フリーランスが安定してると感じる2つのポジショントーク

フリーランスになりました、という話をすると、「リスクをとってフリーランスになったんですね!」と感心されることがあります。でも、私にとってはフリーランスになることはリスクでもなんでもなく、逆にリスクヘッジですらあります。

こんなふうに「なんとなく皆が思っていることとは逆の価値観」をここでは示してみたいです。この記事を読むことがまだ見ぬキャリアに踏み出すきっかけになりそうな知人のことを思い浮かべつつ、「フリーランスは安定している」と言える理由を挙げてみたいと思います。

キーワードは「内的安定」「精神的安定」です。

1.特定の組織に依存しない「内的安定」

特定の組織に依存することをここでは「外的安定」と言います。この場合、依存している相手の調子が悪くなると、自分もその巻き添えを食らいます。

例えば、「会社が傾いたときにどうなるか」ということを例を挙げて考えてみたいと思います。

ある企業の話ですが、希望退職者を大量に募ったときに辞めていったのは、辞めてほしくない優秀な人材だったそうです。

当たり前の話、傾いた船から海に飛び込めるのは泳げる人たちで、日頃から鍛えていて波に揉まれても進んでいける能力の持ち主です。こういった人材はすぐに別の船を見つけることができるでしょう。

では、船に残った人たちはどういう人かというと、泳げない人たちです。大きな船に乗って安心しきっていて、荒波を乗り切ることができない人たち。船にある温水プールで泳いだことがあっても、転職市場という海では通用しないことが多いのです。

その会社は希望退職者を募って数字の上では人件費が削れて改善されたのですが、結果として、食事制限のみで運動をしなかったダイエットのように、筋肉が落ちて脂肪は残り、体質的には悪化してしまったそうです。

沈みゆく船と決別して新しい船に移れるようにするためにも、組織に依存しすぎてはいけません。外的安定を捨てていざという時に泳げるように鍛えておくべきなんです。この鍛えてある状態こそ安定感があります。自分の中に安定を身につけておくという意味で「内的安定」と言えます。

2.後悔を残さない「精神的安定」

先ほどは「会社が潰れたらどうする」という喩え話をしましたが、もちろん潰れない会社(国が潰させない会社)もあります。だからそこに入れば安定だ、というのはわかります。ですが、それはあくまで「金銭的安定」に過ぎません。

金銭的安定がもたらしてくれるのはマズローの欲求段階でいうところの下から2番目まで。比較的低い欲求段階までしか満たされません。雨風がしのげてご飯がちゃんと食べられるだけ。

お金でSafety(安全)欲求を実現できたとしても、それだけでは私は足りません。自分の力で価値を生み出し、所属欲求や承認欲求、さらにその先の自己実現欲求までも満たしていきたい。

幸せの定義や達成したい欲求段階の程度は人それぞれだと思いますが、このマズローの欲求段階を考えると、金銭的安定が担保されたとしても、その結果として自己実現欲求が満たされなければ幸せではありません。

「お金はあるけど、これがやりたかったんだっけな・・・」

という状態は、おそらく幸せとは程遠いと思います。

このように考えると、自己実現のためには、1つの組織に居続けることは戦略として危ういです。知的好奇心が一定ある人であれば常に新しい興味は湧いてきますし、世の中が激しく変化する中で自分が変わらないでいることは時代遅れになることと同じです。だとしたら、自分の興味や世の中の変化に応じて、自己実現に繋がる場所に身を移していくべきです。

1つの組織に依存せずに、やりたいと思うことをやる。「やらなかった後悔」を残さない生き方ができるのも、組織に依存しないフリーランスのいいところの1つです。

やらなかった後悔のほうが、やった後悔よりも根深く残ります。そうった後悔を残さないという意味で「精神的安定」が手に入るわけです。

キャリアにおける安定の指標

「内的安定」と「精神的安定」を踏まえると、自分が安定しているかどうかの1つの指標として、

Facebookで「仕事辞めます」と言ったときに
どれだけの会社から声がかかるか

というのが挙げられると思います。自分の能力を知ってもらって声をかけてもらえるなら、どんな状況になっても安定しています。内的安定です。さらに、自分で選択できる立場なので、「精神的安定」もありますね。

この指標はなかなか実験する機会は多くないですが、私の場合はいくつかの会社からお誘いがかかりました。本当にありがたいです。

最後に、無責任にならないように書いておきますが、新卒からのフリーランスはオススメしません。ベンチャーやスタートアップで、どういった価値の生み出し方(儲け方)があるのかを知り、自らの裁量で実践しておいた方がいいです。ベンチャーやスタートアップを勧めるもう一つの理由は、そういった面白い成長領域であれば、フリーランスになるまでもなく「内的安定」や「精神的安定」を獲得することも多いということです。その場合、キャリアの安定感を求めてフリーランスになる必要はないかもしれません。

それでもどうしてもフリーランスでなければいけない人は、ちゃんと実績を残したあとに会社に惜しまれて辞めて、フリーランスになればよいでしょう。

フリーランスになることはあくまで手段です。会社員でもいいし、起業するものアリだと思います。その手段で実現したい目的を明確に持って、必要に応じてフリーランスになることをオススメします。

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Yusuke Kuroda(黒田 悠介)
文系フリーランスって 食べていけるの?

「フリーランスを実験し、世に活かす」という活動ビジョンのもと自分自身を実験台にしているフリーランス研究家。東京大学→ベンチャー社員×2→起業→キャリアカウンセラー→フリーランスというキャリア。ディスカッションパートナーを生業とし、新規事業の立ち上げを支援。その他、議論メシ代表。FreelanceNow発起人。