Pivotalでのダイバーシティとインクルージョンの取り組みを通して学んだこと

Erika Ito
Product Run
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10 min readJul 11, 2017

多様性を意味する「ダイバーシティ」と内包(誰も取り残さないこと)を意味する「インクルージョン」。この2つについて、どんなイメージを持っていますか?また、あなたの勤め先ではどんな取り組みが行われていますか?

私がPivotalに入社してから1年半が経ちました。これまでいい意味で色々なことに驚いてきましたが(ほぼ全員18:00に退社するとか)、ダイバーシティとインクルージョンへの真剣度にも驚かされました。
社内で定期的に行われるワークショップやイベントに参加することで、まず自分が無意識に先入観を持って人と接していた可能性に気づかされ、以前よりも自分の言動に気をつけるようになりました。

こうした取り組みを通して、私自身、会社という場所は「安心して過ごせる場所なのだ」と思えるようになりました。このようにダイバーシティとインクルージョンへの理解を深めていくことで、とても働きやすくなったと感じています。そこで、こうした理解が「いろんな会社に広がってほしい・・!」と思ったので、今年に入って行われた取り組みを紹介します。参考になると嬉しいです。

0. キックオフ:東京オフィスの問題をみんなで出し合う

東京オフィスでは今年の取り組みの方向性を決めるために、まずは意見交換をする時間が設定されました。この場では、「女性差別や年齢差別が心配」「部署間に壁を感じる」「ピンポンの試合が激しすぎて仲間に入れない」など色々な話がでました。さらにその場で、やってみたいワークショップのアイディア等を出し合い、月替わりでテーマを決めるファシリテーターも決めました。

このようにファシリテーションを交代で行うのはすごく良い仕組みだな、と感じています。それぞれの人が気づいている問題点は様々なので、毎月違う角度から問題を捉える良い機会になっています。ちなみに私は7月のファシリテーターで、テーマを「Pivotalの取り組みを振り返る&社外に紹介する」にしてこの記事を書くことにしました☺️

1. ワークショップ:無意識バイアスについて学ぶ

Googleで行われた「無意識バイアス」に関する講義のビデオを見ました。どうして無意識なバイアスがかかってしまうのかが分かりやすく説明されていて、さらに自分がどんなバイアスを持っている可能性があるのかを体験する潜在連合テストと呼ばれるものを行いました。ビデオの詳細はこちら(Gigazineの記事です)。

個人的に印象に残ったのは、「グループの少数派の人が意見を言うことが良い影響をもたらすのではなく、少数派の人がいることで多数派の中で生まれる同調意見を防ぐ効果もある」という部分でした。少数派の人だけが頑張ってしんどくなるのではとか思ったりしていたのですが、違うのですねー。

潜在連合テスト

2. ワークショップ:匿名のレポートを読み、社内の課題を共有する

社内で匿名で報告された、ダイバーシティとインクルージョンに関して会社に寄せられた意見をまとめた匿名のレポートを全員で読み、話し合いをしました。20以上の体験談を、参加者が1人1個ずつ音読します。内容は多岐に渡り、「容姿について色々な質問をされて疲れる」というものや、「男性の同僚と比べて、女性である私の意見が求められる機会が少ない」、「前職で自分の職種は他の職種に比べて下に見られている気がしていたが、Pivotalに入ってからは平等に扱われて嬉しい」など様々なものがありました。
これがとても効果的だと思ったのは、全てのレポートが一人称で詳細に書かれているので、その人がどんな気持ちだったかを感じることができるところです(誰に起こった出来事かは分からないように少しだけ編集してあるものもあるようです)。特に、好ましくない出来事を疑似体験するような感覚で、自分もそれまで何気なく誰かを嫌な思いをさせていたかもしれない、とハッしたものもありました。

また、自分が「嫌な思いをした」と感じることに非はない、ということも強調されていたように思います。このワークショップではダイバーシティとインクルージョンに関して下記の大切なことを学びました。

不適切な扱いを受けたと感じるとき:
自分の行動はコントロールができても感情のコントロールはできないものだそうです。嫌な思いをしたときは、間違いなく自分にとって嫌なことが起きたということ。その時点で自分に非はなく、相手の言動に改善点があるということ。「こんなこと、ほかの人にとっては些細なことかもしれない、、」と思って我慢する必要はなく、逆に、「こんなことで落ち込むあの人は弱い人だ」などと周囲が決めつけることもできません。

そして、不適切な扱いを受けたと感じたら、それが再び起こらないようにアクションを起こすことが大切です。その場で本人に伝えられることがベストですが、難しい場合は、だれか信頼できる人に相談するのもいい選択肢だそうです。

自分の不適切な言動を指摘されたとき:
誰も傷つけないことは不可能なので、傷つけてしまったときにそれを受け入れて再び同じような行動をとらないように改善することが大切です。

