ステークホルダーは敵だと思っていたあの頃・・・

Erika Ito
Product Run
Published in
Nov 19, 2021

2021年11月4日に開催されたProduct Run meetupで発表したトークです。当日使用したスライドと、口頭でお話しした内容を交互に紹介します😊

こんにちは!Tanzu Labsでプロダクトデザイナーをしている、伊藤えりかです。今日は過去の失敗と言うことで、今はどう変化したか?も含めて、「ステークホルダーは敵だと思っていた、あの頃・・・」をシェアしたいと思います。

タイトルで「ステークホルダー」という言葉を使いましたが、上司?決裁者?クライアント?とか、今皆さんの中で色々な役割の人が頭の中で浮かんでいるかな?と思います。

この発表では、みんな丸っとまとめて「ステークホルダー」というイメージでお話ししていきます。

じゃあ、あの頃の私がこの人たちに対してどんなイメージを持っていたかと言うと、こんな感じでした。左の勇者的なのが私で、右のこわーいドラゴンがステークホルダーです。見ての通り、私は戦う人だし、ステークホルダーは「ボス」「敵キャラ」と言う立ち位置で倒していくものだと思っていました。二者の間にはいろんな障壁もあるし、相手によってレベルや繰り出す技が違うし、、と言う感じで、ゲーム感覚です。

日々、デザイナーとしての仕事はどういう風に進めていたか?と言うと、「倒すか倒されるか!」と言うプレッシャーを感じながらデザインをしていました。提案中はアドレナリンが出まくりの戦闘モードで、発言も「相手の隙を見つけて攻撃を仕掛けていく」ようなイメージでした。
・・・そうすると結果は「勝つか負けるか」なので、提案が通らなかった時は「負けたぁ〜」とすごく落ち込んだり、それまでの仕事が否定されたような気持ちになりました。また、「この提案を理解できないなんて、ひどいなあ」などと考えたり、相手を下げることでプライドを守るようなこともしていました。

このマインドだと、色々なところでネガティブな影響があるんですが、特にデザイナーとして致命的だったことは・・・

「デザインへのフィードバックが怖い、、、」と思ってしまっていたことでした。

なんでそんな「敵 or 味方」思考になっていたか?振り返ってみました。80%は、当時の私の未熟さ由縁です。

残りは何か?と考えると、当時の「働き方」とか「仕事の範囲」という環境の影響も多少はあったかな?と思います。どういうことか、というと・・・

あの頃は、私にとっての仕事のゴールは「誰かの承認を得ること」でした。視野も狭かったな〜と思います。

少しコンテキストのために私の経歴を紹介すると、大学を卒業して入った会社では、グラフィックデザインをメインでやっていました。アシスタントレベルなんですけど、パッケージのデザインなどが多かったです。

そこから転職して、次はWebやUIメインの仕事もやりました。どの仕事も、ポジション的には制作会社とかいわゆるウォータフォール型の組織が多かったです。仕事の流れとしては、パッケージデザインもウォーターフォール型のソフトウェア開発も流れはほとんど同じです。

まずは誰かが要件定義をします。これはアイスのパッケージだったら、クライアントである製菓会社の担当者だし、自社サービスだったら、プロダクトオーナーとかディレクターでした。

ある程度アイディアが固まったタイミングで、私がデザイナーとして入って、デザインして→提案して→承認を貰います。その後はグラフィックだったら印刷会社に入稿ファイルを渡すし、ソフトだったらエンジニアにデザインファイルを渡します。そして、製造・販売やリリース、、とその後も流れは続いていきます。

その中で、私が関われる範囲はスライドの青いところくらいでした。承認が降りたら、私の出番はほぼほぼ終わりなので、その承認を取れるかどうか?が大きなハードルで、かつ、目指すべきゴールでした。こんな流れの中だったので、「承認は勝ち取るもの」と言うマインドでした。

本当だったら、リリース後の成果とか、アイスの売り上げ、といったことまで興味を持てたらよかったのですが、未熟だったのもあってそこまで視野は広く持てていなかったなと思います。

そんなガチガチな流れの中、何年もやってきたのですが、転機がやってきます。

手前味噌なんですけど・・・(笑)それが、Pivotalへの入社でした!

