パイオニア「DRESSING」の中身

Ichi Kanaya
Pineapple Blog
Published in
6 min readJan 24, 2017
Pioneer Bonnes Notes Dressing APS-DR001 (Image courtesy of Pioneer)

パイオニアが「DRESSING」という謎機器を発売しているらしい.「謎」というのは,この機器をPCのUSB端子に差し込むだけで,そのPCの音質が向上すると謳っている点だ.例えば AV Watch は次のように伝えている.

[DRESSINGは]パソコンなどでオーディオを楽しむ製品において、音質へ悪影響を及ぼすノイズの除去を図るアクセサリ。PCやUSB DACなど、USB(タイプA)端子を備えた機器の電源ノイズや信号ノイズをカットして高音質化を実現するという。音質に悪影響を及ぼす電圧変動を少なくすることで、ノイズ低減を図っている。

AV Watch にはその後,パイオニアへのインタビューが掲載されたのだが,これを読むと謎はむしろ深まる.

野尻:DRESSINGは「サウンドクオリティアップグレーダー」と言っていて、ノイズフィルタとは言っていません。中身の詳細は企業機密なので、お話できませんが、確かにフィルタ的な要素も入っています。ただ、強力なノイズフィルタを入れればいい音になるというわけではないんです。あまり強力なフィルタだと、生気のない音になってしまいますから、やはりバランスが必要です。だからフィルタの特性そのものというよりも、実際に試しながら聴感上でパラメータを決めていっています。

一体どういうことだろうと思っていたら,このDRESSINGの分解記事を見つけた.分解されたのはDRESSINGの入門的位置づけであるAPS-DR000というモデルだ.本製品は定価2,700円のムックに付属するのだが,人気商品なのかAmazonでは本稿執筆時点では4,000円近くで売られていた.

このAPS-DR000の回路図をブログ主さんが基板から起こしていらっしゃるので,引用させていただこう.

Image courtesy of Kabao.

赤い点線で囲まれた部分は,これで1個の部品で,貫通形EMIフィルタという.EMIとは Electro Magnetic Interference の略で,日本語では電磁妨害という.詳しい解説は村田製作所のウェブページにある.

回路図をごく簡単に読むと,DRESSINGの正体はUSB端子のGNDピンとケース側GNDの間を貫通形EMIフィルタでつないだ「だけ」のものだ.USB端子のGNDピンとケース側GNDの間に電位差はなさそうだが,それは置いておこう.ノイズのってるかもしれないし.

このEMIフィルタだが,ブログ主さんは

が使われているのではないかと推定されている.同製品を販売しているページは見つけられなかったが,だいたい同じ部品なら秋月電子で売っていたので,お値段の参考になるだろう.

リンクを踏むのが面倒な人のために結論を書いておくと,10個で100円である.

まあこれで音が良くなるのなら,原価の何倍取ろうと文句はないのかもしれない.先ほどの AV Watch から引用してみよう.

正直に言ってしまうと、圧縮音源でもハイレゾ音源でも違いが分からなかった。

パイオニア,大丈夫か.

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