オルタナティブフードとしてのダチョウの可能性

Akito Harashima
Presearch Project
Published in
10 min readJul 7, 2019

食のストライクゾーンを広げる。これを目標にダチョウについて研究することにしました。そこで、まずはダチョウを見たいと思い、大学の友人と美里オーストリッチファームを訪問しました。

美里オーストリッチファームは埼玉県松久駅から徒歩約20分のところにあります。到着してまず見えたのは「ダチョウの卵売ってます」の看板でした!

看板

道路脇に目立つ大きさと色の看板で道を通れば思わず入ってしまいそうな感じでした。

今回の訪問では美里オーストリッチファームの見学をさせていただき、美里オーストリッチファーム農場長の山田謙司さんに経営に関することや資源としてのダチョウの可能性についてのお話を伺いました。

美里オーストリッチファームの始まりはとてもおもしろい理由でした。

美里オーストリッチファームではコンクリート会社の事業の一部でダチョウを飼育しているそうです。現在ダチョウファームがある場所はコンクリート工場を建てる予定の土地でした。しかしバブルが崩壊したため建設が中止になり空き地になってしまい、草の手入れをするのが大変であるため解決策としてダチョウに草を食べてもらおうと考えたのが始まりでした。しかし予想に反してダチョウは草を食べてくれなかったため飼育して販売することにしたそうです。

美里オーストリッチファームだけでなく日本のダチョウビジネスは土木関係の会社が経営しているところが多いそうです。輸送や土地などをうまく活用できるということが理由だそうです。ある企業では本業は造園業ですが、それがダチョウを飼育する場所づくりに利用できたという話もあります。そして多くの企業に共通していたことは、未使用の広い土地を持っていることからダチョウの飼育を始めたということです。土木関係の企業はもともと広い土地を持っているため、参入しやすいということです。その他にも、神戸にあるダチョウファームは販売できないもやしを食べてもらうためにダチョウを飼育し始めたようです。育ちすぎたもやしやうまく育たなかったもやしは販売できないため、処理するのに費用がかかりますが、それをダチョウに食べてもらうことで費用を削減するという狙いがあったようです。ダチョウビジネスと土木に深い繋がりがあるというのはとても驚きました!訪問したメンバーは誰も知りませんでした。

美里オーストリッチファームにはかわいいダチョウがたくさんいました!

こちらを見るダチョウ
好奇心のつよいダチョウ

近くで見ると目が大きくて改めてかわいいと感じました。

時々私達に向かって求愛ダンスをしてくれました。珍しいことではないそうで人間に求愛ダンスはよくするそうです。ダチョウの求愛ダンスは、座って首を左右振り、羽を激しく動かします。動きが想像以上の激しさで、かわいい小鳥のダンスなんて甘いものではありません。熱のこもったダンスです。そしてダチョウは好奇心旺盛で、リュックをつついたり人間にとても興味を持っていました。

ダチョウは鳥類の中で最大で足が速いことで知られています。そしてダチョウは頭が悪いことでも有名だそうです。私は知りませんでした。見学中にダチョウがよく鉄の棒をつついていたので理由を聞いてみました。その理由はダチョウは自分がつついた棒から音がなるということが理解できず何度もつつき続けているということでした。身体大きさの割にダチョウの頭脳レベルはネズミと同じぐらいだそうです。こんなダチョウの魅力にどんどん惹かれてしまいました!

ダチョウは頭が悪いですが強いところもあります。それはキック力です!蹴られれば骨折やもっとひどい怪我をすることがあるそうで、ダチョウに触れるときは防具をつけているそうです。育てるのは命がけです。

途中でダチョウに餌やりをさせていただきました。

ダチョウの餌やり

あげているのは小松菜です。小松菜は近くの農家さんからもらっているそうです。毎日餌をあげてもダチョウは誰がくれたか覚えることができないそうです。悲しいです…。

ダチョウファームを見学した後はダチョウの製品、経営、今後の可能性について直売所の中でお話を伺いました。

直売所の中やその入り口にはダチョウの卵の殻で作ったオシャレなグッズがたくさん置いてありました。

ダチョウの卵の殻で作ったインテリア
ダチョウの卵の殻で作った植木鉢

現在のダチョウビジネスの収入源は主に食材、革製品、化粧品だそうです。

食材としてダチョウはお肉と卵になります。今回訪問した後、美里オーストリッチファームのオンラインストアでダチョウのソーセージを購入しました。

ダチョウのソーセージ

とても美味しい!高級感のある味でディナーの一品にできそうでした。ソーセージだけでなく生ハム、モモ肉、フィレ肉などもありました。

そして卵は美里オーストリッチファームのツイッターで卵プレゼント企画をしていたので参加したところ、見事当選し卵をいただくことができました。いただいた卵は目玉焼きにして食べました!他の卵と変わらず美味しいです!

