「お客様と共に成長」オリジンに立ち返る

Ayumi Fujimoto
Plug and Play Japan Blog
9 min readSep 1, 2019

Plug and Play が日本進出を果たしたきっかけを創ったMUFG。シリコンバレーでも2015年よりパートナーとして多くのスタートアップとの取り組みを進めています。先週、2019年7月22日に開所した日本2つ目の拠点となる京都も、MUFGの協力なしには語れません。自社でもオープンイノベーションの様々な取り組みを進めているMUFGがなぜPlug and Play とパートナーシップ締結しているのか、またFintechだけではないテーマにも参画しているのか。今年新設された成長産業支援室は何を目指すのか。Director, Fintech の貴志が成長産業支援室のお二人に話をお聞きしました。

成長産業支援室 室長 戸塚 正敏氏(写真中央)

1994年 三和銀行(現:三菱UFJ銀行)入行。国内の支店(大中堅企業の営業担当)、国内営業本部(電機セクターの営業担当)、ロンドン支店(自動車セクターの営業担当)、本部での拠点企画、国内営業本部次長(小売流通セクター)、神戸支社 法人第一部長等を歴任。2019年5月の成長産業支援室の立ち上げに伴い初代室長に就任、現在に至る。

成長産業支援室 企画開発Gr. 調査役 榊原 知良氏(写真左)

2012年 三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)入行。国内の支店(大中堅企業の営業担当)、国内営業本部(公共セクター・小売セクターの営業担当)を経て、2018年よりMUFG法人・リテール企画部にてスタートアップ企業のお客さまに対する企画等を担当。企画の一環で成長産業支援室の創設に携わり、2019年5月の成長産業支援室の立ち上げに合わせ当室に着任、現在に至る。

貴志:MUFGのスタートアップ支援はいつから始まったのでしょうか。

戸塚:昔からスタートアップへのご支援は実施していましたが、特に力を入れ始めたのは2015年からですね。私は1994年に入社したのですが、本当にここ数年のスタートアップ機運の高まりと、環境の変化を感じます。現在は様々実施してきた個々のプロジェクトを、まとめるフェーズに入ってきたと思っています。Plug and Playとの取り組みもそうですね。結果的に分散してしまっているものもあるので、成長産業支援室がそれらを集約して、私たちMUFGが描いているゴールに向けて一丸となって動いて行こう、と。

Plug and Playとの提携によって社内でもスタートアップに対する認知は高まっていますよ。新聞でも”ユニコーン”という言葉もよく見るようになりましたよね。そんな状況も後押ししていると思います。

貴志:MUFGグループとしてもPlug and Play との関わりが増えていると思うのですが、グループとして関わることのメリットはどのようなところにあるとお考えですか?

榊原:お客様の”一生”に寄り添うことができる、というところですね。

例えば採択されたスタートアップに三菱UFJキャピタルが支援しますよね。その後、三菱UFJ銀行が持っているネットワークを使ってビジネスマッチングを行ったり、三菱UFJニコスや三菱UFJリースがビジネス基盤の強化をサポートすることもあると思います。三菱UFJ信託銀行が上場に向けてのコンサルティングをしたり、三菱UFJモルガン・スタンレー証券がIPOの支援をすることもできます。IPO後オーナー企業に資金が入ってくると、資産承継などの問題を解決するためにウェルスマネジメントなど個人の悩みにも寄り添うこともできます。

戸塚:ビジネスマッチングだけだと紹介に留まってしまうこともありますが、ここまで様々なシチュエーションで支援できる体制があると、継続的かつ本質的なマッチングを実施することができるようになると思っています。現在、弊行では年間約3万件のビジネスマッチングのお手伝いをさせて頂いております。これだけビジネスが多様化・拡大して行く中で、今後海外というスコープはより無視できません。今後グローバルで戦う技術をどう育てるのか、産業をどう生み出し育てて行くのか、日本の人口問題と合せて次の成長の為のきっかけ作りも大事ではないでしょうか。

貴志:MUFGには『Rise Up Festa』もありますよね。これはどういった取り組みでしょうか。

榊原:『Rise Up Festa』は今年6回目を開催しましたが、新規性・独創性を有する事業や既存の事業領域を超えて新たな事業に取り組んでいるスタートアップに対し、中長期的なビジネスパートナーとして支援していくプログラムです。 お客様としてスタートアップを捉えていて、エコシステムを広げる機運を高めるためにやっています。6回目にして、大手のお客様からの問い合わせもくるようになり、浸透してきたと感じています。継続してこのマーケットを育てていくことも大事ですよね。

貴志:スタートアップとの連携は、9割は失敗すると言われている中で継続することは本当に大事だと思います。Plug and Playとの取り組みも2年ほどになります。継続することで見えてきたことなどありますか?