また、自分の意図と違う意味で受け取られていた場合には、それをしっかり伝えて話し合い、一緒にどうすればよかったのかを振り返るのも次の改善に役立ちます。

3. イベント:日本におけるLGBTの現状について学ぶ

6月は「プライド月間」だったので、東京にあるLGBTのコミュニティ「Fruits in Suits」の主催者であるLoren Fykesさんにお話してもらいました。LGBTとはなにか、日本の性に関する歴史、教育や社会の現状とLorenさんたちの取り組みについて学びました。

Pivotalは全社的にLGBTとプライド月間をサポートしていて、虹色のTシャツも配られました。(かわいくてお気に入りです。)

Lorenさん(真ん中)と

4. イベント:ヘボポントーナメントを開催した

Pivotalには公式サイズのピンポン台があり、1日に何回かゲームをすることが勧められています。これは、定期的にリフレッシュして効率が上がったほうがいいよね!ということなのですが、卓球経験者や競争心の激しいメンバーが加わると、とても白熱したゲームになることもあります。先にも少し触れましたが、話し合いの中で「もっとゆるく卓球したい(´・ω・`)」という意見が出てきました。

定期的にトーナメントを行なっているほどピンポン推しのPivotalにとって、これは、インクルージョンの観点から由々しきフィードバックでした。

そこで、有志でアイディアを出し合い、面白ルールを加えた「ヘボポントーナメント」を開催することになりました。実力や熱量の差を埋めるために、一定の点数をとったら「利き手と反対で打つ」や「ラケットの赤い面でしか打てない」などのハンデが与えられるというルールです。

これによって、トーナメント以外のゲームでも、その人の好みやその日の気分によって普通のピンポンとヘボポンを選べるようになり、より多くの人が楽しめるようになったように感じます。(それでもピンポンが好きでない人には、けん玉・ジャグリング道具・チェスや将棋なども用意してあります。)

小さいラケットを使う・鬼のお面をかぶる・打ったら床をタッチするのハンデ

なぜダイバーシティ&インクルージョンが大切なのか?

Pivotalは、創造性・イノベーション・技術的な課題は様々な人の意見、アイディアや経験によって高められると考えています。そのため、法を犯さないというニュアンスの「コンプライアンス」として扱うのではなく、様々なバックグラウンドを持つ社員全員が安心して働ける会社であるように、さらに踏み込んだ形で社員のダイバーシティ&インクルージョンへの理解を深めることに力を入れているのだと思います。

Pivotalのダイバーシティ&インクルージョンの体制について

Pivotalは北米、アジアパシフィック、ヨーロッパに全20のオフィスがあり、一言に「多様性」といってもその国の文化的背景などによってその理解や課題には差があり、全社員の理解レベルを揃えるのは簡単ではありません。そこで、経験豊富な社員の中から選ばれた12人のメンバーから成るDiversity & Inclusion Councilと呼ばれる本部が作られました。それぞれが専門分野を決めて改善に取り組んでいて、月に1〜2回ほどお互いに近状共有と方向性の確認をしているそうです。

また、昨年から社内の性別と人種の割合に関するデータと、給与の平等性のデータも共有されるようになりました。数字を見ると、まだまだ改善の余地があることが分かります。

そして、その本部から派生する形でそれぞれのオフィスに担当者や担当のチームがあります。本部や他オフィスとの定期的な近状共有はもちろんですが、実際に行うこととその方法は各オフィスの担当に一任されています。「人は先入観やバイアスを持つもの」という前提に基づいて「じゃあどうやって問題を最小限に抑えよう?どうやってより良くしていこう?」と考えながら、個々のオフィスがそれぞれの現状に合った方法を選び、取り組んでいます。

私はここ1年半の取り組みにしか参加できていませんが、Pivotalもここまで体系的に取り組めるようになるにはたくさんの時間と労力がかかってきたのだと思います。どこから手をつけよう、、と思っている場合は、みんなで講義のビデオを見てみる、ダイバーシティ&インクルージョンに関係する記事をシェアしてみる、などシンプルなところから始めてみるのはどうでしょうか?

今回紹介したようなワークショップを通して、まずは問題が存在することをしっかり理解する、それ1番大切だな〜と感じました!

(2017/7/11 21:20にタイトルと冒頭部分を修正しました)
(2018/12/20 Product Runに追加するにあたり細かい文言を修正しました)

Pivotal Labsでは、定期的にワークショップ型イベントを開いたり、ブログでプロダクト開発やチームビルディングなどについて紹介しています。

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Erika Ito
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Product Designer at VMware Tanzu Labs (former Pivotal Labs) in Tokyo. Ex Medium Japan translator. | デザインに関すること、祖父の戦争体験記、個人的なことなど幅広く書いています😊