目玉焼き

ダチョウの卵は珍しく、とても人気で盛り上がりました。卵の殻は硬いため、今回はドライバーで叩いて割りました。何回も叩いて穴を開けることができました。美里オーストリッチファームでは卵に乗るという体験をさせていただきました。

ダチョウの卵に乗ってみた

体重60キロ後半の私が乗っても割れませんでした。山田さんが言うには80キロでも耐えられるとのことでした。卵の硬さには差があり、乗れない卵もあるそうなので気をつけてください。

そしてダチョウの革です。

ダチョウの革
ダチョウの革

ダチョウの革を専門に扱う業者はなく他の革を扱う業者に提供しているそうです。それぞれの業者によって革の触り心地が違いました。1羽から2枚しか取れないスネの革もありました。

ダチョウのスネの革

そして化粧品はダチョウの油から作れるそうです。ダチョウから油が取れるなんて知りませんでした。手に少しつけさせていただきましたがとてもよく肌になじみました。帰ってすぐ母に買うように勧めました。

ダチョウの油から作った化粧品

そして現在の経営について。ダチョウのビジネスは日本に来てまだ20年ほどしか経っていないため経営が上手くいっているところは少ないそうです。

その理由の1つは、そもそもダチョウの生息地は日本ではなく環境が合わないため、高い光熱費をかけても死んでしまうダチョウが多いということです。さらにダチョウの飼育方法は牛や豚のように情報を取りまとめる協会がまだなく、正しい飼育方法がわからず自動化もできていないためコストがかかってしまうそうです。そして1番大変だと感じた理由は、ダチョウの流通は日本ではまだ整っていないそうで自分で1から流通を作っていかなくてはならないということです。赤字で撤退してしまうところも多いそうです。生産量が少なく流通が整っていないため、製品の値段が高くなってしまうようです。

しかし食材と化粧品は売れているそうです。ダチョウ肉の栄養素は牛や豚に劣らずとても良いです。

ダチョウ肉の栄養素(美里オーストリッチファームHPより)

低カロリー低脂肪で高タンパク高鉄分であるため、アスリートにとってダチョウ肉はとても良い食材です。たとえば、ボクシング選手でダチョウ料理を食べている人がいるそうです。

化粧品は広告を全くやったことがないそうですが口コミで広まり、売れているそうです。ダチョウの油は融点が人間の体温に近く、塗ってすぐなじむということを強みにしています。化粧品はとても期待できそうです。

課題があるのは革製品です。ダチョウの革を使った製品は値段が高くなってしまいます。ダチョウの革は製品にすると自然に穴が空き、オシャレで高級感がでます。しかし、若者は高いお金を出すならダチョウの革を使わない、ブランド物を買いますし、ダチョウの革製品の価値を知っている人たちは、すでにダチョウの革を使った製品を持っている人が多く、したがってあまり売れないそうです。

そして訪問したメンバーが調べたことですがダチョウから取れる抗体はとても強いということを知りました。抗体は卵から取ることができ、その抗体を使った製品がいくつか販売されています。ダチョウマスクというもので、ダチョウの抗体がインフルエンザなどの菌をほとんどブロックするという特徴を生かしたマスクです。ダチョウの卵は大きいため取れる抗体の質に差が出ないということも強みになっています。

今回の訪問でダチョウビジネスは課題が多いと感じましたが今後の可能性はとても期待できそうだと感じました。飼育方法が確立され生産量が増えれば、ダチョウビジネスに関わる人が増え、流通が整います。そうなれば価格が高いという問題点が解決され、ダチョウの製品は売れていくのではないかと思います。ダチョウについての知識が少なかったですが多くのことを教えていただきダチョウが好きになりました!いつかダチョウが食材、革製品、化粧品、抗体となり世界を救ってくれる日が来るのでしょうか。

美里オーストリッチファームの皆様お忙しい中お話を聞かせていただきありがとうございました。

今後は、ダチョウを含めた、これまでの食として見られていなかった食材の可能性についてフォローしてまいりますので、もしご協力できることがあればぜひご連絡ください。

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