コードの書けるアントレプレナーはどこにいる

Yoshifumi Shiiba
5 min readNov 16, 2013

ハッカーがいない

まともなコードを書ける起業家にほとんど出会わない。よく会うのは、私と同じく熱意ある起業家に誘われてその手伝いをしている、あるいは共同創設者となった人だ。ビジョンを語るCEO自身がハッカーであるパターンについては、遭遇したことがない。

私が人と会った数などたかが知れている。そういう人、CEO兼(元)CTOが日本に存在することも知っている。それでも、私の予測をくつがえす少なさだったし、実状もそうだろう。

起業する人がコードを書けないことが必ずしも悪いと言いたいわけではない。でも、それについてやはり考えておくべき点を私の経験を踏まえて述べようと思う。また、コードは書けるが起業はぞっとする、と思っているような人々にもだ。

書けなければいけないとは言わないが、覚悟は必要だ

まず、コードの書けない起業家の皆様へ私が伝えたいことを述べる。

もしあなたがソフトウェアの介在するプロダクトで儲ける会社のCEOなら、コードを書けることは役立つ。当たり前だと思うだろうがやはりそうだ。例をあげよう。例えば、あなたはある日、自社のWebサービスプロダクトのプロモーション部分の文言がどうしても自分のビジョンに合わないと考え、修正がしたくなった。あなたはGitが何なのかわかるだろうか。わかっていて、操作できればOK、修正してデプロイするか、レビューを受ければいい。

でも、それができないならプログラマはあなたとソースコードを共有することができない。あなたにできるのはプログラマに支持を出し、待つ事だけだ。5分で終わるはずのタスクは、プログラマの忙しさに忙殺されて24時間後に後回しにされるかもしれない。Gitに限らず、こういったことはよくある。おそらく日本の多くの起業家はGitレポジトリに触らせてはもらえないだろう。あるいは、そもそも社内でプロダクトを作っていないのだろうか。

別にソフトウェアをCEO自身が作るべきだといいたいわけではない。あるいはそうであるべきではないのかもしれない。でも、ここで問題になるのは単純な比較だ。どこかにプロダクトのコードを読む能力のあるCEOがいて、そいつの会社があなたの競合なら、そいつの会社はあなたの会社よりもより早く、ビジョンに向かってプロダクトの機能を向上させる能力をもっている。あなたの会社はプロダクトの成長スピードについて比較的劣性を抱えることになる。ほかに何らかの優位性を持たなければ、いずれ負けるだろう。

プログラミングやその周辺技術を学ぶのは難しいことではない。本当だ。Gitをよく知るプログラマからマンツーマンでレッスンを受けられれば、必要な操作については1時間もかからずに習得できるのではないかと思う。私は、Storyboardを使った基礎的なiOSアプリの作り方を、プログラミング知識のある人に休日の1日で教えたことがある。10分ブログを読んで知識にするのは難しいかもしれないが、1日もかければ大体のところへは行き着ける。大事なのは、あなたにとって適切なはじめの一歩の踏み出し方を指示してくれる「すでに知っている」人を見つけることだ。

有り体な話だが、最も大切なのは、事実を認識しその上でプロダクトと会社を前にすすめることだ。ハッカーでないならハッカーでないなりの立ち回り方があるはずだ。ひとつ言えるのは、ビジョンの共有をしっかりとしておくべきだということだろうか。あなたのプロダクトのコードを書くプログラマに、しっかりとあなたのプロダクトが持つ意味を教え、共感を得るべきだ。あなたがコードの全てに口を出せないなら。

起業はクールなことではない

ここから、ハッカーたちへ私が伝えたいことを述べる。

I Never Believed Startups Were Glamorous

— マーク・ザッカーバーグ

起業はクールなことではない。事業計画、資金調達、法務、もろもろの事務処理、たくさんのやるべきことや考えるべきことがある。おそらく大体のハッカーはそういう仕事について無知なのではないだろうか。私もそうだ。もしあなたが、あなたのビジョンを達成するうえで起業しなくてもよい道があるなら、迷わずそれをえらぶべきだと断言できる。

Start a company? Yech. Most hackers would rather just have ideas. But as Larry and Sergey found, there’s not much of a market for ideas. No one trusts an idea till you embody it in a product and use that to grow a user base. Then they’ll pay big time.

— ポール・グラハム

でも、あなたが新しいアイデアやビジョンを抱えていたとして、それを大きな金にしたり成長させたりする方法というのはそうそうない。もし世界を変えたいと思っているなら、起業し、ビジネスを立ち上げるしかないだろう。ハッカーならアプリケーションのコードを書くことに集中したいはずだし、実際多くはそうしているだろう。だが、それで大きなビジョンを達成することは難しいはずだ。

述べたように、日本の起業家の多くはコードが書けない。ビジネスに詳しく、会社を立ち上げるような仕事をぞっとすると思わないような人々が主な起業家だ。良いニュースだが、プロダクトをつくり上げる能力は、ハッカーであるあなたのほうにずっと大きな分がある。起業に伴うもろもろの事務処理を学ぶのは、コードを愛する方法を学ぶよりはハードルが低いと思う。

日本にもインキュベーターやアクセラレーターは増えてきている。これぞというプロダクトをもっているなら、それらの団体にコンタクトをとるのがよいかもしれない。そうでもなければ少しハードルが高いだろうか。あなたにとって適切なはじめの一歩の踏み出し方を指示してくれる「すでに知っている」人を見つけよう。

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