まだまだ経験が浅いタイミングで入ったのもあって、「ステークホルダーは敵」マインドセットはPivotal入社後もしばらく引きずっていました。なので、ステークホルダーへのシェア会的なものがある時には、チームのメンバーに「明日は決戦だね!」とか言っちゃってました。

そんなある時、チームのメンバーが「別に戦っているわけではないんだけどね〜」とポロッと言いました。その時、その人としては、「ちょっとした違和感が口から出た」くらいの言い方だったと思うのですが、私としては衝撃でした。

それは、目から鱗という言葉が合っているかもしれません。なぜかすごく「ハッ」としたのを今でもよく覚えています。

その一言が転機になったとはいえ、すぐに考え方の癖は抜けなかったのですが、ちょっとずつ気をつけるようにして、今では考え方が大きく変わりました。

その後は「ステークホルダーも、同じゴールを目指す仲間だ」という風に考えられるようになってきました。

こうなってからは、デザイナーとして、とても働きやすくなってきたなーと思います。

具体的には、デザインへのフィードバックもゴールに近づくための擦り合わせだと捉えられるようになったので、フィードバックを建設的に受け入れられるようになりました。

「ゴール」と言ってもプロジェクトによって色々ではあるんですが、根底には「ユーザーにとって良いものを作る」とか「ビジネス的に価値のあるものを作る」といったところを目指すことがほとんどです。

それを頭に置いて聞くと、どんなフィードバックでも、スライドにあるようなカテゴリーに当てはめて、冷静に受け取れるようになってきました。

なので、変なプレッシャーとか、無駄に戦闘モードで消耗する、ということがどんどん減って、「あ、今この視点もらえてよかったな〜」とか思えるようになりました。

デザインレビュー以外にも、ステークホルダーとの関わり方は変わってきました。今では「一緒の仲間です」という雰囲気を自分の方からも出していくように、3つのことを心掛けています。

まずは、プロジェクトが始まる時に「丁寧にゴールの認識を合わせる」ようにしています。

次に、場合によっては「デザイン・開発過程に招待する」ようにもしています。実際は忙しくて参加できない人も多いのですが、いつでも歓迎だよ!と言う雰囲気があるだけで安心するステークホルダーもいます。

最後に、話をする時には「一緒に成功させましょう!」と言う姿勢で関わるようにしていて、言葉遣いにも気をつけています。できるだけ相手 vs 私という関係性がニュアンスとして出てしまわないように、「私たち」という主語を意識したり、「一緒に」といった意味の言葉を散りばめて、同じ視点からものを見れるようにしています。

それでも、私とステークホルダーは、経験も立場も違うので、もちろん意見が食い違うことはあります。その時には、この3点を意識して対話をします。

一つは相手の意見をよく聞き、理解に徹します。

二つ目は、こちらから説得するのではなく、選択肢の可能性を探っていくような話し方をします。

三つ目は、どうするべきか?を伝えるのではなく、どうしたいか?を一緒に考えてもらうようにします。

Tanzu Labsではクライアントと一緒に開発を進めるとはいえ、外部のコンサルティングという立場でもあるので、この3つにはすごく気をつけています。

とは言っても、私自身がそう見えるように意識はしているんですけど、たまーに「自分は相手の言いなりになっているだけなのでは・・・?」と不安になることもあります。

特に、私は話し方や振る舞いもゆるっとしたインターフェイスなので、外から見ても、譲歩しすぎているように見えることもあるみたいです。(笑)

最近は強めにビシッと言えるようになったほうが良いのか?とか悩んだりもしていたのですが、VMwareのメンターからすごくいい言葉を貰いました。

これはVMwareのメンターが言ってくれたことです。

言い方が強いか弱いか?とか、結果私の意見が通っているように見えるかどうか?はそんなに大事じゃないんだな〜と再確認しました。

これを軸に持って、相手を尊重しながら、自分のスタイルでステークホルダーと関わっていくという方法を今でもチャレンジ中です。

最後に、ステークホルダーやチームメンバーとのコミュニケーションや関係作りで悩んだ時にとても参考になった本を3冊紹介します。

以上、トーク内容でした!自分の失敗談ということで恥ずかしい気持ちがありつつも、恥を捨てて発表しました(笑)なにか参考になることがあれば嬉しいです。

感想や質問などあれば、気軽にコメントを残したり、Linkedinメッセージなどでご連絡ください😊

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Erika Ito
Product Run

Product Designer at VMware Tanzu Labs (former Pivotal Labs) in Tokyo. Ex Medium Japan translator. | デザインに関すること、祖父の戦争体験記、個人的なことなど幅広く書いています😊