PDAの話をしよう11・ソニーCLIEは次々とモデルチェンジでPDAの寿命を縮めた

伊藤浩一
PDAの話をしよう
3 min readDec 31, 2016

PDA(パーソナルデジタルアシスタント)の話をしています。1990年代より、HP200LX、Windows CE、Newtonと使っていく中、Palm OS搭載のVisor Deluxeを使い始めて、Palmの楽しさを感じ始めていました。

Visor Deluxeを使い始めた2000年に、驚くべき機種が発売されます。ソニーのCLIEシリーズです。何とPalm OSを積んだPDAです。何故、驚くべきかというと、ソニーはVAIOシリーズなどで、アグレッシブにパソコンやオーディオ家電を展開している最中でした。そのソニーがPDAを出すのであれば、オーディオやネット機能に強いPDAが出てくることが予想されました。そのソニーがPalm OSを選択、という意外な方向に進んだのです。CLIEシリーズの登場です。

Palm OSは、シンプルで使いやすいものの、ネット関連の拡張性に弱く、ソニーっぽくないOSでした。CLIEは、どんなPDAになるのか、と楽しみにしていたところ、まさにソニーらしいカスタマイズ機能を搭載しまくった機種でした。画面は、ハイレゾカラー、ジョグダイヤル、メモリースティック、折り畳み型、ミニキーボード搭載など、新機能を搭載し、マルチメディアを強化して、ネットにも強い機種を出してきたのです。さらに、CLIEは、年に何度もモデルチェンジを繰り返し、それぞれのモデルは売り切り型で後継機種を出すというより、常にモデルチェンジをしていきました。

その続々とリリースされるモデルの中で、私が愛用していたのは、モノクロ液晶を搭載したT400と、ミニキーボードを搭載したTG50です。ハイエンド機種というより、マニア向けの機種を愛用していました。Palmに、正直なところ、そこまでハイエンドを期待していなかった、という部分もあります。シンプルに使いたい、その中でも、シンプルに使える機種を選択していました。

そんなPalmのシンプルな精神を全く気にすることなく、新機能を搭載したニューモデルを続々と投入する、というのは、ソニーらしいリリースの仕方ではありますが、この方法が結果的にPalmの寿命を縮めます。続々と新機能を搭載した機種をリリースするため、日本市場におけるPalm OS搭載機種は、他のメーカーは撤退してしまい、CLIEのみになっていきます。また、CLIEがPDA市場に一気に普及を進める中、Windows CEやWindows Mobileを搭載したPDA、さらに、日本独自のPDAのシャープのザウルスなども、影響を受けていきます。

このCLIEの一気に進めたPDA市場への普及が仇になっていきます。Palm OSの進化が、時代の流れに付いていけず、CLIEは2005年に発売中止となってしまいました。このCLIEの発売中止ということは、他のPDAの市場をCLIEが奪っていましたので、PDA自体の歴史の終了に向かいつつありました。

PDA が厳しい時代になる中、携帯電話、PHSの普及が一気に始まりました。このPHS事業の一環で、PDAが利用されるようになってきます。その話題は、また次回。

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伊藤浩一
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ブログ「伊藤浩一のWindows Phone応援団(旧W-ZERO3応援団)」主宰。モバイルユーザーとしてレビューを毎日掲載しながら、日本のスマートフォンシーンの盛り上げを行い、アクセス数は月間30万を超えるブログとなっている。