エジプトの話 3
クレオパトラの墓を探せ
今回はクレオパトラの墓探しから.
クレオパトラが実際にどのようなお顔だったのかはわからない.ギリシア系なので,今のギリシア人に近いお顔立ちなのかもしれない.
調査機材を持ち込むには,どこの国でも同じだが,事前に許可を申請しないといけない.我々は大型コンピュータとかレーダとか,軍事転用できそうな機材を多く使うので特にややこしい.
ここらへんはやはりエジプト学の本場であるヨーロッパの調査隊が強い.そんな中にアジアから割って入った吉村作治先生は只者ではない.
何度もエジプト大使館に通ううちに,大使館のある代官山に無駄に詳しくなってしまう.
困ったのがカラープリンタの持ち込みを禁止されたこと.持ち運び可能なインクジェットプリンタはまずカラープリンタなので,プリンタを持ち込めず難儀した.
いわゆる「お断り見積もり」という見積書を何通ももらった.金額が実質的に NaN (Not a Number) になっているやつだ.最初からNaNと書いてくれ,いやFalseを返してくれと,計算機屋は思うのであった.
「リモワは消耗品」が隊員の合言葉である.ただし,どうせ壊れるからといってあまりにも安いスーツケースを使うといきなり壊れるのでおすすめしない.
ペリカンケースの問題は,中に何を詰めようとも機材ケースだと勘違いされて開封を求められること.
書類を完璧に揃えても手違いはある.諦めずに粘ろう.
お稲荷さんは効果的なシステムだと思う.無一文になった旅人は仕方なくお供えと幾ばくかの路銀を拝借できる.お稲荷さん&世間の目にさらされているので,お祈りの一つも挙げないと借用できないし,余裕ができたら全国のお稲荷さんネットワークのどこかへ返さねばというプレッシャーもある.
足止めと言っても身柄は国内に入れる.国によっては入国もさせてもらえないことがある.
そういえば考古学者はなぜブーツ,ブルージーンズ,白いシャツ,インディ・ジョーンズの帽子と相場が決まっているのだろうか.
ものすごい勢いだったよ.
塩野七生はユリウス・カエサルを生き生きと描いているのに対し,その愛人クレオパトラに対しては手厳しい.個人的な恨みでもあったのかと思うほど,ボロクソに書いている.
アラビア語の定冠詞「アル」がつく星の名前が多いでしょ?アルタイル,アルデバラン,アルゴル…
エジプトで最も気候の良い土地でもあるのだろう.すぐとなりが大統領公邸である.
ちょうど様々なメディアがキャサリンを取り上げていた時期だったように思う.「謎に包まれたクレオパトラの墓」「異色の経歴を持つ女性考古学者」「地中海に臨む神殿」と来れば,世間の関心も高い.
つまり,見つからなかった.
マルクス・ポルキウス・カト・ケンソリウス(元老院にて)「ぶつくさぶつくさ(関係のない話)…ともあれ,カルタゴは滅ぶべきであると考える次第である」
ギリシア系って,エジプト人のように大きなお墓を残していないので,見込みは薄い.それでも,クレオパトラがカエサルやアントニウスを案内したであろうナイル川や遺跡は今でも訪れることができる.