズ化して、バーコードシステムを通さなければ貸出できないようにすれば、蔵書の完全な管理は可能だけれど、でも、現実的にはそれはなかなか難しい。
というのも、「私、パソコンとか全然わからなくて」とか「デジタルは嫌い」という人が絶対いるからだ。
Facebookアカウントないのはいいとして、「では、シールで登録しましょうか」といっても「うーん。そんなのややこしいなあ」という人は絶対いる。結果、ぼくが運営している図書館では、リブライズとノートへの記入と、どちらでも貸出可能、というスタイルをとっている。
これをしたものだから、貸出記録はリブライズ上と、ノートで2つに分かれてしまうし、結果ノートだけで管理するよりもややこしくなってしまった。これも最初から予想できたことで、リブライズについてはずっと前から知っていたのだけど、最近まで導入を控えていたのは、そうした理由から。システムで一元化がどーせできないなら、最初からノートに一元化したほうが話早いし、誰でも使えるからバリアフリーじゃないかと判断したのだ。
ただ、実際にリブライズを使ってみると、 蔵書が整理され、すべて表示されるというのはなんとも快感だし、「へー、この本、あそこの図書館にもあるんだー」なんていう横のつながりの発見もあったりして、やはり楽しい。完全な管理を目標とするなら、リブライズ以外は絶対に使わせないようにする。そうでないなら、あくまで楽しみ、雰囲気を味わうために使う、というのがいいんじゃないか。
いかがでしたか。次回の「自分図書館のつくりかた」は「蔵書のあつめかた」。いつになるかわからんがのんびり待っててください。気がむいたら更新します。