WHEN I’M IN MY DREAM

オクラホマシティ探訪記 / 出発編

7A
Perspective_7A
7 min readMay 14, 2018

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夕方早くに出発の予定だった飛行機は遅れに遅れ、夜中になった。しょうがないから空港内をぶらつき、展望台から出発する飛行機を眺めた。それはそれで面白かった、なぜなら私は海外旅行をしたことがなかったからだ。

飛行機には乗ったことがあった、北海道と沖縄に行ったことがあったからだ。真新しいパスポートにスタンプを押してもらい、まじまじと眺める。ページに対して水平じゃない。だがそこがいい。いかにも何千回もスタンプを押しすぎてどうでもよくなっている人のスタンプの押し方だ。ゲートを抜けた先は伊勢丹新宿店のようなブランドショップ街になっていた。海外旅行、行かなくてよくない?新宿でいいじゃん。キョロキョロする私を引率する、同行してくれた通訳の大西玲央さん(レオさん)。息子さんがまだ小さいので、意味不明の人の世話はお手の物なのだろう。

羽田空港。エアポート投稿おじさん

出発の時間までまだある。うどんを食った。うどんのくせに1000円ぐらいした。すごいハズレだった。悔しい。歯磨き粉を入れてたかどうか不安になったので、売店で買った(入ってた)。

飛行機の最もいいところは離陸と着陸だ。離陸の瞬間の胃が持ち上がる感じもいいし、ぐるぐると螺旋を描いて上昇し窓から見える地上の景色がどんどん遠ざかっていくのもいい(席は窓側じゃなかった)。だが、それしかいいところがない。隣の席のレオさんは早速MacBookを開いて、すごい速さでキーを叩いている。適当に叩いてんじゃないかと思ったけど確認するのはやめた。私は特にやることがない。寝た。起きた。寝た。起きた。到着のとの字もない。ヤバい。今どこなのかもわからない。レオさんは寝ている。尻が痛え。寝る。アメリカは遠かった。生まれてこのかた、こんなに暇だったことがあっただろうか。寝た。

ANAの機内食はかなりの当たりだった。白身魚の照焼き、煮〆、サラダ(ドレッシングがおいしい)、フルーツ

何時間かかったのかさっぱりわからないけど、ようやくロサンゼルスに到着した。夕方だ。けつがマジで限界だった。入国の手続きがまたヤバかった。私は行列が大嫌いで、行列になってたら買い物でもラーメンでもすぐやめるんだけど、この時の行列ときたら軽く1kmはあった。ようやくスタンプおじさんのところにたどり着く。まるで西部劇の保安官みたいに赤い。「何しにきたの、オクラホマシティに?」たどたどしい英語でプレイオフ観にきた、と告げる。「OKCの選手、誰がいる?」疑り深い。「ラッセル・ウェストブルック」と答える。「たのしんで」おじさんはスタンプをページに並行じゃなく押してくれた。ビビらせんじゃないよ。もちろん、楽しむともよ。

預けた荷物がベルトコンベアに乗って出てくるのをちょっと楽しみにしてたんだけど、だいぶ前にスタンプをクリアしたレオさんが気を使ってすでに私の分も荷物を回収し、待ちくたびれていた。

アメリカはタバコ吸ってるやつを銃殺しかねない勢いで排除している、という印象だったんだけど普通にそこらへんでみんなタバコを吸っていた。個人的にはタバコより銃の方が即死しそうではある。アメリカンエアラインズの受付でゴタゴタしてからターミナルにバスで向かった。滑走路をバスで!うおーすげえ、飛行機の横をバスで走ってるよ!だが乗客は誰も感心してない。バスの運転手がスヌープそっくりだったから私は「めっちゃロサンゼルスぅ」と思った。

ターミナルにいくつもぶら下がったテレビモニターではフィラデルフィア対マイアミのゲームが流れている。私の通訳で帯同してくれていることを言い出しそびれたレオさんが、ほんのりツイートで「来てます感」を匂わせていた。オクラホマシティ行きの飛行機の時間が表示されてるモニターは見るたびに15分ずつぐらい遅れて行く、何の釈明もなしにだ。すっかり辺りが暗くなり、遅れが1時間以上になってようやく、何の言い訳もお詫びもなしに「時間でぇす」みたいな感じで受付の女の子が受付を開始した。「めっちゃアメリカ」と私は思った。

家電の自販機があった。すげえ

オクラホマシティ行きの飛行機は窓際の席だった。遠ざかるロサンゼルスの灯りを眺めていると、The DoorsのLA Womanが脳内再生された。

飛行機の窓から見た星空は今まで見たこともないほどの星の数だった。大昔、電気なんかなかった頃に人間が見た星空、もう失ってしまった景色を、いま私がこのどうやって飛んでるのかわからない質量の塊に乗って眺めているのが不思議だった。でもそれを言ったらこの旅行自体が謎だった。勢いに乗ってここまできたけど、なぜここにいてこんなことを思っているのだろう。今どこにいるんだろう。何時だよ。アナウンスの英語が全く聞き取れねえ。ウケる。

オクラホマシティのウィル・ロジャース国際空港(国際空港…?)に到着した我々を迎えてくれたのはNBAのウンベルトだった。エスカレーター降りて最初に目に入ったのがNBAのロゴ入りの紙に印刷された「Nanae -San」という文字だったので、夜中のオクラホマシティで爆笑した。これ進研ゼミで見たことある。同時に、夜中のオクラホマシティで自分の名前とNBAのロゴが印刷された紙を見て爆笑してる自分がどうにも理解できなかった。

ウンベルトが運転する車でホテルに送ってもらう途中、チェサピーク・エナジー・アリーナに立ち寄った。人っ子一人いない。またあの感覚が強く蘇ってきた。私は今、真夜中のオクラホマシティで、リーパスの画面に映っていたあのアリーナの前にいる。あまりに非現実的すぎて(人が誰もいなかったせいもある)まるで夢でどんな変なことがあっても受け入れてしまい、不思議だと思わない人みたいな状態になっていた。

ホテルに着いてからもチェックインのゴタゴタがあり、眠れる体勢になったのが明け方の4時ごろだった。とても眠れそうになかった。なぜなら私はもうすでに何時間も夢の中にいたからだ。(続く)

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