次のプラットフォームは、すでに手の中に

TwitterやLinkedInといった巨大なプラットフォームでプロダクトマネージャーを務め、現在はVCにとして活動する Josh Elman がMediumに投稿したポスト『The Next Great Platform is the One That We Already Have』を許可をとって翻訳させていただいた。

ちなみにかつて氏の『A Product Manager’s Job』という記事も翻訳させてもらっており、本記事は2つ目となる(翻訳記事はこちら。)まずはぜひ内容をご覧ください。

次のプラットフォームは、すでに手の中に

『モバイルは終わった』

こう耳にすることが多くなった。事実、アプリ・ブームは終わりを迎えつつある。

平均的なアメリカ人は月に”0"ダウンロードの時代(正確には 1.5 ダウンロード/月だが…)を迎え、『next big thing』について考えだす時が来たのである。

もちろん、誰もマジでモバイルが『終わった』なんて考えちゃいない。代わりに本当に大きな機会を手にしつつあるだけだ。

Facebook, Snapchat, Instagram, Whatsapp, WeChat, Twitterを除いて、これ以外のアプリをダウンロードする人はもういないし、『何か新しい物』をに触ってもらう機会が消えつつある。遅すぎたのだ。これからわざわざモバイルでデカいことにトライするのは微妙だ。代わりに、次に来る大きな波を見つけ出し、それに乗ろう。

今ではすべての人が『次に来るプラットフォームは何か?』について議論をしている。AR(拡張現実)か?VRか?ドローンか?ロボットか?それともAI(人工知能)なのか?

私の意見を言おう。実はこの『Aが終わった議論』は以前にもあった。そしてこれからも繰り返すだろう。2002−2004年に時を遡る。当時我々は『コンシューマー向けのインターネットははマジで使えない』と口をそろえていた。誰もコンシューマー向けの企業なんてはじめようとはしなかった。

  • Yahoo!やAOLは支配的なポータルで、
  • AmazonはEコマースの世界で苦情を積み重ね、
  • Googleは検索エンジンのシェアをうまく広げつつあった。

『ドットコムバブル』で立ち上がった本当に酷い企業たちは当然のように嫌われており、そこには何か新しいことを始める余地があるようには全然感じられなかったのだ。我々は『Webの次』を待望していた時期だった。

しかしこの時、実は『Web2.0』はまだ到来していなかったのだ。その後2~3年の間に、今日のソーシャル・ジャイアンツたちがスタートしている。彼らは新しいテクノロジー・ブレイクスルーに頼っていたわけではない。しかし、成功した。Friendster、LinkdIn, MySpace, Youtube, そしてFacebook。彼らはみな、ドットコムブームの時の企業と同じように、同一の基本的なプラットフォームから出てきたのだ。

彼らはすべて『User Generated Content』であった((* ユーザーがコンテンツを投稿するスタイルのwebサービス))。そこには多くのユーザーがオンライン上で参加した、という点を除いて、プラットフォームの大規模な変化など無かった。ソーシャル・シフトや心理的なシフトに後押しされてユーザーのシフトが起こったのだ。MySpaceやLinkedIn, Friendsterといったサイトはこれまでどのサイトも捉えることのなかった新しく、根幹的なニーズを捉え、垂直に立ち上がった。

確かに2000年初頭にはいくつかの新しいテクノロジーが散見されていた。AJAX (Asynchronous JavaScript And XML) はよりインタラクティブでレスポンシブルなユーザー体験を可能にした。多くのスタートアップ企業がユーザー体験を改善するためにAJAXを導入し古い競合との差別化を図った。The LAMP stackは高価なHP社のサーバーやOracleのデータベースと比較し、スケーラブルなwebサイトの構築にかかるコストを劇的に削減する技術だった。

しかしAJAXもLAMPも既存のWebテクノロジーに対する付加価値という意味では何もなかった。それらは新たなプラットフォームではなく、『改善策』に過ぎなかったのである。このため今日のコンシューマーモバイル界隈や、『ポケモンGO』のような爆速の現象を目にすると、『革新的な技術やプラットフォームを採用することが成功の必要条件ではない』と確信するのである。

人々はポケモンGOを「拡張現実だ」というが、その実はただカメラディスプレイの上にイメージを重ねているだけだ。iOSの早期のアプリではこの描写は禁じられていたが、Apple社がこの制限を取り払ったためにポケモンGOは実現した。これは技術的な調整であり、改善による『進歩』ではあるが、決して技術的な『躍進』ではない。長い間このような問題に取り組み、やりきった『チーム』こそが素晴らしいのである。

確かに彼らは『ポケモン』という愛されたブランドを利用することで大きな注目を集めることができた。しかし、ユニークで、違いがあり、そして楽しいプロダクトを構築できたからこそ、ポケモンというブランドの強さ以上に成功したのだ。こんなにも多くの人々がスマホ片手にうろうろし、そして共通のトピック(ポケモンGO)について話し合う姿を見たことがない。

Web2.0時代に起こったこと、それは幾つかの企業が以下の3点に成功したことだ。

  • 新たな体験
  • 新たなユーザー参加
  • これまでになかった方法で人々をネットワークした

現在、我々はモバイル・ワールドに生きている。私はまだ新たな体験を生み出し、人々をつなげる機会はここに残されていると考える。一体どんな体験がモバイルに残されているだろうか?未だ人々がモバイルアプリの世界で出会ったことのないコア・ニーズとはどんなものだろうか?

