すべての人に金融アクセス、選択肢のある人生を —

Haruka Ichikawa
Plug and Play Japan Blog
9 min readJun 19, 2019

Digicro Pte Ltd インタビュー

こんにちは!Plug and Play Japan Fintech Program ManagerのHarukaです。

今月より(2019年6月3日〜)、3ヶ月間のアクセラレーションプログラム「Summer/Fall 2019プログラム」が始まりました!今回から新たにBrand&Retailというテーマを迎え、5つの領域(IoT、Fintech、Insurtech、Mobility、Brand&Retail)において、企業パートナー30社と共に、国内外合計69社のスタートアップを採択しました。

本記事ではS/F2019 Fintechプログラム採択スタートアップで、カンボジアで機械学習を活用したマイクロファイナンス事業を展開されるDigicro Pte LtdのCEO永野雄太さんへお話を伺いました!

Digicro Pte Ltd CEO永野さん(Plug and Play Japan Selection Dayにて撮影 / 2019.4)スライドに映っているのはカンボジアの風景。

About Digicro

Digicroは自社アプリ『Spean Loan』を通じてカンボジアのUnbank層(非銀行利用者層)に50~1000ドル規模の小口資金を融資しています。機械学習を用いて顧客のスマホから得たビッグデータの活用により、アプリのダウンロード後最短で3分以内に貸し付けが可能。信用度に応じて50ドルから1,000ドルまでの柔軟な融資条件を提供しています。カンボジア国内最大手のモバイル送金業者WingとAPI提携し、顧客は24時間年中無休で現金を引き出すことができます。

Story

Haruka: 永野さんは「すべての人が教育、食糧、医療を得られる社会を金融面からつくる」の実現というビジョンのもと、今の事業を立ち上げられたということですが、途上国でのマイクロファイナンス事業を選んだ経緯を教えてください。

Nagano: 金融が良くなったら全産業が良くなると思い、金融の側面から社会問題を解決したいと思いました。金融はインフラの一種で、電気とか道路と同じだと思っています。それを享受できていない人がいることに問題意識がありました。電気がなかったら不便だと思うし、それは金融も同じで、銀行口座が急に使えなくなったらびっくりしませんか?カンボジアでは様々な理由から人口の約4割がお金を借りることができないと言われています。遠隔地に住んでいることから銀行やマイクロファイナンス機関への物理的にアクセスがなかったり、提出するための公的書類がなかったり、また同国の金融機関の融資審査が土地担保に依存しているから、不動産担保を準備できない人は貸付へのアクセスが絶たれてしまったり。お金が理由で教育・食糧・医療にアクセスがないっていうのはあってはいけない。逆にこの3つさえあれば、努力すると成功できるのが資本主義ではないかと思っています。それを果たすのが金融の役目かと思っています。

Haruka: カンボジアで起業される上でのチャレンジはどのようなものがありましたか?また、日本でのマイクロファイナンス市場の動向や関心度についてはどのように感じますか?

Nagano: 逆境は多いと感じますね。人を雇う上で海外からカンボジアに来てもらうことはすごく難しいですし、資金調達面では東南アジアで投資はしているが、カンボジアだけピンポイントで対象外ということがあるんですよ。悔しいですがこれって逆にチャンスでもあるのかなって思ってるんですよ。人がやらないことをやってるので、私みたいな人間に可能性を見出してくれる人とは一緒にやりたいなって思いますね。

マイクロファイナンスへの日本の関心度は低いと思いますが、少しずつ認知されていると感じます。私が大学を卒業して6年程経ちましたが、学生時代の時よりは知っている人が増えている印象です。

Haruka: 永野さんの事業を通して、カンボジアで生活する方々への金融アクセス-選択肢が増えていくこととともに、日本人として海外で起業・奮闘されている姿が日本にもポジティブなインパクトを与える契機となってほしいですね。

Digicro チームメンバーの皆さんと永野さん(写真中央 / 2019.6)

About the Service

Haruka: 貸付アプリ『Spean Loan』は今年2019年4月にローンチされて以来、2ヶ月半で約1万5千ダウンロード、累計5万ドルを融資されたということですが、反響についてどのように感じますか?また、どのような層の方が『Spean Loan』のサービスを利用されているのでしょうか?