戸塚:Plug and Playから多くのスタートアップを紹介してもらっていますが、まだ体制が整いきっておらず活用しきれていないと思うところもあります。すごくいい球を投げてもらっているのですが、受け止めきれていないというか・・実は成長産業支援室はそのためのチームなんです。

例えばスタートアップと名刺交換した後は誰がどう担当していくとスムーズなのか。エリア別に担当が決まっていることが多い我々の組織の仕組みが原因で、意図せず止まってしまっていることがありました。一見小さく見える問題が大きな壁になってしまっていることがあり、そういった問題をやっとクリアにできるようになりました。継続してフォローする仕組みをこれからもっと作っていかないといけないと思っています。
ビジネスが”ちゃんと”動き出すのは早くても5年。そこまでの仕組みをどう作るかはとても大事です。

貴志:オープンイノベーションやスタートアップとのお取引を推進していくに当たって、ビジネスユニットや現場の方などの部門ごとに温度感に違いがあるとよく聞きます。御社ではどう対処しているのですか?

戸塚:啓蒙活動がとても大事ですね。どういうゴールに向かっていくのか、1枚でイメージが掴める資料を作成し、関係各所とディスカッションを重ね、拠点長向けセミナーの場を活用し、共有を進めています。マインドセット、数字面での徹底(目標の設定)の両輪を確り回すのが大事だと思っています。

榊原:スタートアップとのお取引推進に当たって大事だと痛感したのは「短期と中長期のビジョンを現場に正しく理解してもらうこと」です。やるべきことは何か、実際どうやるのか、ということを徹底的に話さないと目先の数字だけを取りに行ってしまいます。MUFGの場合は、10年後のメイン取引をどう作るか、という見方が重要でした。

貴志:Plug and Play のプログラムはテーマ別で、テーマによっては競合も参画しますよね。横の繋がりなどはできたりするものなのでしょうか。

榊原:Champion(Plug and Playの窓口担当)と話すとお互い同様の悩みを持っていることがよくわかります。業界に関わらず共通項は多く、思わぬところから解決するための糸口をもらえることがあります。また、うまく行っている会社との違いをより実感できることも。何よりPoCがうまく行っている会社の話や、Deal Flow(個別面談の仕組み)をどう活用しているかなどの事例を聞くと参考になりますね。

貴志:次の挑戦はどのようなところになるのでしょうか。

戸塚:次のステージとしては産官学でしょうか。もう少しフィールドが変わってくると共に、地方創生にも繋がってくると思っています。ニーズは間違いなくあることはわかっていますし、企業以上に困っている声は耳に入ってきています。そのためにどの様なコミュニティを形成していけばいいのか、どんな機能や役割が必要なのかまた検証していきたいと思います。

貴志:今までの取り組みの経験をどう有機的に結びつけていくべきか、これからの課題ですね。

戸塚:そうですね。今大都市圏で実施していることをどう翻訳して実行していくべきなのか。マーケットはどう変化するのか。楽しみですね。

貴志:それでは最後に今後の意気込みについて教えてください。

榊原:まだスタートアップからすると、MUFGは遠いところにいると思われがちです。Plug and Playとの取り組みを通して、MUFGはこんなことまでできるんだ!と世間の認識を変えていきたいと思っています。もっとMUFGの機能を使い倒して欲しいですね。

戸塚:様々な会社がプログラムに参加しており、グローバルな展開も支援できる仕組みがあります。最大限活用していくことで世界的なスタートアップを日本から世界に輩出できたらいいなと思っています。

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Ayumi Fujimoto
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Executive Director, CMO at Plug and Play Japan. Also working as a board of directors at at Will Work.