リアルな場を使った実証実験で、新たなライフスタイル提案を

Saori Nicole
Plug and Play Japan Blog
11 min readOct 30, 2018

東急不動産株式会社インタビュー

Plug and Play Japanでは、Fintech, Insurtech, Mobility, IoT分野の大企業18社にパートナーとして参画いただき、アクセラレータープログラムを運営しています。

今回は、Plug and Play Japan設立当初からエリートパートナーとして参画いただいている東急不動産に、コワーキングスペース「Plug and Play Shibuya」を設立した背景や、目指すオープンイノベーションの形についてお話いただきました!

(右から)東急不動産株式会社の渡邉さん、東急不動産ホールディングス株式会社の大塚さん。コワーキングスペース「Plug and Play Shibuya」にて。

ニコル:東急さんでは、渋谷をスタートアップ共創の起点とする「SHIBUYAスタートアップ100」の取り組みの一環としてPlug and Play Shibuya powered by東急不動産を設立し、まさにPlug and Play Japanと一緒に日本のエコシステムを作る取り組みに尽力いただいていますね。そもそも他のアクセラレーターでなく、Plug and Playと連携するに至った背景は何でしょうか?

渡邉:東急不動産として、渋谷をスタートアップが集まり、次の時代を共創する拠点としていきたいという想いがあります。Plug and Playが日本に進出するにあたりどの場所がふさわしいか検討していた時、若い人材が集まる渋谷が候補に上がっていると聞きました。スタートアップのグローバルな成長に寄与するPlug and Playの取り組みと、渋谷からスタートアップを世界へ、という東急の理念が合致したため、パートナーとして参画し、渋谷にPlug and Playのアクセラレータープログラムの拠点でもあるコワーキングスペースを設立するに至りました。

大塚:日本でも近年ベンチャーブームですが、エコシステムや先端の取組みは、シリコンバレーが世界をリードしており、IoTやスマートホームなど、日本の場合は3〜5年遅れていると言われています。Plug and Playと連携することでシリコンバレーの最新のベンチャーや情報に直接触れることができると思っています。

ニコル:どのようなテーマのオープンイノベーションを目指していますか?

渡邉:Plug and Play JapanではFintech, Insurtech, Mobility, IoT全分野のプログラムに参加していますが、各分野において当社の不動産関連事業と繋がるプラットフォームやサービスとの連携を模索しています。

大塚:東急不動産ホールディングスとして、住まい方、過ごし方、働き方など人々のライフスタイル全般を提案するところまで、デベロッパーとして脱皮していきたいと考えているんです。ライフスタイル提案を事業化するノウハウを、スタートアップと連携して築き上げていきたいです。ハコモノの枠を超えて、空間や街づくりをすることが我々の今後の役割の一つだと思っています。一例としてPlug and Play Shibuyaのようにスタートアップが集まって育っていく場所を作ることで、街の活性化、ひいては日本社会の活性化に繋げるといった役割を担っていきたいですね。

コワーキングスペース「Plug and Play Shibuya」の様子

ニコル:Plug and Play ShibuyaではPlug and Play Japan関連イベント以外にも、様々なイベントが実施されていますね。スタートアップとの共創という観点で、東急不動産として、コワーキングスペースを使ってどのような取り組みをされていますか?

渡邉:コワーキングスペースの特徴は、普通のオフィスとは違う人の流動性だと思うんです。会員としてその場所を利用する人だけでなく、訪問者やイベント主催者・参加者など色んな人が出入りする場所です。この場所を最大活用して人の出会いを生むため、イベントスペースを活用して外部の企業・団体を巻き込みながら様々なイベントを開催したり、コミュニティのためにキッチンスペースを活用してミートアップなどを実施しています。またスタートアップ支援という観点では、東京都と連携し、東京開業ワンストップセンターの渋谷サテライトセンターをコワーキングスペース内に設置しており、起業家は会社を設立する上での法手続き(登記・労務・税務等)を専門家に無料で相談することができます。今後も、スタートアップ支援につながる環境整備やサービス拡充をしていきたいです。

大塚:来るだけで発想を変える、クリエイティブな場所にしたいと思っています。社内では、マインドセットの切り替えのためにPlug and Play Shibuyaでグループ社員向けのイベントを実施し、イノベーション創発に活用しています。オープンイノベーションに普段から関わっている社員ばかりではないので、スタートアップが実際に仕事をしている姿を見るだけで刺激になるんです。大企業とスタートアップの連携という観点では、Plug and Play Shibuyaが両者を仲介するための中立的な役割を担っています。大企業のオフィスにスタートアップに来てもらうのではなく、両者がコワーキングスペースを使って面談することで「オープンイノベーションは両者が対等な立場で行うもの」という考えを浸透させることができると思っています。大企業とスタートアップ、両者のリソースをお互いにどう建設的に積み上げるかを対等に考える、その起点として、Plug and Play Shibuya は理想的な場所です。

ニコル:Plug and Play Japanのプログラムを通してこれまで国内外多くのスタートアップと出会われたと思いますが、今後もどんなスタートアップと連携したいと考えていますか?

