「原体験が変化し続けるためのチカラになる」 — ペチャクチャナイト宜野湾スポンサー HabuBox

水澤 陽介
pechakucha ginowan
Published in
9 min readFeb 14, 2017

1979年、画家でHabuBox代表の名嘉睦稔は沖縄におけるプロダクトデザインの草創期からTシャツをデザイン・製造・販売してきた。

1985年に、HabuBox1号店が恩納村にオープンすると、美浜店・那覇店、2010年には沖縄の原風景である赤瓦屋根の建造物「AKARA」内にHabuBoxアカラ店が誕生。

そのなか代表の息子で、現HabuBoxを率いる株式会社プロジェクト・コアのアートディレクターである名嘉太一さん(以後、名嘉)は、沖縄らしさをコンセプトに新たなビジネスウェアとして定着した「ぽろゆし」や、2014年に日本デザイン振興会主催のグッドデザイン賞に選ばれた5本指ソックス「カラビサソックス」の開発に取り組んできました。

裸足の様な見た目と履き心地で、「-はく、開放感!-」を実現したカラビサソックス。カラビサとは、沖縄の言葉で「裸足」を意味します

なぜ今、老舗ブランドは変化をし続けてきたのか。ペチャクチャナイト宜野湾の役割について過去、第10回目に登壇し、第16回目に司会を務めてきた視点からお話しを聞いてみた。

「沖縄に軸があったからこそ、変化し続けられた」

— 「沖縄ブランドのパイオニア」として知られているHabuBoxには、いつから関わっていますか。

名嘉:僕が20歳のときだから今年で22年目。ただ1号店ができたのは、小学生5年のときだから、かれこれ32年になるのか。当時から、HabuBoxのTシャツを着ていたし、ファッションに興味がありました。

創業当時、名嘉睦稔氏自らイラストを描いていたTシャツは、今もなおHabuBoxに伝統として脈々に受け継がれている

— 当時、父の姿はどのように映っていましたか。

名嘉:外人住宅に工房を作り、仲間たちとガレッジセールを行ったりと、子どもながらかっこよかった。80年代から、HabuBoxのコーポレートアイデンティティとは何かと考え、グラフィックデザインとして日本の漢字や沖縄らしさを取り入れてきました。今は、もう見慣れたものですよね。当時は、ものすごく早くて売れなかった笑

— 早さの秘訣、名嘉さんはどのようにお考えでしょうか。

名嘉:土着的に、沖縄を見続けたきたこと。自分たちのルーツ、沖縄の風土をモダンに表現しようという気概をずっと持ち続けてきたから、軸がぶれずにやってこれたと思います。

HabuBoxブランドには、沖縄のメニュー(ソーキそば、ゴーヤなど)や原風景を映し出されたものが立ち並ぶ

— そのなかで、「名嘉太一らしさ」をどのようにアレンジに加えてきましたか。

名嘉:それは、 HabuBoxを変化させてきたことです。創業当時や10年前とは違うし、僕らのスタイルも崩されてなんぼだと思います。

東京でもニューヨークでもなく、僕らはここ沖縄で生きているからね。デザインにしろ、ブランドにしろ、時代に合わせて変化していくことにお手本はなく、自分で編み出していくしかないんです。

「アイコン」として、後世に商品が生き残るために

— ペチャクチャナイト宜野湾#10 で話された内容に近いものを感じました。

名嘉:そのときは、「アイコンのすすめ」というテーマでしたね。アイコンとは記号のこと。音楽で例えると、昔はレコードのLPなど物体を買っていたじゃないですか。ジャケット自体の絵や小さな文字と情報が詰まっているデザインがかっこよかったし。

今だと、世界各地から何千万もの曲がiTunes Storeに配信され、いかにクリックしてもらえるのか、どんどんアイコンが小さくなってきた。だから、HabuBoxで商品開発を行うときに、オンラインショッピングでいかにアイコンとして捉えてもらえるのかを考えるようになったし、人間自体もコーポレートブランディングの1つだと思うとアイコンって面白いですよ、と話した記憶がありますね。僕だとメガネに、髪型に……。

名嘉太一さんのトレードマークといえば「メガネ」と「パーマ」

— 名嘉さん自身がアイコンになられた、と。

名嘉:まあ、あえての部分ともともとの部分が混在しますけどね笑

ただ、『どうやって名前を覚えてもらえるのか。相手に伝えることができるのか。究極な話、点になっても認識してもらえるのか』をいつも商品作りのときに考えています。あと、僕は音楽も好きで、さまざまな曲からインスピレーションを受けてきた。ディスコ、エレクトロ、ハウスミュージックを聴きつつ、デザインワーク時のイメージを高めますね。

— なるほど。だから、「カラビサ」というネーミングが、すぅと耳に残るわけか!

