現実とテクノロジーのはざまで(物流編)

トップの写真、よく見てください。ただのトラックではありませんよ……ドライバー、いませんよね?
これは、去年(2016年)にアメリカの実際の高速道路上で行われた実験で、現在はUberの子会社になったOtto(オットー)の自動運転トラックによる最初の配送実験で、コロラド州フォート・コリンズからコロラド・スプリングスまでバドワイザーが5万本無事に運ばれたと話題になりました。詳しくはTechCrunchの記事を参照してください。
ドライバーは高速道路での走行中、運転席を離れて後部座席でいろんな作業をしながら、ちょくちょく運転に問題がないかなどチェックしていたそうですが、高速道路上ではほとんど運転席に座らなかったそうです。すごいですよね、自動運転も高速道路のようなわりとシンプルな運行においては公道で走行させられるレベルになっていることを証明したわけです。
もちろん、昨年はテスラのオートパイロットにおける死亡事故も出たりなど、自動運転領域における世界的な懸念や疑念も各方面から噴出した年でもありました。
また、自動走行車に関してはセキュリティ上の脆弱性も多方面から指摘され、仮にハッキングされるとどうなるのかを実演したこんなショッキングな動画もあります。
そして、直近では冒頭で紹介したOtto(Uber)に関してこんなショッキングなニュースも入ってきています。
思わず「おおぉぉ……」となりましたが、興味がある方は↑の記事を読んでみてください。結構シリアスなやつです。
今回は、実は自動運転のことを話したかったわけではなくて、本題としては先日話題になっていたヤマト運輸の労使交渉の件をはじめとする、昨今の物流業界と加速するシビアな労働環境についてです。
みなさんの中にも日常からAmazonを愛用しているという人は少なくないと思います。簡単に注文でき速攻で配達される。特にAmazon Primeを使っていれば即日宅配されたりしますし、遅くとも翌日にはという状態で、本当に便利ですよね。家から出なくてもほとんどの買い物はAmazonやネットで済ませ、かつ購入したものが非常にタイムリーに届く時代になりました。
一方、そのタイムリー配達の恩恵の裏側で、日々荷物を運ぶ運送業者たちには途方もないプレッシャーと要求が課せられることになりました。ただでさえ過酷な運送業界の労働環境において、AmazonをはじめとするEコマースの増大により配達時間の細かい制約や荷物の小口化(&個数の激増)が進行したため、それらが一気に現場の配送業者・ドライバーたちにのしかかってきているのが現状です。
そうなると、ただでさえ就職において人気業界とはいえない運送業者たちは、ますますその人手を確保することが難しくなります。現在はドライバーの高齢化と人手不足がダブルショックとなって押し寄せているので、今後は経験を積んだ年配ドライバー達は現場から退いていくことも想定して若手をどんどん採用していかなくてはいけないわけですが、上述の理由からそれも簡単ではありません。
ところで、先日会社のアクティビティで、クロネコヤマトの物流ターミナル「羽田クロノゲート」に見学に行く機会がありました。
全然知らなかったんですが、ヤマトグループは同施設を無料で公開していて誰でも見学できるようになっています。1時間半ほどのコースをガイド付きで案内してくれて、普段見るようなことがない施設や設備、ロボットが新鮮でとてもおもしろかったのですが、なにしろ荷物の仕分けをするベルトコンベアがすごいわけです。こんなに細かい作業を迅速に効率的にやってくれているのかと驚愕させられるわけですが、何が言いたいかというと、それでも十分ではないということですね。
上述のとおり、クロノゲートのような施設があったり、仕分け・荷積み・配送などに関しては現状でもかなり効率化が進んでいるようなのですが、現在の荷物の増加や配達速度の高速化には追いついていないということですよね。これが、自分のような素人から見ても「まだまだ改善の余地があるね」という状況であれば、逆に朗報だと思っていたのですが、すでにここまで効率化されている中でとなると、やはり結構な自動化が進まない限りは、あとはもう人海戦術しかない気がしました。
国交相が出したレポートによると、荷物の約20%が再配達になってしまうという結果や、走行距離の約25%は再配達のための走行だという過酷なデータもあり、いかに渋滞や事故を避けて最短ルートを走って営業所まで荷物を運んだとしても、その先のところでこんなに高確率で再配達になったのでは、それまでの効率化も水の泡なわけです。
そういった過酷な環境がある中で、一朝一夕に労働環境の改善が見込めるわけでもなく、かつコンシューマーの期待値(即日や翌日配送、かつ指定時間枠通り)が簡単に下がったりすることもないマーケットにおいて、運送業者たちはますます厳しい戦いを強いられているわけで、冒頭のような自動走行車による配送はかなり期待されているところでもあります。
もちろん、実用化までにはまだ時間がかかるわけですが、一旦は高速道路や幹線道路などにおいては自動化・オートパイロット化するというような段階的な適用はそう遠くなくはじまってくるでしょうから、徐々に長距離運送中においてはドライバーも少し休めたり他の作業ができたりなど、負担を減らすことができる方向に進んでいくとは思います。
と同時に、最寄り営業所から実際の配達先までの細かいところはまだしばらくは人間がやらなければいけない領域でもあり、再配達問題(いわゆるラストワンマイル問題)をどう乗り越えていくかというのは大きな課題ではあるでしょう。宅配ボックスやコンビニ受け取りなど、さまざまな対策も出てきているものの、まだ大幅に改善されたとは耳にしません。この辺のギャップをどうテクノロジーの力で埋めていくかというのは興味深いところです。
ロボットによる倉庫での自動ピッキングからトラックへの搬入、自動走行トラックでの最寄り営業所までの配送、そこからは人間が宅配。そこまでが実現され一般的な光景となるのがいつになるのかわかりませんが、オリンピックの2020年ではまだちょっと難しいだろうなと思っています。
運転席は常に空席でよく、ドライバーは後座席や荷台で他の作業したり仮眠をとっていても良いという社会環境(法律の整備を含め)になるのは、早くても2030年くらいなのかなあという印象です(前倒しになるのに越したことはありませんが)。
いずれにしても、年々過酷さを増している物流業界。なんとか少しずつでもテクノロジーによるテコ入れをしていきたいですよね。