大塚:グループ全体で見ると、小売、福利厚生代行、フィットネスなど、実施している事業の幅は広いです。一つの事業の製品やサービスに絞らずに、事業領域の拡大や、生産性を強化するスタートアップだと親和性が高いです。特に、デジタル領域やプラットフォームを持っていて、独自にエコシステムを構築しているところですね。例えば、当社はPlug and Play Japanの6月〜9月までのプログラム、Batch 1を通して出会った株式会社GINKANと、彼らの持つグルメSNS「SynchroLife(シンクロライフ)」の実証実験を「東急プラザ銀座」にて実施しました。彼らのように、当社の持っている施設の集客を強化するプラットフォームなどを持っているところだと連携がしやすいです。スタートアップとしては自社サービスや集客効果を試したい、東急としては施設の売り上げをアップしたい、というwin-winな連携ができます。その場所に人が来ること、そこから新たなライフスタイルの創出に繋げていきたいと思っています。

渡邉:あとは、渋谷に関係性を持たせられるスタートアップにも注目しています。渋谷を拠点にしているとか、渋谷という場所を使って実験的に新しいことをやってみたい、とか。一緒に渋谷を盛り上げられるスタートアップとの連携も図っていきたいと考えています。

東急プラザ銀座でグルメSNS「SyncroLife」の実証実験を実施。株式会社GINKANインタビューはこちらをご一読ください!

ニコル:スタートアップとの連携で、大企業として障害になっていることはありますか?また、その改善のために取り組まれていることはなんですか?

大塚:会社として上り調子であるほど、花形事業や一番効率的に売上を伸ばせる既存事業にフォーカスしがちです。オリンピックの2020年まで上昇景気の今だからこそ、好奇心を持ってイノベーション領域に着手することが重要です。東急不動産はこれまで東急ハンズ、フィットネス、ビジネスエアポート、学生向け(キャンパスビレッジ)など色々新しいことを生み出していく「挑戦するDNA」を大事にしてきました。このDNAを呼び起こすため、ナレッジネクストという、グループ社員であれば誰でも参加できるイノベーション起こす風土情勢のためのイベントを実施しています。実際当社が出資や事業提携したスタートアップの社長にピッチしてもらい、苦労したことやイノベーションのために貫き通して来たマインドなど、ベンチャースピリット感じてもらうようにしています。

ニコル:Batch 1 に参加してどのような効果がありましたか?

渡邉:GINKANとのPoCのように、リアルな場を使って新しいことが実施できたのは大きな収穫でした。他にも、途中までPoCの話が進んだ案件はたくさんあり、次に繋がるネットワークができました。

大塚:EXPOで3ヶ月の成果をしっかりと対外的にアピールできたことは非常に良かったです。また、大企業同士で悩みを共有できるコミュニティがあることも有り難いですね。ボトルネックになっている悩みは一緒なんだと感じました。また、VCからのスタートアップに対するメンタリング立ち会わせてもらえたのも勉強になりました。スタートアップに向き合う上でどういう点に注意すべきか、必要なチェックポイントわかりました。

ニコル:今後11月末から次のプログラム、Batch 2 が始まりますが、どんなことを期待しますか?

渡邉:次もPoCできるようなスタートアップに出会いたいですね。当社の強みはスタートアップに対して実験となる場を提供できることです。その場を活用してもらえるようにもっとアピールしていきたいです。施設ではなく、街単位で実証実験をやっていく、そこまで踏み込んでできれば面白いですね。あとは、Plug and Playならではの海外のスタートアップとの連携も今後はしていけたらと思います。

大塚:3ヶ月という限られた期間では、まずは実証実験に至る交渉を完了させること、その後、事業化までの連携に繋げていけたらと思います。当社で場所を準備して、ここで新しいことやりましょう!と、どんどん提案することでスタートアップも興味を持ってくれればと思います。

(左から)

渡邉 聡 / So Watanabe(東急不動産株式会社 都市事業ユニット 事業戦略部 まちづくり共創グループ)

2006年10月東急不動産株式会に入社。入社後は東急不動産キャピタルマネジメント㈱への出向を含め、主に不動産ファンド関連の業務を4年半担当。その後、ビル事業本部に異動し、新規の複合開発事業を中心に7年担当。2018年1月より現職の事業戦略部まちづくり共創グループにて、渋谷を中心としたスタートアップとの共創事業やまちづくり関連事業を担当。

大塚 祐貴 / Yuki Otsuka(東急不動産ホールディングス株式会社 グループ経営企画部 経営戦略グループ)

2007年東急不動産株式会社に入社。リゾート事業部門にて、高級会員制ゴルフ場の開発・運営・販売に従事した後、マーケティング部門に異動し、ホールディングス体制後のグループ経営強化に向けた、CRM戦略や新規事業企画等を担当。今年度より、グループ経営企画部に異動となり、オープンイノベーションを推進。中小企業診断士。

Plug and Playでは、スタートアップとのマッチングや大企業のイノベーション促進を支援する、3ヶ月間のプログラムを実施しています。

プログラムへの参画に関するご質問・ご相談等、ぜひお気軽にご連絡ください!

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