【再掲】音速の壁

Ichi Kanaya
Pineapple Blog
Published in
4 min readJul 2, 2017

2013–12–10

僕はTLC5940というLEDドライバとクロック30MHzで通信しようとしている.Arduino界隈では狂気の周波数だがmbedではごく当たり前のことだし,実際TIのデータシートでは30MHzでの駆動を推奨しているので,通信もそれに合わせた方が都合がいい.

事情があって,TLC5940の動作電圧は3.3Vと決めた.ただし,複数個のTLC5940を駆動するため,mbedの出力には3.3V動作のバッファをかませることにした.

古くからの電子回路設計者なら,僕がぶつかった壁についてもう想像がついていることだろう.僕はあまり深く考えずに4050Bを回路に追加した.途端に回路は動作しなくなった.

もちろん,動作周波数の壁にぶつかったのである.4050Bについて例えばNXPのデータシートを見ると,動作電圧5V時でさえ立ち上がりにティピカルで60ns,最大で120nsかかることがわかる.30MHzを通そうと思ったら,10nsぐらいで立ち上がって欲しい.

74HC4050の場合,NXPのデータシートを見ると,4.5V動作時ティピカル7ns,最大15ns,2V動作時ティピカル19ns,最大75nsだった.素の4050Bよりは速いが,まだ足りんなあ.

ピン互換は諦めて74HC125か74AC125を使うとしよう.同じくNXPのデータシートを見ると,4.5V動作時ティピカル5ns,最大12ns,2V動作時ティピカル14ns,最大60nsとやや高速だが,まだちょっと物足りない.念のため5Vオンリーの74LS125(TIのデータシート)も調べてみたが,ティピカル12ns,最大18nsとHCよりも遅いようだ.

やや入手しにくいが3.3V動作を前提にした74LV125(TIのデータシート)だとティピカル10ns,最大14nsでぎりぎり動作する感じだな.【2017–07–03 追記: 初出時NXPのデータシートへリンクを張っていたが現在入手不可なのでTIへのリンクへ張り直した.】

刺し部品は諦めて… 74AHC125または74VHC125を使うとしよう.AHCのほうをNXPのデータシートで見ると,キャパシタンス50pF時でティピカル4.3ns,最大7.5nsだ.これなら行けるなあ.VHCのほうは東芝のデータシートがあった.ティピカル8.1ns,最大11.5nsで,合格ライン.

さらに高速品だと,ティピカル2.5ns,最大4.8nsな74LVC125というもの(NXPのデータシート)や,ティピカル1.5ns,最大6.0nsな74LCX125というもの(フェアチャイルドのデータシート)もある.

もう刺し部品は無理かなと思って眺めていたら,74ALS125(TIのデータシート)がティピカル3ns,最大10nsとおあつらえ向きではあった.5Vだけど.【2017–07–03 追記: 初出時NXPのデータシートへリンクを張っていたが現在入手不可なのでTIへのリンクへ張り直した.】

ウェブを見てみると,74VHC125や74LCX125は共立電子で手に入る【2017–07–03 追記: LCX125は入手不可】.秋月には無いかなあと思って見てみると74VHCT541というICを見つけたNexperiaのデータシート【2017–07–03 追記: 秋月に置いてあった東芝のデータシートはリンク切れになっていたためNexperiaのデータシートへリンクを張り直した】).(対する共立には74VHC9541というICが置いてあった.【2017–07–03 追記: 取扱終了になっていた】)

結局,74VHC125にするかなあ.音速の壁を越えるのは大変だ.

ちなみにWikipediaによると,だいたい HC=AC, AHC=VHC, LCX=LVC と考えていいみたいだね.

2013–12–11追記

まだまだ候補はあるようで,挿し部品だと74VHC240【2017–07–03 追記: リンク切れ】, 74ALS244 (ただし5V),ALSよりさらに速そうな74AS241TIのデータシートによれば最大6.2ns,ただし5V),フラットパッケージだと 74LVC240, 74LVC244, 74LVC541 なんかが見つかった.

2017–07–03 追記

本記事で記載していたNXP社製のチップは一部を除き現在Nexperia社が生産している.

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