2019年問題とは?住宅用FITが切れ始める太陽光発電(卒FIT案件)の今後の展望と課題

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7 min readMay 21, 2018

「2019年問題」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?住宅用太陽光発電の10年間の固定価格買取制度(FIT制度)が終わり始めるタイミング、それが2019年なのです。つまり、これまで太陽光発電システムで発電した電気を高値で売電することを保証していた制度がなくなり、余剰電力の売り先や使い方を、それぞれの家庭が考えなくてはならなくなるのです。

本稿では、2019年問題とは何か、2019年問題が家庭にもたらす電気との付き合い方の変化についてご紹介します。

固定価格買取制度(FIT制度)とは?

まず、2019年問題の前提となる固定価格買取制度、通称FIT(フィット)制度についておさらいしましょう。FIT制度とは、経済産業省・資源エネルギー庁が定めているもので、再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、国が定める固定価格で、一定の期間、電力会社に買取を義務付ける制度です。

FIT制度によって、住宅含む太陽光発電システムのオーナーは、市場価格と比べてとても高い価格で、一定の期間、継続して発電した電気を電力会社に売ることができます。たとえば、2009年に発電を開始した住宅用太陽光発電は、10年間、42円/kWh(税込)での売電が継続します。ちなみに、2018年5月の卸売電力取引所(JEPX)の日中の電力単価は9円/kWh程度で売買されていますので、いかにFIT制度が高い金額での売電を保証していたかが分かります。

なお、買い取ってもらえる売電単価は毎年見直されており、単価は毎年下がる傾向にあります。以前は非常に高額だった太陽光発電システムですが、その価格は年々下がっていますので、それに応じて売電単価も下がっているということですね。

FIT制度(の前身となる太陽光発電余剰電力買取制度)は2009年からスタートしたので、2019年がちょうど10年間の固定価格買取制度が終わり始めるタイミングなのです。

高まる再エネ賦課金

このFIT制度によって、家庭のみならずメガソーラーなど産業用太陽光発電システムを含めて、多くの太陽光発電システムの設置が進みました。FIT制度によって、購入の金銭的ハードルが下がり、また太陽光発電が利回りの良い投資対象と見なされたことが背景にあります。

しかし、FIT制度は良いことばかりではありません。実は、FIT制度の原資となるお金は、電力買取を行う電力会社ではなく、消費者が負担する仕組みになっているのです。

これは、再エネ賦課金(ふかきん)、正しくは再生可能エネルギー発電促進賦課金という名目で、政府の関連機関が1家庭ずつよりお金を少しずつ集めて、太陽光発電システムのオーナーに分配しているのです。

再エネ賦課金がどれくらいの金額なのかは、電力会社から送られてくる検針票に記載されているので、ぜひ目を通してみましょう。再エネ賦課金の単価の推移は図1の通りです。

図1:再エネ賦課金の単価と金額推移

ご覧のように、再エネ賦課金の単価は年々上昇しています。これは、太陽光発電システムの導入容量に比例して、単価が決定されるためです。

また、消費者目線で見ると、再エネ賦課金の支払いは、電気の購入金額に比例しています。たとえば、2017年に400kWh/月 電気を使用した家庭では、400kWh/月×2.64円/kWh=1,056円/月 の再エネ賦課金を支払ったことになります。なお、2018年の単価は2.90円/kWhになることが発表されました。

このままの傾向が続くと、2030円には再エネ賦課金の月々の支払いが、1,200円/kWh程度になることが予想されます。年間では14,400円ですから、大変な金額ですね…!ドイツでは、一般的な家庭で再エネ賦課金の支払い額が2,000円/月 程度になっていることから、日本でも近い将来同じくらいの金額になってしまうかもしれません。

2019年問題とは?

さて、いよいよ2019年問題について、具体的にお伝えしていきます。2019年問題とは、これまで高値で売電できていた余剰電力が買い取られなくなってしまうことです。資源エネルギー庁によれば、これまで高値で買取を行っていた送配電事業者は、買取の義務がなくなり、一時的に無償で引き受ける方針が示されています。

2019年度(2020年3月末まで)にFIT制度が終わる案件、すなわち卒FIT案件がどのくらい発生するのかを示したグラフが、下記図2です。

図2:卒FIT家庭用太陽光発電システムの件数と市場規模

卒FIT案件は、2019年に55.6万件発生し、その後毎年20万件ほど増えていく見込みです。2019年により多くの案件が発生する背景は、FIT制度の前身となる制度(RPS制度)の期間に設置された太陽光発電システム案件も対象となるためです。

現時点(2018年5月21日)では、詳細な制度は定まっていませんが、今後の余剰電力の買い手として、①小売電気事業者 ②アグリゲーター の存在が示されています。アグリゲーターとは、各地の卒FIT案件の買取を取りまとめて、その電気を小売電気事業者に販売(卸売)する役割をもつプレーヤーのことを指します。

電力会社としては、電気の需要が大きい日中の電力小売に使える電源は欲しいものの、従来のような高値での買取ではなく、各社の方針によって異なりますが、買取単価は、6〜10円/kWh 程度に落ち着くのではないかと言われています。これは、JEPXの日中の電力単価が1つのベンチマークになっていることが想像できます。

2019年問題がもたらす電気との新しい関わり方

2019年問題は、小売電気事業者やアグリゲーターへの売電先の変更というだけでなく、自家消費の促進の契機として注目を集めています。余剰売電単価が7〜10円/kWhだとしても、電力会社からの買電単価は26円/kWh程度であり、いかに電力会社からの電力購入量を減らすか?という点で、自家消費を増加する施策が期待されているのです。

たとえば、日中の余剰電力を、蓄電池や電気自動車(EV)に充電し、太陽光発電システムが発電しない夜間に放電することで、電気の購入量を大幅に減らすことが可能です。また、電力会社からの電気の購入量が減ると、再エネ賦課金も減りますので、自家消費の割合を増やすことで電気料金をさらに減らすことに寄与します。

また、アメリカではメジャーになりつつある、デマンドレスポンスというサービスの普及も注目を集めています。電気の市場価格は一定ではなく、需要と供給のバランスによって、単価が上がったり下がったりします。多くの人が冷房などで多くの電気を消費する真夏の日中や、暖房の需要が大きい真冬日などは、電気の市場価格は、通常の数倍にも上昇します。こういった需要が大きなときに、需要を抑制することを呼びかけるサービスがデマンドレスポンスです。消費者は、需要抑制の指示が届いた際に、節電をすると、お小遣いのようなポイントが付与されるというものです。

シェアでんきブログでは、卒FIT後の太陽光発電の未来を、できるだけ分かりやすくご紹介していきます。

図1:資源エネルギー庁、経済産業省の資料をもとに当社作成

図2:JEPA、経済産業省の資料をもとに当社作成。市場規模の計算式:卒FIT家庭用PV件数 × 4kW × 5,000kWh ×10.86円/kWh

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