第七話 秘密 SC0271–0303
アルタイルの姉、第五皇女ヴェガはソルエストレア自治区に生まれた。
この自治区は二人の母である第五皇妃デルタに与えられた都市で、皇都には皇帝と共に第一皇妃ダイヤモンドとその皇女達が暮らしていた。
皇妃は七人いてそのうちの五人が同じ年に子を授かった。
シリウス、カノープス、リギル、アークトゥルス、ヴェガは、それぞれ母は違えども兄弟姉妹のような存在だった。
ヴェガ達が皇国親衛隊に入隊して数年の月日が流れた頃、事件は起こる。
深夜に見回りをしていると辺りに靄が立ち込めた。
警備に就いていた兵達は次々に眠っていく。
しかしヴェガは母から受け継いだ魔力により辛うじて意識を保つ事ができた。
その時、何かを乗せた魔獣が城外へと走り去るのが見えた。
ヴェガが魔獣の出てきた扉の中を確認するとおぞましい光景が目に飛び込んできた。
血で赤く染まった手術台、見た事もない生物の標本、不気味に青く光る液体。人道から外れた実験が行われている場所である事は確実だった。きっとあの魔獣は此処から逃げ出したのだろう。
誰かが来る気配を感じヴェガはその場を後にした。
次の日ヴェガはシリウス達に相談した。
その中でカノープスが気になったのは青く光る液体が賢者の石から錬成された物ではないかという事。
皇帝が賢者の石の力で長寿を得ている事は皇族の中では公にされている事実。皇帝の関与が疑われる状態で上層部への報告はできなかった。
シリウス達は独自に調査を進める事にした。
極秘に調査を続けた結果その研究室に出入りする人物は皇帝の側近ゲオルグのみだった。
ヴェガ達はゲオルグが城外にでる機会を伺い人気のない林道で取り囲んだ。
ヴェガは魔獣について問う。あの靄の中で意識を保てた事にゲオルグは感心する。そして、隠す事もなく語り始めた。皇族に隠された秘密のすべてを。
魔獣の正体はキメラ。
賢者の石から生み出された新たな人工生命体。しかし、キメラは実験過程で生まれた副産物に過ぎない。
真の目的は人型のホムンクルス達に王位継承権を争わせ最後に生き残った最高傑作を体の朽ち行く皇帝の新しい器とする事だと云う。
そう皇子皇女はすべて皇帝のために作られた存在だったのだ。
そして、ヴェガ達が最後に見たゲオルグの姿は黒い翼の生えた悪魔だった。
その夜、サンの部屋の鍵が開いていた。
サンは唯一の友達であったキメラのホムンクルスを檻から解放し共に脱出を図った。
警備は薄く皇都近郊の森まで見つからずに逃げる事ができた。
生まれてから一度も外にでた事がなかったサンはキメラ達と星空を見ながら眠りについた。
その後サンは自分がエルフ族だという事を知り大森林を訪れた。
しかし、門をくぐる事は許されなかった。他種族の子を宿したエルフは追放されるのだと云う。サンは自分が子を宿している事を初めて知る。
そして、数か月後アルタイルと出会うのであった。