「保険」の枠組みにとらわれない、多様な業界とのイノベーションを

Saori Nicole
Plug and Play Japan Blog
9 min readOct 3, 2018

SOMPOホールディングスインタビュー

Plug and Play Japanでは、 新たにオリックス株式会社、株式会社マクニカ、そして株式会社三井住友フィナンシャルグループをパートナー企業としてお迎えし、17社のパートナーと共に11月末から3ヶ月間のプログラム、Batch 2 を実施します。

今回は、Batch 1 からエリートパートナーとしてInsurtech、IoT、Mobilityのプログラムに参画いただいている、SOMPOホールディングス(株)に、イノベーション推進のための取り組みや重点分野についてお話いただきました!

(左から)SOMPOのPlug and Play連携窓口である東田さん、松崎さん。SOMPOホールディングス(株)新宿オフィスにて。

ニコル:SOMPOさんでは、自社で事業創出プラットフォーム「D-STUDIO」を設立されており、かなり力を入れてイノベーション促進を進めていらっしゃいますよね。Batch 1 ではエリートパートナーとして複数分野(Insurtech, IoT, Mobility)のプログラムに参画いただいていますが、どのような分野のイノベーション創出を目指しているのでしょうか?

東田:元々保険とか金融業界はかなりアナログな部分があって、いまだに紙で顧客データを取得・管理しているなど、ユーザビリティの観点で海外の同業者と比べて圧倒的に遅れています。外資が参入することでこれまでの国内のやり方が簡単に崩壊する可能性がある中、我々も今後はデジタルイノベーションで生き残っていかなければなりません。

そんな中、現在、2つの観点でイノベーションに力を入れています。①既存事業の拡充、②新規事業の創出です。

①については、Mobility, Smart home, Healthが重点分野です。SOMPOはこれまで自動車保険を大きな事業の柱としてきましたが、今後は個人で所有する自動車だけでなくカーシェアリングなど、メーカーリスクを視野に入れていきます。その他、火災保険であればセンシングやIoT技術、生命保険であればウェアラブルデバイスなど病気の予防の方に目を向けています。また、他業界の環境変化によるリスクの発生に対処するサービスの拡充にも取り組んでいます。

松崎:②の新規事業については、既存ビジネスをより進化させることを目的に、昨年ビジネスデザイン戦略部とビジネスクリエーション部の2つの部署が設立されました。ビジネスデザイン戦略部ではマーケット起点で新しいプラットフォームを使った保険や、保険以外の新規事業を生み出す取り組みを行っています。ビジネスクリエーション部では、大学や研究機関等と先端科学技術分野で共同研究を行い、アイデアを形にできるよう尽力しています。

ニコル:SOMPOさんにはPlug and Play のシリコンバレー本社でもパートナーとして参画いただいていますが、日本のプログラムに参画いただいた理由は何でしょうか?

東田:多くの企業で最近頻繁に言われることではありますが、我々も、やはり自前主義では限界があります。自社でスタートアップの目利きも行っていますが、やはりこれまで数多くのスタートアップを目利きしてきたPlug and Playからの情報には信頼があり、Plug and Playが日本に来ることを知って、シリコンバレーでの提携を日本でも続けていく必要があると感じました。Insurtech, IoT, Mobilityと分野を跨いでプログラムに参画している理由としては、保険だけでなく、リスク管理が必要な全ての業界を視野に入れ、技術の変化に伴い各分野の最新情報を吸収していく必要があるためです。自動車業界や、IoTを利用したヘルスケア業界など、あらゆるものがデータに繋がるようになる中、リスク管理は多くの業界にとって益々必要なものになってきます。

松崎:同じ業界だけではなく、他業界も強豪として見ていく必要があります。今後はあらゆる業界において、「データ」を持っている企業が強くなっていく時代です。そういった他業界を強豪として考え既存・新規事業を磨いたり、あるいは組んで一緒に新しいものを生み出したり、という関わり方が必要になってくると思います。

2日間で1,200名以上が参加した、Batch 1 EXPOにご登壇いただいた東田さん

ニコル:どんなスタートアップと協業したいと考えていますか?

松崎:既存事業であればMobility, Smart Home, Healthに関係するサービスや製品を持っている企業、またリスク管理・予防などに強みを持っている企業ですね。他の会社にはない特異な部分、キラッと光る、特出するような製品やサービス、技術を持っているスタートアップとぜひ組みたいです。特に新しい事業を一緒に作り出せる企業には魅力を感じます。

ニコル:SOMPOさんにとって、イノベーション創出やスタートアップとの協業の際に課題となっているものはありますか?