Nagano: 反響はあるものの、使いやすさといった数多くの改善点があると思っています。また利用者はマイクロビジネスを営む自営業や個人事業主の方です。カンボジアでは人口の7割から8割が自営業者と言われています。例えば家の1階部分で床屋やったりとかサロンやったりとかバイクの修理やったりとか、そういうところから始まっていますね。あとは緊急性資金として、突然の入院や事故の際にも利用いただいています。ユーザーは半数以上は都市部プノンペンからですが、同国の25州全州をカバーしています。全土に約5,000店舗あるモバイルマネー最大手のWingの代理店からお金を受け取るか、都市部ではアプリによる決済も可能です。この融資事業を始める前に金融機関の比較サイトを運営していた経験があって、その頃からのトラフィックが活用できたことから新規顧客獲得はスムーズでした。あとは最高で月間PV10万以上あった金融教育のウェブメディアも運営していて、その影響もあったと思います。

Haruka: 金融教育のメディアは今も運営されているのですか?

Nagano: はい。『サラロイ』(カンボジア語でサラ=学校、ロイ=お金)というサービス名でオウンドメディアをやっています。最初は私が記事を100本ほど英語で書いて、カンボジア人が翻訳という流れでしたが、今はカンボジア人の編集チームがクメール語で執筆しています。金融リテラシーが上がれば返済率も上がると思っていますし、事業を拡大したい、金融について学びたいと思うユーザーに融資できた方が意義があると思っています。実際の顧客に会う機会はありませんが、そのような方々が使ってくれて、結果的にサービスを喜んでくれていたらとても嬉しいです。

Haruka: 『Spean Loan』では最短 3分というスピーディーな貸付が可能にも関わらず、回収率98%、現状の貸し倒れ率は2%以下(500名超のアクティブユーザーのうち、10名以下)ということですが、機械学習による審査はどのような方法をとられているのですか?

Nagano: スマートフォンにあるデータを掛け合わせて審査しています。今後は他社との連携を強化してより幅広い情報も取得していく予定です。

Future Vision

Haruka: 事業について、今後のビジョンをお聞かせください。

Nagano: カンボジア以外の東南アジア諸国からも事業連携やサービスに関する問い合わせをたくさんいただいているんですが、まずはカンボジアで現在の融資事業を集中して独占したいと思っています。また電子署名、顔認証、OCRによるIDカードの自動読み取りといった、与信審査に必要なテクノロジーの精度を高めています。

Haruka: そのビジョンを実現するために、Plug and Playではどのような支援ができるでしょうか?アクセラレーションプログラムに参加された理由も含めて教えてください。

Nagano: アクセラレーションプログラムへの参加動機は主に資金調達ですね。私は今カンボジアと日本を往復するような生活を続けていますが、日本での仕事内容は資金調達がメインです。また、これまで日本語での露出はほぼなかったんですが、プログラムを通して日本向けのPRやマーケティングにも力を入れていきたいと思っています。

Haruka: なるほど、Plug and Playでは複数のVCをお招きして資金調達に関するアドバイスを受けられるメンタリングセッションや、マーケティングに関するワークショップを実施予定ですので、ぜひご活用ください!また、実際プログラムがスタートしましたが、始まってみていかがですか?

Nagano: Fintechのプログラムメンバーとは皆でランチをする機会もありましたが、事業での関わりはないものの、それぞれストーリーがあって面白いと刺激を受けました。プログラムについては様々な機会があると感じているのでこれから楽しみです。採択されたからには、最大限に活用したいと思っています!

Plug and Play Japanでは、来期(2019年秋)のアクセラレーションプログラムの応募を7月末より開始予定です。プログラムにご興味のあるスタートアップの方はぜひお気軽にご連絡ください!

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