AppAnnieによると、世界のアプリマーケットは成長し続け、2020年までに$100Bの売上が見込まれている。そう、モバイルは”死”とは遠いところにいる。

アプリのストアトップ10に入るブレークしたアプリ(非ゲーム)を見てみると、何か特別な傾向が見えるかもしれない。2016年に少なくとも一週間以上、App Storeトップ5を飾ったアプリは相当な数ある。これらのアプリは少なくともランクイン中の期間だけで百万以上ダウンロードを稼ぎ出しているはずだ。

これらのアプリはユーザーへ対し、スマホの中で”something new”を実行させている。アプリはウイルスのように広く広がり、そして急速に成長する。これらのアプリが成長し未来のプラットフォームへと昇華するかどうかは依然疑問ではあるが、人々がアプリをダウンロードし、そのアプリを試そうとすることに関心を示している、という事実を何ら否定することはない。アプリを強く突き刺すことは一つのイシューだが、人々にまずアプリを試してもらうことはそれに先んじて必須な1st stepだ。ここにいくつかの”クイック・ヒット”の例を並べてみた。いずれも2016年に数週間のピークを経験したものである。

  • MSQRD: 新たな『レンズ』を使ってファニーな画像を作成するツール(今年の初期にFacebookが買収する前はSnapchatより優れたレンズとして急速に成長していた)
  • Miitomo: アバターを作成し、ユーザー同士のコミュニケーションが楽しめるアプリ(Nintendoによるプロモーションによってグロース)
  • HouseParty: 最大6人のグループ・ビデオチャットが簡単にできるアプリ(スケールのためのissueがセットされるまで、バイラルで急速に成長)
  • Kiwi: 匿名のQ&Aアプリ(バイラルとインフルエンサープロモーションにより、ティーンエイジャーの間で急速に成長)
  • Prisma: 写真からまるでステンドグラスのような美しい画像を創りだすアプリ(Instagram, Facebook, Twitterでのシェアからグロース)
  • Bitmoji: オリジナルのemojiを作れるアプリ(数年間かけて成長、Snapchatに買収・統合された)

一般的にこれらのアプリは次の2つのうち1つを実行するアプリである。

1. ユーザー同士がより楽しく、感情的なコミュニケーションができるようなアートやスタンプ、アバターを作成できる機能を提供し、より視覚的な自己表現を可能にするもの
2. 新たな方法で人々を繋げ、コミュニケーションできるようにするもの

この2つは普遍的な欲求をはらんでいる。ユーザーがこういった欲求を満たすアプリをダウンロードしたり、探すことへ関心を示していることはすなわち、大企業が解けない課題がそこに存在していることの証左でもある。裏返すと、よりユーザーが頻繁に・長期に渡って使用するものを構築するには多くの仕事を必要とする。この大企業とネットワークの時代にそんなことが可能なのか?というのも自然な問ではあるが。

今年の早期に私が書いたように、現在提供されているアプリが人々のニーズを正しく捉えることができていないような領域もいくつかある。特にグループの人々がライブで会話をするような領域への良いソリューションはまだ無い。Slackのもつシンプルさや楽しさがあり、仕事外で使うことに最適化されたような”何か”が必要だ。かつてAOLが提供していたの関心グループ探索機能や、趣味のグループが持っていたような気軽さがあると嬉しい。また我々が日々撮影してはアップロードしている膨大な画像をうまくマネージできるツールも待望している。

しかし、これらのアイデアはスタートにすぎない。実際にはモバイルが満たすことのできていない、実現可能な数百ものコアニーズが依然として残っている。

私は魔法のような新たな体験を創りだす、新しい技術プラットフォームを待つ必要は無いと考えている。VRやAR、その他の技術が立ち上がる必要はない。次の魔法はモバイルで起きるはずだ。ポケモンGOはこれまでと違い、新しく、そして楽しい体験がモバイルに残っていることを教えてくれるビーコンである。ここ数年の間に、既存のプラットフォームの上で創られている幾つかの発明が、次の革命へと昇華するだろう。もしあなたがそんな何かを創っているようなら、いつでも私に教えてくれ!(投資したい)

プラットフォーマーの先見 ~訳者より~

Josh氏の主張を端的に表すと、

  • みんな、次の大きな(GoogleやFacebook級の)プラットフォーム波は新しい技術によって生まれるだろう、とそわそわしているが
  • 実際は今あるモバイルアプリや既存の技術の中から生まれるだろう。実際にそれはもう世に出ている可能性も高い。

ということだろう。

日本でも機械学習やAIなどはトレンドワードとなり、次の『金のなる木』として脚光を浴び始めているが、実際にプロダクトを創る身からすると懐疑的であり、Josh氏の主張が非常に腑に落ちるものだった。技術はやはり手段に過ぎないのだ。Googleが投資するAlphaGoもR&Dとしての側面が圧倒的に強く、機械学習による最強の碁打ちマシーンが市場で必要とされ、普及する未来は見えない。

スタートアップは『新しい技術』でニッチマーケットを支配し勝ち上がるのではない。『新しいアイデア』を『既存の技術の組み合わせ』で『最速に実行』し『大きなリプレイス』を実現できた時にのみ勝ち上がる。その中でも『プラットフォーム』へと昇格できるサービスは世界でも5年に1つといったところだ。

Twitter, LinkedIn, Facebook Connectといった名実ともにプラットフォームと呼べるプロダクトを現場で”創って”きたJosh氏。待望の日本発のプラットフォーマーを目指すならば、目を向けるべきはファイナンス主体のVCの先見ではなく、彼のようなプラットフォーマー・オリジンな人間の目、だろう。