東田:まず、Insurtechのイノベーション創出の観点だと、法規制の制約がどうしても存在します。例えば海外のスタートアップで、アイデアや技術は素晴らしくても規制が緩和されないことには日本で展開が難しいものもあります。この点は自社の取り組みだけで変えていくことは難しいです。スタートアップとの協業という観点では、多くの企業で言われる点ですが、やはり大企業とスタートアップの文化の違いが協業の障壁になることがあります。しかしこの点については、社内でテレワークを認めたり、アイデアを生み出せるようにオフィス環境を改善したりと、働き方改革を積極的に進めることでスタートアップの働き方に近づけるようにしています。

また、イノベーション促進を行うデジタル戦略部やビジネスデザイン戦略部が単独で行動するのではなく、保険商品等を扱う各事業部に兼務者を置いて、スタートアップや新しい技術の情報を共有することで事業部との温度差を減らし、意思決定のスピードを改善しようとしています。元々業界の性質上、「石橋を叩きまくって進む」スタイルを取ってきましたが(笑)、スタートアップが持っているスピードの感覚は全然違って、そのやり方を取り入れていかないと生き残れないという危機感があります。我々もアジャイル式で様々な取り組みを進めるうち、スタートアップに近いスピード感覚が浸透してきたように思います。

松崎:一方で、協業の観点では基本的には業務提携を目的として交渉を進めているので、サービスが未完成であったり、大量生産できる状態にないスタートアップの場合、協業の実現が難しいことがあります。こちらが今年度中にサービス化したいと思っていても、相手側で完成していない製品やサービスだと本番化できないのが難しいところです。予算も年度ごとで何にいくら確保するか決まっているので、年度内に実現できない場合は次の年度になってしまうこともあります。サービス化に向けた仕上がりの調整は、未だ課題ですね。

ニコル:Batch 1 に参加して、どのような進展がありましたか?

東田:多くのスタートアップと出会えることができ、かなりの数の面談を実施することができました。また、パートナーである大企業との横の繋がりができたのはとても良かったです。大企業同士で、どういう悩みを持っているか、共有する機会ってなかなかないので。今後はスタートアップだけでなく、大企業とも組んで新規事業を一緒に作っていきたいです。

松崎:社内で生まれた変化としては、スタートアップとの面談に各事業部が前向きに参加してくれるようになりましたし、Plug and Play Shibuyaに足を運んでくれる人もたくさん出てきました。そして、ビジネスデザイン戦略部とビジネスクリエーション部でメンバーが昨年に比べ大幅に増え、ついに100人を超えました!イノベーション創出に注目と期待が益々高まってきていると感じます。

ニコル:11月末からはBatch 2も開始しますが、次の3ヶ月のプログラムに向けて、意気込みをお願いします!

東田:引き続き重点分野にフォーカスしながら、製品・技術を持っているスタートアップや、他業界のパートナーと一緒に新規事業を作っていきたいです。我々で「やりたい!」と思っていても、自分達だけの力ではできません。スタートアップとも、文化に違いはあれど、ぜひ対等に話を進めて協業を実現したいです!

(右から)

東田邦雄 / Kunio Higashida(SOMPOホールディングス株式会社
デジタル戦略部)

2005年4月損害保険ジャパン日本興亜に入社。入社後は福岡中央支店でリテール営業を6年担当、その後大阪企業営業部に異動し、主にグローバルメーカーを7年担当。保険のみならず、総合的なリスクコンサルティングをアレンジ。2018年4月より現職のデジタル戦略部にて、グループのデジタルシフト推進を担当。

松崎絢香 / Ayaka Matsuzaki(損害保険ジャパン日本興亜株式会社
ビジネスデザイン戦略部)

2012年4月損害保険ジャパン日本興亜に入社。入社後は横浜中央支店で代理店営業を担当し、入社3年目にリテール商品業務部に異動。自動車保険の商品開発担当として、デジタルサービス「スマイリングロード」「ポータブルスマイリングロード」「ドライビング」の企画・広報等を担当。2018年4月より現職のビジネスデザイン戦略部にて、保険領域以外の新規事業の創出を担当している。

Plug and Playでは、スタートアップとのマッチングや大企業のイノベーション促進を支援する、3ヶ月間のプログラムを実施しています。

プログラムへの参画に関するご質問・ご相談等、ぜひお気軽にご連絡ください!

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