名嘉:エスニックな雰囲気もあって、憶えやすいかも知れません。音の響きや、憶えやすさ、背景にあるストーリーも大事です。

カラビサソックスは、ブートタイプ(長いタイプ)、ミドルタイプ(普通タイプ)、アンクルタイプ(短いタイプ)を取り揃え、カラーも豊富に用意している

— 音楽性と沖縄らしさを商品に落とし込むことで、アイコンとして残り続けるものを作ったのですね。

名嘉:ただ、「ジャスティスの、この曲の感じで」といっても、仲間たちになかなか伝わらない笑

-見出し:20枚×20秒というルールが、100人100通りのストーリーを生む

— 一方、沖縄に住んでいても、県内のアーティストを知る機会が減っているように思います。

名嘉:歴史的に沖縄は、地勢柄も相まってさまざまな人種がいるし、いろいろなモノが小さな場所に詰め込まれてきたユニークなところ。ただ現在、近代の文化を盛り上げる素地が弱いように感じています。

そこには、歴史から離れてしまうこと、地域所得の差という問題もあるかもしれない。でもね、原因の根っこは違っていて、娯楽のような、いつもわかりやすさを求められること。つまり、日常生活とアートを楽しむことが結びついていないと思います。

— まさに、需要と供給ですね。

名嘉:そうそう。たとえ口うるさくいっても、ただの一方的な押し付けになってしまうからね。だから、まずはじめに作家やモノづくりを行う人同士が結びつくことが重要なんです。今の時代、生産者と消費者が渾然一体になっているから、Facebookといったツールを使って、楽しく、かっこいいところをバチっと火花を散らせるように見せる感じでね。

— ペチャクチャナイト宜野湾も、その役割を果たせると。

名嘉: 「20枚×20秒というルールのなかで、どうぞ自由にペチャクチャしてください」は、誰もができるし、真似しやすい。ムーブメントとして広がりやすい仕組みになっている。

地域や人種、たとえ経験がなくともペチャクチャナイトの土俵に立つことはできるし、主婦やおばあでもルールに則っていれば話せるのがすごい。

— 共通したルールに着眼するところも、名嘉さんらしさに感じました。

名嘉:100人いれば100通りの面白さがある、緊張感を含めてね。ルールが決まっているといいましたが、いかに守りつつ、どう崩していくのか。トークを聞きにくるみなさんは、ウェルカムな気持ちで待っているので、自由に自分らしく発表してほしいなと思います。

— いつかまた、ペチャクチャナイトでお話しください。

名嘉:はい。世の中にありそうでなかったものを形にするのが、僕たちの役目だと思っています。まだ、詳細は言えませんが、アッとするものを企画していますので、ぜひ楽しみに待っていてください。

そのときは、20枚のスライドを用意して、伺おうと思います。

【インフォメーション】

ホームページ:

・HabuBox恩納店

住所:〒904–0414 沖縄県恩納村字前兼久493–1

営業時間:11:00 ~ 20:00

TEL: (098)965–1480

FAX: (098)965–1530

・HabuBox美浜店

住所:〒904–0115 沖縄県北谷町美浜9–12

営業時間: 11:00 ~ 21:00

TEL: (098)926–0421

FAX: (098)926–0421

HabuBox那覇店(国際通り沿い)

住所: 〒900–0014 沖縄県那覇市松尾1–2–4

営業時間: 11:00 ~ 21:00 (国際通り県庁側)

TEL: (098)861–7339

FAX: (098)861–7339

HabuBoxアカラ店

住所: 〒904–0115 沖縄県北谷町美浜9–20

営業時間: 11:00 ~ 21:00

TEL: (098)936–8239

FAX: (098)989–5087

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水澤 陽介
pechakucha ginowan

おきなわダイアログ管理人×フリーライターで沖縄カルチャーをお届けします。